第54話 世界に向けて退魔師の闇を発信!
元退魔師支部に到着したら、入口は封鎖されていた。
警察の人が立っていて警戒していたんだけど、園宮さんが手帳みたいなものを見せたら通してくれた。
かっこいいなあ。
「かっこいいな……」
アクアさんも同じ事をつぶやく。
だよねえ。
男だったら、チラッと見せた手帳で相手が何もかも察して便宜を図ってくれるのに憧れるよね……。
「ははは、これがやりたくて迷宮省に入ったようなものですから」
園宮さんが振り返って笑った。
「あいつはああ言ってるが、迷宮省に入るには三代遡った親族の調査、頭脳、身体能力のテスト、緊急時における精神力の試験などが課されるらしい。つまりあいつはそれをくぐり抜けた、ほんの一握りのエリート……いや、怪物ってわけだ」
「かっこいい……」
「フフフ」
アクアさんの解説に、僕が再び感想を漏らし、園宮さんが得意げになった。
こんな感じで、男三人で本堂へ向かいます。
「配信もつけちゃいますね。あ、みんなこんかざでーす。事前にお知らせしていた通り、退魔師支部の跡地に来てます。これから地下に潜って、探っていこうと思います。一応僕、魂が元退魔師なので」
※『さらっと前世をバラすスタイル』『隠す素振りすらない』『潔い』モチョチョ『こんかざ! アクアいるじゃん!』『魔法少女アクアとコラボ!?』『眼福ですなあ』
僕もアクアさんも男なんだけど、いいのかなあ。
いや、いいのか……。
僕は考えるのをやめる。
配信の世界は、これまでの人生では想像もつかなかった形をしてるし。
きっと男同士でも盛り上がるものなんだろう!
アクアさんは今までの男っぽい仕草から、ちょっと女の子っぽい感じに変わっている。
「リスナーへのサービスというやつだ。一人称も変わる」
「そうなんですか!?」
「そうなの」
おーっ、女の子の口調だ!
「僕はずーっと配信でも僕なんだけどなあ」
「あなたはそれがいいの」
※『アクア分かってる』『10万人突破のときにもスパチャ投げてたしな……』御座候『ファンでござるか?』
「後輩を応援したいだけよ」
チャット欄とお喋りしながら、本尊があった場所へ。
そこには隠し扉があったらしいけど、今は開放されている。
階段が、地下に向かって伸びていた。
これを降りていく。
明かりがないかなと思ったら、普通に地下室にLED灯が設置されていた。
あかるーい。
「雰囲気ぶち壊しじゃないか。こういうのはもっとオカルトっぽいものじゃないか?」
アクアさんがぶつぶつ言っている。
園宮さんは、
「時代でしょうねえ」
なんて相槌を打った。
※『外から男の声が!』『男がいるのね!?』『アクア紅一点じゃん』回転『かざりんも体は女子だから、その男が黒一点と言える』
「あっ、伝え忘れてました! 今回の配信、迷宮省の方にサポートをお願いしてます!」
「園宮です。よろしくお願いします」
※『よろしくお願いしまーす!』『好青年じゃん』『黒いスーツが似合う』『つわもののオーラを感じる』
これで全員がカザトモに認識されたところで……。
「確かに、教会っぽい作りをしてるよねえ」
僕はきょろきょろしながら、地下の空間を歩き回る。
広さは本堂と同じくらい。
構造は本堂と真逆の方向に祭壇があって、聖母像みたいなのが飾られていた。
多分それとは違うんだろうなあ。
で、どう見ても脱出できそうなところはない。
警察や迷宮省も調査したけど、隠し扉の類はないというのが明らかになってるみたい。
「科学的な調査では、この周辺は土でした。どこにも空間はありません」
「なるほどー」
「じゃあ、魔法だろうね」
アクアさんが断定する。
「私が探査する。園宮は周りを見てて。かざりは……」
「なんでもするよ!」
「特にできることはないから、じーっと見てて」
「……?」
※『草』『そうやなw』『かざりんは魔法使えるわけじゃないもんねw』
「まあ確かに……。僕はエコバッグとお野菜を振り回してるだけですけどー」
今日はその野菜も持ってきてない。
エコバッグしかない。
急いでいたので、野菜を買ってくるのを忘れちゃったのだ……。
「いいんじゃない、それで? 私は好きだけど」
アクアさんがぼそぼそ言いながら、魔法を使い始める。
※『あら~』モチョチョ『いいぞー』御座候『たまりませぬなあ』
男同士だよ!?
いや、アクアさんが男の子だってのはみんな知らないのか。
じゃあ、傍から見たら男の僕と女の子のアクアさんって感じなのかな?
園宮さんもずっとニコニコしているし。
「あった。空間が露骨に歪んでる。いつでも戻ってこれるように、あいつらゲートを残してる」
アクアさんが何かを発見したみたいだ。
今は、彼の指先が光っているのしか見えないけど……。
「配信にも映るように色を付けるから。カラーミスト」
赤い霧が吹き出してきた。
それがアクアさんの目の前で渦を巻き、形を作る。
あっ、閉じられた扉みたいな形に見える……。
「魔法的な鍵で閉ざされているね。私の魔法では、ここまで。恐らく幻像系の魔法を用いて、ここと遠くのどこかを繋いでる。鍵さえあればどちらからも開くと思うけど、今は触れることもできない」
「なるほどー」
僕が感心していると、チャット欄から提案があった。
※『かざりん、叩いてみよう!』『かざりんのエコバッグならなんとかなるんじゃない?』『うおー! 行け行けかざりん!』『エコバッグアターック!』
「うーわー! なんだか妙な盛り上がりを見せてるー!? みんなストーップ! 僕のエコバッグにそんな力はありませーん! ただのエコバッグでーす! あっ!? エコバッグが光り始めた! なんでー!? こんなので叩いたって、扉が開くわけ……」
ぺーんと振り回したら、実体のないはずの扉がエコバッグに当たってぐにゃっとひしゃげた。
そして、バキバキバキーッ!!と音を立てながら歪み、割れ、吹き飛んでいく。
「えーっ!? そんな馬鹿なー!! こんなんで扉が開くわけないだろーっ!!」
アクアさんがびっくりして、思わず素になって叫んだ。
そうしたら、チャット欄が……。
※『なっとるやろがい!』『そうなってますねえ……』『なっとるやろw』回転『やっぱ、同接が乗ったエコバッグがかざりんの力の源だったか』
盛り上がってますねえ……。
とりあえず、僕とアクアさんと園宮さんの前には、空間にぽっかりと空いた穴がある。
「いやあ……。もろに手がかり、来ちゃいましたねえ」
園宮さんがちょっと引きつり笑いで言うのだった。
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