第53話 意外な助っ人
今は遠く離れてしまったとは言え、退魔師は僕のバックボーンだ。
やっぱり気になる!
……ということで、チャラウェイさんに連絡を取り、どうにか退魔師支部だったところに入らせてもらえないか……と相談をした。
『おお、そうだなー。かざりんの魂が元退魔師だってのは有名だよな』
「有名になってるんですか!?」
『なってるぜー! だってアーカイブ消えてねえからな。再生数見た? もう400万再生超えてるぜ』
「ひ、ひえーっ」
社長の方針で、あの入れ替わりが撮影されたアーカイブはずっと残っているのだ。
世界中の人が、僕と花咲里さんの入れ替わりを認識してる~!!
いや、なんかそれが売りになってるとこもあるんだけど!
『でだな、確かに退魔師の支部、ありゃ臭いわな。霊合教が関わってんだろ? かざりんが知らない内に、組織の内側は蚕食されてたんだろうな』
「ですです。支部はその、僕が滅ぼしたみたいなものなんで、その僕が行ったら何か分かるかなーって」
『あり得るな。古の魔女も調査に動き出してるし、調べる頭数は多い方がいい。よし、俺が迷宮省に掛け合って許可をもらっといてやるよ! ファイヤーには連絡入れとくからな』
「ありがとうございます!!」
こうして社長に事後連絡。
「ひえーっ! ま、また厄介そうな事が!」
悲鳴をあげる社長をよそに、迷宮省からの許可はすぐに降りたのだった。
なんと翌日。
世間ではGW真っ只中!
事務所の前まで黒塗りの車がやって来た。
迷宮省の職員の男性が、連れて行ってくれるらしい。
「かざりさんのサポートを努めます、園宮です」
「あ、どうもどうも、花咲里明日奈です……!」
僕はペコペコする。
園宮さんはこれを見て、
「先代にそっくりな動作……」
とかぶつぶつ言ってるのだ。
どうしたんだろう……?
「い、いえ、なんでもありません。では参りましょう。後部座席にどうぞ。シートベルトは付けましたか? 出発します」
車が走り出した。
サイドミラー越しに、事務所にやって来た花咲里さんの姿がある。
なんかびっくりしてるなあ。
僕はこれから、過去の因縁を調査しに行くのだ!
……というとかっこいいんだけど、実際何か見つかるかなあ。
「流石に混んでますね」
車が渋滞に掴まってしまった!
園宮さんは「ぐぬぬ」と唸る。
「緊急時であれば、ランプを点灯させて道を開けてもらうのですが、今回は極秘の任務ですからね」
「ランプってなんですか?」
「パトランプのようなものです。迷宮省所属の覆面公用車は全て、パトランプと対ダンジョン装備がされているんですよ」
「す……凄い……!」
じわり、じわりと進む車。
なかなか渋滞を抜け出せない。
僕と園宮さんは、暇つぶしに好きなご飯の話をし始めた。
園宮さん、ファストフード好きなんだー。
僕も食べるようになって、その魅力にハマり掛けてるかも知れない……。
ちょっと話が盛り上がってきたところで、窓がコンコン、とノックされた。
「はい?」
窓の外に、青と水色と白を基調とした、可愛らしい衣装の女の子がいる。
ダークブルーの髪と、紫色の瞳。
「あれ? ここって渋滞の中だよね……」
「あっ、彼が待ちきれなくて迎えに来てしまった! かざりさん、彼女は今回の仕事に同行する、魔法少女アクアです」
「えっ、そうなんですか!?」
僕は急いでドアを開いた。
女の子が宙に浮きながら、ふわっと入ってくる。
そして隣の席に座った。
「……どうも」
「ど、どうもはじめまして? ……あれ? 魔法少女アクアって、この間なんか聞いたような……。あれれ? 偶然同じ名前……?」
「本人です。カラオケボックスで偶然会えて驚きましたが、すぐに仕事でもご一緒できて光栄です」
アクアさんが手を差し出してきた。
握手だ!
僕はその小さい手を握り返す。
小学生くらいの見た目だなあ。
もしかしてこの人の中身が、この間見たのっぽでメガネの男の子?
ひえー。
「なんで仰け反ってるんですか」
「驚きを隠しきれなくて」
「俺の中身も、かざりんの中身も似たようなもんです。シンパシー感じてます」
「言われてみれば……!!」
ハッとする僕なのだった。
男だけど、女の子の体になっている仲間なのだ。
これはもしかすると、理解者が登場してしまったかもしれない。
なお、園宮さんが「中身が男子で見た目が美少女な二人が出会ってしまった。これはシナジーが凄いぞ」とかぶつぶつ言っている。
もしかして、狙ってた?
「じゃ、渋滞を抜けるんで。行くよ」
アクアさんがボソッと呟いたら、彼女のポーチから真っ青な本が飛び出した。
『それではみなさーん、シートベルトは着用してますか~? いきまあーす! ランドサーフィン!』
その途端、何も無い空間から波が出現!
それが僕らの乗る車を持ち上げたと思ったら……。
渋滞の頭上をつるーっと滑っていくのだ。
な、なるほどー!
地上で行われるサーフィンだ!
眼下の車の中で、みんながポカーンとして見上げている。
そりゃあびっくりするよねえ。
僕もびっくりだあ。
「ほえー、すっごい」
「びっくりしました? 良かった」
ふふんと得意げなアクアさん。
喋る本が『憧れの人に会えて良かったですねーマスター!』と言いながらふるふると揺れていた。
それをアクアさんが「余計なこと言うなー!」と鼻息を荒げつつカバンに突っ込み『あーれー』くるりと振り返ったら冷静な顔になっていた。
「改めて、今日の仕事はよろしくお願いします。俺がバッチリサポートするんで。あ、配信は回した方がいいです。何かあった時、少しでも同接があると助けになりますから」
「あ、はい! なるほど、そうなんだー。アクアさんが詳しくて助かる~」
「い、いえ。配信の先輩として当然の事をしてるだけなんで」
僕らのやり取りを聞いて、園宮さんがとってもいい笑顔になってるのが、ルームミラーで見えるのだった。
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