第50話 この体で女体化するわけにはいかない!
なお、あたしの攻撃で完全に女体化粘液を弾けたわけではなく。
「ぐわーっ」
※『あっ、ガードマスク二世がー!』『むちむちのお姉さんに!!』『この人アバター着てないからリアルに女性になったな……!』
「お、俺はもうだめだ……。エッチなパワーが俺の脳内を蹂躙している……」
「二世さん、フラグ回収が早すぎる~!! しかし……ほんと出るとこ出てますね。でも筋肉質なのは変わらない」
「ハハハ、元の体のいいところを残しながら女体化するダンジョンらしいからね。いや、まあなんか普通に戦えそうなんだが。これでもう一発浴びたら危なそうだな……」
背中のアサルトライフルのモデルガンを構える二世さんなのだった。
後ろから攻撃するスタイルで本当に良かった。
「んじゃ、前は俺がやるんで! 俺はこう……一瞬だけ女になると元に戻れるんじゃ? みたいに考えたけど、よく考えたら借り物の体だから、勝手に女にしちゃダメだろうって結論になりまして」
「偉いなー」
二世さんが感心している。
そんなこんなで、二人で次々にフロアを攻略していくのだ。
ビル自体は全然広くないし、ダンジョン化しても構造は変わってない。
せいぜい、内壁が触手っぽい手触りに変化してるくらいか。
一フロアにつき三つの部屋がある。
それぞれの部屋に、ベッドとシャワーと湯船があるんだねえ。
冷蔵庫もあって、これで台所とトイレがあったらワンルームの部屋じゃない?
「ちなみにトイレは部屋の外にあって、そこに入っても時間をカウントされてしまうんだ。サービスを受ける前にトイレを済ませておくのが鉄則だな。待合室でトイレに行こうとすると、スタッフが案内してくれて、その客が勝手に嬢の待つ部屋に行かないように監視されるぞ」
「二世さんやたら詳しくないですか?」
「一般常識だよ、一般常識」
※『二世ィ、常連だな!?』『サンダーが女子のままだったら明らかなセクハラ……!』『中身が女子だけど、最近ちょっと男っぽくなってきてるからな……』『男女入れ替わりの醍醐味ですな』
「醍醐味じゃなーい!」
チャットに突っ込んでいる間に、触手が襲ってくる。
これをペンライトで弾いていると、レアにランクアップした。
防御も攻撃も、ぐんと楽になる。
「俺が! 弾くんで! 後ろから攻撃を! おららららーっ!!」
「うおーっ! 君のアバター、動きまくると全身の蛍光カラーマークが光るんだな! ゲーミング~!!」
女体化した二世さんが、後ろから的確にアサルトライフルで触手を撃ち抜いてくれる。
射撃が上手い!
お陰であたしは防御に専念……。
あれ? これ攻撃いけるな!
「おらぁっ!!」
『ウグワーッ!』
触手がビターンと床に叩きつけられた。
よし、このフロアはクリア!
こんな感じで、四つあるフロアを次々に制圧。
ボスらしき触手もいなくて、全部同じノリだった。
というか、後半のフロアほど触手は油断してたような……。
「これ、エレベーターに入った時点で女体化の罠が完了して、下のフロアでエッチなことになって終了ってパターンが多かったんじゃないですか?」
「ああ、多分そうだろうな。少なくとも俺はこの姿で、フロア一つでも制圧できる気がしない。ちなみにこのダンジョンは死亡者がゼロ名でね」
「そうなんですか!? 安全なダンジョン……!?」
「触手たちは満足すると、犠牲者を外まで運んでいってぽいっと放り出すんだ」
「なんなんだこのダンジョン……」
※『世界は広い』『危険だけど危険性が少ないダンジョンだ』『リアルタイムじゃないとエッチな光景を拝めないからな』『たまに挑む配信者が出ると同接が集まるんだ』
「あっ、言われてみたらあたしの同接、1000人超えてるじゃん! こ、このスケベどもがーっ!!」
※『ハハハ』『おわかりいただけましたか』『今回はちょっとがっかりだったな』
なんだこいつらー!?
そして結局、4フロア目の触手を殴り倒したところで、他にモンスターも出てこなくなった。
「これで終わり……? まだ床や壁は触手なんだけど」
「一応終わりかな……? 何人か踏破した配信者はいるんだが、どうしてもダンジョンの根治にはつながってないんだよなあ。でも収益化剥奪になる危険はあっても、一時的に凄い撮れ高になるんで、これをグッズに繋げたりする配信者は後を絶たなくてね」
「ま、まさか二世さんも……」
「俺はグッズ展開してないぞ!? ちょっと仲間内のゲームで負けて、罰ゲームでここで配信することになっただけだ。さあ、出よう出よう」
二人で、触手ダンジョンを出たのだった。
そうしたら、女になっていた二世さんが元のムキムキ男性に戻る。
「うーむ、一瞬で元通りだ……」
「ダンジョン内でだけ女体化するんですねえ。だったらやっぱ、俺が女体化しなくて正解だった……。そもそもアバターのお披露目なんだから」
振り返ると、ダンジョン化した建物は変わらずそこに存在している。
大きなビルに挟まれた、細くて小さいビルだ。
あたしは一瞬、このビルそのものが巨大な触手の本体なんじゃないか……? なんて考えるのだった。
ありそう。
でも、周囲のビルに及ぼす影響が大きすぎて壊したりは難しそう。
「女のあたしであれば、即座に破壊しようとか思ってた気がする……。さらば、触手ダンジョン……! なんかアーカイブも残るし、同接すごかったし、登録者も増えたし……」
エッチなダンジョン、いいことしかなかった。
まあ、リスナー連中には女体化しろとかブーブー言われたけど。
こいつら、リアルで会ったらぶっ飛ばすからな!?
「よし、それじゃあサンダー。メシでも食って帰るか! 新人配信者のために、先輩である俺が奢っちゃうぞ」
「マジですか!? いやあ、男の体になってから、飯が美味くて美味くて……。筋肉に変えちゃえばいいから無責任に食えますからねー」
「自堕落なようで、何気に言葉の端々がストイックなんだよなあ君たち」
こうして、配信の疲れは奢りの焼肉で癒すことになるのだった。
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