第5話 法力がないのに前よりやれてる!
「僕の知らない僕の体の秘密を、なんでーっ!?」
「かみな……かざりちゃん! 配信、配信!」
「はっ! そ、そうでした! えっと、では僕もやっていこうと思いますう」
※モチョチョ『あからさまに動揺しててカワイイなのだ』御座候『どうして可愛いかは絶対アーカイブ見たほうがいい』回転『入れ替わり……本当に起こるものなのか? だが過去のかざりちゃんねるアーカイブはとても見れたものではなかった……』
僕は手にしたおもちゃの剣を構える。
花咲里さんが難敵と見た小鬼たちは、こちらを標的にしている。
鉄パイプやバールのようなもの、そういう危険そうな金属を握りしめて、こちらに走ってきた!
『ギャギャアーッ!』『ギギィーッ!!』
緑色の肌に、人間離れした異相、ボロボロの衣服を身に着けた恐ろしい小鬼たち。
あの一撃を受けたら、元の姿の僕ならまだしも、華奢なこの肉体では大変なことになってしまうだろう。
「一撃も受けられない……! それにおもちゃじゃ、相手の武器を受け止められないから……!」
『ギャアーッ!!』
振り回された鉄パイプをバックステップで回避しながら、僕は牽制の一撃を突き出す。
ギリギリ、この体の方がリーチが長い!
おもちゃの剣が、小鬼の頭にコツンと当たった。
やっぱりおもちゃじゃ、威力が全然……!
『ウグワーッ!?』
小鬼がぐるんぐるん回転しながら吹き飛んだ!?
地面にバウンドした後、シューッと霧のようになって消えてしまう。
「ど、どゆこと!?」
※回転『元の彼が相当鍛えてたんだろうな。動きがいい』モチョチョ『同接パワーだよー!! カワイイ上に同接が乗って、君は今超絶強い!!』今川『いけいけ! コ゚ーでおじゃるー!』
「ど……同接パワー……!? こ、こんなの……元の体の時より全然戦えてるじゃない、僕……!!」
※『ああ~^』『やっぱり天然のボクっ娘はいいですねえ』『噂を聞いて見に来たが、本当にいい』『今泣いています』
「いいよいいよ、かざりちゃん! コメント大盛りあがりだよ! この調子で行っちゃって!」
「は、はい!」
社長がゴーと言うのだから、きっとこのままでいいんだろう。
いいのかな……!?
だけど考えている暇なんかない。
僕は次々に小鬼の攻撃を捌くと、おもちゃの剣で叩いて回った。
弾みで変なスイッチを押したらしくて、
『ギュインギュインギュイン!』『スイハン・エネルギーマックス!』『クワブレード!』『ライスジャー・インパクト!』
光って震えて、変な声がするんですけど!?
なあにこれ!?
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
僕の戸惑いをよそに、退魔師として必死に鍛えた感覚は嘘をつかない。
小鬼の攻撃を次々に回避して、一撃で仕留めていく。
いつもなら、攻撃がまともに通用しなくてひたすら受けに回るのに……!
「ひい、ぼ、僕の攻撃が強すぎて……! 残心しつつ次の小鬼に備えられちゃう……! こんなに妖物を倒したの初めて……!!」
戸惑いと高揚感、そして……。
※モチョチョ『泣きそうな顔して無双してるのいいですぞー!』大判『中身が入れ替わってから、かざりチャンネルも生まれ変わったよな』『一回前のアーカイブだけ見れば十分!』『おいスパチャできねえぞ! どうなってんだ!』『投げ銭させろ!!』『運営はどうなってんだ!』
す……すごくみんな盛り上がってるーっ!?
最後の小鬼を倒したところで、向こうの花咲里さんも戦い終えたところだった。
「レアまで上がった……!」
「ぼ、僕が知らない間に僕の力を開花させてる……!! 何が起こってるの!? ねーえー!」
「カメラはかざりちゃんだけ写してるからね。後でサンダーマスクに聞いてね。ほら、ボスの悪霊が出てきたよ! ここで決めなくちゃ! あ、これその武器の説明書」
「今説明書読ませるの!? もっと早く見せて……!」
※『これは正論』『一本取られましたな』モチョチョ『だが未知の環境にわたわたするボクっ娘からしか得られぬ栄養がある』
『ウボアー』
迫る真っ黒な霧の中に顔が浮かんだ姿の悪霊。
この人にも色々なストーリーがあるんだろうけど……。
ごめんなさい!
僕は今、配信をちゃんとやることと、説明書に書かれていたおもちゃの剣の操作で頭がいっぱいです!
「行くぜ、かざり! レアランクになった俺の武器を喰らえーっ!!」
花咲里さんが突っ込んだ!
僕の体、動けてるなあ!
もやもやとした悪霊に光り輝く法具が命中する。
そうしたら、もやが揺らいで『ウグワーッ!』と悪霊が悲鳴をあげた。
「通用してる! 僕の法具が、あんなに通用するところ見たことがない! どうしてぇー!?」
※『かざりちゃんずっとビックリしてるな』『びっくりしまくっててカワイイ』『我々も、中身が入れ替わったボクっ娘がこんなにカワイイなんてびっくりだよ』『初見ですこんにちは』
「こ、こんにちはー! あっ、な、なんだか、体に力が漲ってくる……!! なんで!?」
※『同接が増えたからだねえ』回転『彼女、本当に配信のシステムを知らないようだな。つまりあの入れ替わりは事故だったということか』
「ううん、やるなら今! よ、よし、いくぞーっ!!」
おもちゃの剣のスイッチを入れる。
そうしたら、先端がジャキンと変形して……剣というかクワみたいな形に……。
『ライスパワー充填! ライスジャー、耕作……フィニーッシュ!!』
「ふぃ、ふぃにーっしゅ!!」
僕も走る!
霧が伸びてきて、僕を飲み込もうとするのを体を低くして避けて……。
起き上がりざまに、下から上へとおもちゃの剣……クワを振り回す!
そうしたら、そこに光が生まれた。
光は悪霊の霧を大きく切り裂き、霊郭の天井向けて伸びていく。
「!?」
※『あーっ』『いけませんいけません』『いいぞいいぞ』『見え』『撮影の角度が絶妙でギリギリ見えん!!』
いつの間にか跳躍していた僕。
振り上げた力で、自分ごと持っていった!?
だったらここから、体重をかけて切り下ろすだけ!
『イート……エンド!!』
「えんど!」
悪霊の頭を、頭上から真っ向両断。
着地した僕の目の前で、悪霊が仰け反った。
『ウグワアアアアアアアアッ!!』
『ごちそうさまでした!』
おもちゃの剣から決め台詞みたいなのが流れる。
なあにこれ。
悪霊は霧になって、消えていってしまった。
※『うおおおおおおお』『やったあああああああ』『かざりちゃんすげええええ』モチョチョ『かざりんと呼ぼう! かざりーん!』
「か、かざりん!?」
僕は思わず、そのコメントを読み上げてしまっていた。
いや、社長のスマホに映ってる小さな文字のはずなのに、なぜか眼の前にくっきり見えたから。
※『かざりん……かざりんか……!』『いいね!』大判『呼び名が決まったようだな……』御座候『ファンネームも決めねばなるまい!』『盛り上がってまいりました』
「ど、どゆこと……!?」
「ふーん、やるじゃん」
いつの間にか隣に花咲里さんがいた。
手にしていた法具は、ただの棒に戻っている。
彼女が見つけ出した、僕の法術の秘密についても聞かなくちゃいけない……!
「あ、かざりちゃん! このカンペ読んで!」
「は、はい?」
社長から手渡されたメモ帳。
ついさっき書いたばかりらしいそれを、僕は読み上げた。
「えーと、み、皆さんにビッグニュース! このたび、かざりちゃんねるでは収益化に先立ち、パトロンボックスで皆さんの支援を賜ることになりました。490円からプランに入れますので、どしどしご支援下さい。上位プランも追加予定です……? 特典として、かざりちゃんのここでしか見られないプライベートピンナップを……プライベートピンナップ!?」
※『うおおおおおお!!』『おおおおおおお!!』『なんて商売上手なんだ!』『これなら課金できる!』
「皆さん、ここですここ! このQRコードです!」
社長~!?
僕に落ち着いて考える暇は、どうやらなさそうなのだった!
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