第49話 教育に悪いダンジョンだ!
「やって来てしまったわね……。教育に悪そうなダンジョン……」
「やあサンダーマスク。一緒にダンジョン踏破を引き受けてくれてありがとう」
「あっ、どうも、ガードマスク二世さん!」
「長いだろうから二世でいいですよ。かざりさんには色々お世話になったからね。その分の恩を君に返さなくっちゃ」
恩……?
明から、この人に……?
なんだ……?
ガードマスク二世さんは、身長180センチを超えるガチムチ体型の男性。
今日は迷彩服みたいなものを着て、腰に大きな拳銃、背中に大きな銃を背負っていた。
さらに、腕にはナイフ。
「ほ……本格的ですね?」
「ああ、これ? 銃は全部モデルガンだし、ナイフはゴム製だからグニャッと曲がるよ。だが、こいつがダンジョンにおいては本物と遜色ない威力になる。そこがダンジョン配信の面白いところだな」
「そうなんですか!? あた……俺、ある程度本物の方が説得力があると思ってたんですけど」
「そう、説得力だよ。俺達が配信で、こいつは本物以上に通用する!! って演技をする。それを信じたリスナーが応援すると……偽物が本物になるわけだ。こういう、鰯の頭も信心からってのがダンジョン配信の本質なんだよな。さて……行くか!!」
二世さんがマスクを被った。
額にG-Ⅱのマークが縫い付けられている、革製のマスクだ。
あたしも変身!
「行きますか! 色々教えてくれてありがとうございます! 配信スタート! 行くぜお前ら、いきなりバーチャライズ!!」
あたしはアバター初公開だ!
いきなり配信でやるのは……と社長は心配していたが、こんなのあれ以上練習しても仕方ないでしょ。
本番で慣らしていく!
「おっ! 配信で見てたのとは全然違うフォーム! そうか、サンダーマスクもアバター装着したんだな」
「そうです! おっと、みんな! 今日は伝えておいた通りコラボ配信だ! ガードマスク二世さんと、教育に悪いダンジョンに潜るからな。チャンネルBANにならないように頑張るぜ!」
※『あの女体化触手ダンジョンか!』『裏をかいて女性のまま挑んだ配信者が速攻で映せないよ!になって収益化剥奪されたらしいな』『アーカイブ削除と一定期間で収益化戻る辺りはアワチューブ有情』『二世さんアバター着てないと逃げられないから危ないよ!』
「俺もだけど、サンダーも民生Aフォンだろう? ははは、逃げられないコンビだ」
「まったくです。ってことで、退路を断った俺等が頑張るんでよろしくー!」
あたしは腰からペンライトを抜いた。
使い込み続けて、先端から出る光が剣になり始めているペンライトだ。
そういえばこれも……常識的には武器になるわけがないのに、配信から続くドラマがあって武器になってしまったんだよなあ。
信心からってのは本当だ。
あたし自身が体験してた。
さあ、本日二人で挑むダンジョンは……。
もともとは男性向けのお風呂屋さんだった施設。
あたしは詳しくは知らないけど、たまたまお風呂屋さんに来た男性が、そこの従業員の女性とたまたま恋愛関係になってコトに及び、規定時間後に恋愛関係を解消して帰っていくところでしょ?
女子だった頃のあたしは、こういうのに正直嫌悪感があった!
だが男の体になってから、なんかそういう嫌悪感が薄れてるのよねえ。
むしろちょっと興味が……いやいやいや。
「本当なら十八歳未満は従業員としても客としても入れないからねー。今回はダンジョン化してしまったお風呂屋さんに、俺とサンダーが攻略のためにやむを得ず突入したんだ」
「あー、そりゃ仕方ないっすね! 仕方ないなー!」
※『さすが大人、理論の展開が上手い』『サンダーマスクが大人の理屈で擦れちゃう!』『こうして男は成長する……中身女子だっけ?』『もう男と同じだろ』
うーん、リスナーの大多数があたしの元の状態を知ってるからなあ……。
いや、まだ元の姿に戻れないとは限らないじゃん!
『キシャーッ!』
チャット欄に気を取られていたら、入口でいきなり触手のお出迎えだ!
ネトネトした液体を振りまきながら、なんとも言えない甘ったるい香りを放ってくる。
「これが媚薬の香りだ! 女子にしか通用しないぞ!」
「なんだそれ!? あ、そういうお約束をダンジョンが作っちゃってるってこと!?」
「飲み込みが早いな! そういうことだ!」
二世さんが拳銃のモデルガンでガンガン撃つ!
触手が『ギャピー!』とか言いながらばたばたしている。
粘液がこっちに向かって飛んでくるのは……。
「見えた、ヒット判定! おらおらおらっ!!」
あたしが!
弾く!
ランダムな軌道だけど、飛来する速度が遅い。
Excellent連発だ!
うまく殴ると、粘液は消滅するっぽい?
※『媚薬の香りが通用しないとは……』『サンダーマスクは頭の中まで男子に』『なんということだ』『女体化の罠にかかるんじゃないぞ! ぜーったいにかかるんじゃないぞ!』回転『まあ、ダンジョンから出たら女体化の効果はなくなるんだけど』
「お前ら、俺が女の体になるのを望んでるだろー! なんてリスナーたちだ!」
「ま、お約束ってやつだからねえ。よし、先行くぞ!」
二世さんが先行した。
一階の客の待機所にいた触手を殲滅。
なんでみんな微妙に距離を取って、椅子に座ってお茶を飲んでたんだ。
壁には、お風呂屋の従業員一覧らしき写真が掛かってるんだけど……これも全部触手になってる!
「誰が誰なのか分からん!」
「いやあ、教育に悪いダンジョンだなあ」
二世さんが、わはわは笑っているのだった。
上の階へは、非常階段かエレベーターで移動する。
だけど非常階段につながる扉は固着して開かないので……。
「エレベーターか……。嫌な予感しかしない!」
あたしの予想は大正解だった!
エレベーターに乗り込んだ途端、天井の作業口が開いてそこから入ってくる触手!
それが、今までとは違うキラキラ光る粘液を撒き散らしてくるのだ!
「おららーっ!!」
全部Excellent!
ペンライトは短いから、狭い空間でも使えるぞ!
二世さんは壁にへばりついて、
「あ、これが女体化の罠かあ! 確かに逃げられないもんなあ! このダンジョン頭いいなあ!!」
と感心しているのだった。
のんきなー!!
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