第47話 売れろ売れろ、明のボイス!
明はボイス収録の才能があるのかも知れない……。
天然の羞恥心が込められつつも、真摯に演じられたあたし脚本の二人っきり放課後プレゼントボイス。
サンプルをアワチューブにショート動画でアップしたら、そこから販売サイトに大量の人が流れ込んできた。
売れる売れる!!
半日で一万本売れた。
一本500円で、うち二割は販売サイトが手数料で持っていくと考えて……クレジットカードの手数料を差し引いて……。
「半日で三百八十万円……!!」
社長が鼻息を荒くしている。
「ボーナス期待しますねえ」
リーシュさんがニコニコだ。
「やっぱ……グッズとかボイスって強いわね……。しかもボイスは元手ゼロだから」
「僕の声は元手ゼロじゃないよー」
明がなんか抗議している。
そうね、あんたの才能がこの結果を叩き出してる。
ページを更新する度に、ダウンロード数が増えていくのが分かる。
一分間で十人が買ってるぞ!
どうなってるんだ!!
『耳が溶ける~』『完璧な教室で二人っきりボイス』『ウィスパーボイスの才能が覚醒した』『退勤時に聞いたらいい感じにチルりそう』『結婚したい』
感想も概ね好評みたいね……。
「社長、これは……そろそろあたしのかっこいいアバター作っちゃってもいいんじゃないですか?」
「うーん、そうだね……!! 花咲里ちゃんがボイス脚本の才能があるって分かったからね……。我が社の脚本家のために、ボーナスを用意しちゃおう! ……ボイス販売本数が二万本超えたらね」
「な、なにぃーっ! けちーっ!!」
二万は流石に行かないでしょ!
二万はーっ!!
怒り心頭のあたしだったが!
夕方になったら、ボイスの販売数がサクッと二万ダウンロードを超えたのだった。
「うおわーっ!!」
社長は嬉しい悲鳴。
帰宅したリーシュさんからは、SNSで『やったね!』とかわいいスタンプが一緒に送られてくる。
「あわわわわ……僕のボイスがこんなに売れて……。なんで……どうして……」
「よく考えたら、あんたのアクスタが三種類で二万個ずつ完売してたんだったわ。もっと気楽に買えて安いボイスが二万ダウンロード超えるのは既定路線だったわ……」
っていうか、明のファン、恐らく登録している十二万人がほぼ全てアクティブユーザーなのだ。
他の配信者の十万人登録とは話が違う。
一晩明けた時……。
ボイスは九万ダウンロードに到達していた。
やばい……。
やばいよこれ……!!
アクティブユーザーが多いってことは、こういうことなわけね……!!
売れ方に時間差があったのは、ネットマネーによるプリペイドカード支払いもあったせいだと思う。
これは未成年のファンが後から買ってるな……?
放課後、事務所に来たあたしに、社長が宣言した。
「花咲里ちゃんのアバター、作っちゃおう!!」
「やりぃ!!」
こうして!
ようやくあたしは、まともな配信者としての第一歩を踏み出せるようになったのだった。
「……ってことで、アバターを作りたいんだが、お薦めの絵師さんを教えてくれないか?」
※『サンダーのキャラとマッチした絵師……』『男が上手い絵師がいいよな』『サンダーは動くタイプだから、アクションが映える絵柄がいいな』『音ゲーキャラだから、ちょっとポップでもよくない?』
チャット欄が盛り上がる!
明の登録者ほどじゃないが、あたしのとこだって活気があるのだ!
アバターを手に入れたら、さらに活気づかせて見せる。
様々な絵師さんが候補に挙げられた。
その中で、実際にあたしの配信までやって来た人がいたのだった。
アスパラ玄斎という人で、言うなれば……メカ絵師!!
ツブヤキックスでメカとか、ムキムキな男とか、ムキムキな女のイラストを発表している人。
ゲームでもキャラクターデザインで参加したりしている。
※アスパラ『やりましょう!!』
「やる気すげー。じゃあ詳しくはザッコで話ししましょう」
ザッコというのは、That・Codeというチャットアプリ。
データのやり取りも容易で、音声もラグなく届けてくれる。
配信者同士が遠隔で、ゲームのコラボ配信をする時、大体このアプリを使う。
ということで……配信が終わってから、あたしはアスパラさんと会議に入った。
社長も後ろにいる。
「どうもどうも、ファイヤー・アンド・ウインドの代表取締役をしていますファイヤーです」
『どうも始めましてー。アスパラです』
「上鳴明です。あ、もしかしてアーカイブご覧になってますか?」
『見てます。花咲里明日奈さんですね』
「そうです!! 中身は……中身は乙女なんです……!!」
そんなやり取りをしつつ……。
あたしのイメージとか要望、社長が考える上鳴明のイメージなんかを伝えていった。
『じゃあ、このお絵かきチャットに入ってもらって……チャンネルはここで、パスワードはここで』
導かれて、未知の地に踏み入ったあたしと社長。
そこは真っ白なキャンパスで、描かれていたものは……!!
ストリート風のファッションに身を包んだ、すらりとした体格の男子のイラストだった!
「かっこよ!!」
「かっこいいなあ!」
唸るあたしと社長!
頭には斜めに被ったベースボールキャップ。
顔の下半分を覆う、シャープなデザインの黒いマスク。
スカーフと、ストリートジャケット。
デニム地のパンツに、スニーカー。
ただし、肘と拳にプロテクター。
膝とスネにもプロテクター。
スニーカーの先端には金属の補強がついていた。
あたしが打撃で使うところじゃん!
さらにさらに、ポケットからはペンライトが顔を出している。
使い込んだことで、常時アンコモンに固定された歴戦のペンライトが!
『こんな感じでイメージしましたけどどうでしょう』
「すげえ……すげえいいです!! あー、もう、好き好き」
「いいねー! これはかっこいいなあー。しかもあちこちに雷のマークとか、ストリートファッションの腕には帝釈天のワッペン!? 雷だもんねえ。いいなあー!」
満場一致で、これで決定!
イメージカラーは、白、黒、黄色。
緑と白とピンク色の明とは対極を成すような……。
さらに女子からは離れていっているような……。
いいや!
あたしは!
これで天下を掴むね!
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