第46話 あたしが脚本を書いてやる!
退魔師たちの関東支部というのが崩壊した。
明が御本尊とか言うのをぶっ壊したからなんだけど、明らかに天使の羽が出たわね……。
あれってなんだったの?
配信が終わり、明はなんだか放心状態。
あたしはあたしで、SNSを使ってリトルウィッチ・デュオの二人とやり取りしていた。
『絶対天使の羽だったわね。見た見た』
『退魔師たちは汚染されていたのか、それとも奴らと繋がって力を得ようとしていたのか、気になるな』
「そこよねー。御本尊が壊れたら、明らかに他の退魔師達も力を失ってたし。あっ、あたしの音ゲーパワーはそのまんま」
『つまり、才能がない退魔師を天使の羽でブーストしてたってことじゃない?』
『天使の力を借りていたということか。絶対裏に何かいるな……。パパの伝手で、シヅルさんというベテラン魔女と会えるんだ。話を聞いてくる』
「人脈力すご! 頼むわ!」
会話を終えて、すっかりアイドル活動から退魔師活動になってしまった……と天を仰ぐ。
ここは帰りの車の中。
運転するのは社長で、助手席にリーシュさん。
あたしと明で後ろの席。
この車の後ろを、ファノリーちゃんとその一族の車が走っている。
あたしの退魔師支部侵入、ファノリーちゃんたちがめちゃくちゃサポートしてくれたんだよね。
穴を掘って地下から接近して、ダンジョン化してたんで一族のみんなが謎のケモノみたいなのに変身して、ウオーッと叫んでボカボカ叩いて壊した。
そしてあたし、侵入!
大暴れ!
というわけだ。
助かったー。
持つべきものは、クラスメイトでリスナーだね。
「……っていうか、なんで明はずっとぼーっとしてんのよ」
「いやあ、あのねえ……僕の人生の、こう、一番大きな部分を占めてた件が一瞬で片付いちゃって……。ま、まさか自分の手で終わらせることになるとは思わなかった……。うーん」
なんか言いながら、カットキャベツをむしってパクパク食べてる。
これは重症だ。
燃え尽き症候群じゃない?
「社長~! 帰ったら明のボイス収録するんでしょ? 脚本はできてんの?」
「いやあ、実はまだなんだ。リーシュさんの思いつきだからね」
「えへへ」
助手席でリーシュさんが笑った。
な、なんたること~!
でも、あれで配信が大いに盛り上がったのは事実。
この人、センスがあるのかも知れない。
時給1300円の働きではない。
今回はみんな頑張ったし、明も燃え尽きたし、それにボイス販売で大いに稼げそう……。
配信者の収入は、今やアワチューブからの広告収入とかスパチャではなく、そこを入口にしたサブスク加入と、グッズ関係のコマースがメインなんだよね。
ボイスは原価が掛からないから、イメージイラストだけ書いてもらえば、そこから大いに稼げる!
そしてその稼ぎで、あたしのアバターを作ってもらう予算が用意できる!
「……よし。明のボイス脚本は……あたしが書く」
「な、なんだってー!!」
社長が驚いた。
驚いても運転は安定してる辺りはさすが。
「まあ、考えてみたら放課後プレデターズ時代も、花咲里ちゃんは自分でダンス考えたり歌詞を考えたりしたがってたもんね。自信のほどは?」
「ずっと温めてきたアイドルなトークの脚本がある。あたしじゃ絶対に合わないと思って封印したやつ! 確か、シチュはリスナーと二人きりでご褒美ボイスだったよね? 任せて」
「書いて書いて!」
「分かったわ。その代わり……明のボイスが売れまくったら、あたしのアバターを作ってほしい!」
「なるほど、それが報酬というわけだね……。いいだろう! 約束しよう!」
よし!
これでアバターを手に入れる約束を取り付けた。
後は脚本を書くばかり……。
事務所に戻り、土田ファノリー一族にお礼を言い……。
なんか一族全員、明のアクスタ持ってたんだけど!?
こいつらみんな、明のファンか!!
あたしは放心状態の明の脇腹をぶすぶす指で刺し、「あひゃー!」とくすぐったくて正気に戻った明に「お世話になったらお礼を言いなさい!!」とアイドルとしての礼儀を叩き込んだのだった。
さてさて……。
脚本を書かねば。
「値段は? 500円? じゃあ短めのでいいか……。10万人突破記念で感謝の言葉をリスナーに一対一で伝えるシチュかな。いやいや、後から聞き返せるように汎用性もつけておこう……。10万!? ……改めてとんでもないわね、あんた……」
「いやあ、まさか襲撃前に行くと思ってなくて。10万人達成のお礼をしながら戦ってたから、気がついたら最終決戦で」
明のアーカイブを流してみたけど、こいつ、訓練された戦士の動きみたいなのをしてるのだ。
ふわふわキュートな見た目に、アクション性の高い戦士の戦い方、そして武器はカット野菜。
これでむくつけき男たちをガンガンなぎ倒して突き進み、チャットへの返答を欠かさない。
これは……人気が出る……!
ほら、もう登録者数11万人になってるし!!
あっ、12万になった!
「明らかにバズってる! 今脚本書かなきゃ嘘! うおおおーっ! やるぞやるぞー!!」
あたしは!
気合を入れた!
そして一晩で脚本を書き上げたのだった。
「さあ明! 一晩しっかり寝たでしょ! これ読んで! 語尾にハートマークがつくような、ウィスパーボイスで読み上げなさい!」
「えーっ、それってどういう……うひゃーっ、こ、こ、これ、愛の告白みたいなものじゃない……!」
「リスナーが、カザトモがあんたに求めているのは、これよ!! 可愛くてキュンキュン来るようなボイス! あたしが! ついにファンから求められなかったもの! くぅ~っ」
「花咲里ちゃん、自分で言って自分でダメージ受けてるねえ」
事務所で一晩過ごしたあたしたち。
完全復活の明が、恥ずかしそうにボイスを演じるのを聞き、OK!
これを、後で出勤してくるリーシュさんが編集し、本日の夕方に販売することになるのだった。
売れろー!
売れてくれー!
あたしのアバターのためにーっ!!
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