第45話 風雷コンビ大勝利!
「えーと支部長クラスが持っている法術と妖怪は秘匿されてるんです! 実戦にも使われたことが無いので、知っている人がとても少ないんですー!」
「貴様ーっ!? な、なぜ退魔師の極秘事項を知っている!!」
支部長の驚きと焦りに満ちた声が聞こえる!
いや、あの、魂が退魔師なので。
同類なので。
出てきた謎の妖怪、日和坊。
周囲は支部長の結界で、山の中みたいな光景になっている。
その奥深く、山肌に巨大な仏像が刻み込まれている。
それがギラギラ輝きながら、僕を見つめてくるのだ!
あ、あれが日和坊……!?
暑い……!
「あっ、カット白菜とカットキャベツがしなびてきた……!」
※『ピーンチ!』回転『今妖怪データベースで調べたぞ! 日和坊は日照りや旱魃の神が大陸から渡ってきたものが変化したものであったりする可能性もあるらしい!』もんじゃ『ナイスだ。後は任せる』
「な、なるほどー! じゃあ日照り過ぎて、野菜がしおれちゃうんですね! ありがとうございますー!」
「なぜだ!? なぜ外部と通信できる! 結界は外の世界と接触が断たれる、絶対的な退魔の領域のはずだ!」
ほんと、なんでなんだろう……。
そもそも霊郭……ダンジョンから配信できるわけだから、結界の中でも配信できておかしくないもんね。
でも困ったぞ。
この空間はものすごく暑いし、野菜はしなしなになるし、これは僕をじりじりと熱で痛めつける戦法では……!
「持久戦かな……? 支部長の姿も見えないし……」
※『なんで嫌らしいやつだ!』『正々堂々戦えー!!』『坊さんのくせに意地が悪いぞー!!』
「だまらっしゃい!!」
支部長がチャットと会話してる。
彼の姿は見えないけど声が聞こえる……。
そして声に変なエフェクトとかが掛かってない。
近くにいると思うんだけどなあ。
どうしたものだろう。
動くよりも考え込んでしまうのが、僕の悪いところかも知れない。
だけど、この状況は一瞬で打破された。
結界にピシッと亀裂が走ると……。
「うおーっ!! 何も無い空間に当たり判定があると思ったら、殴って砕ける空間じゃん!!」
見覚えのある、雷マスクをつけた男の子……というか僕の体が入ってきたのだ!
※『入れ替わりコンビ揃った!』モチョチョ『これはシナジーが起きますわ!』回転『男子とコラボしても本人だから炎上しない奇跡の関係性!』
「うわーっ! サンダーマスク!?」
「あっ、あたし……かざりじゃん! なんだここ?」
「ここはね、支部長の結界。あれが妖怪日和坊」
「なるほどなー。うへー、この中サウナじゃん」
「サンダーが開けた穴から外の風が入ってきて涼しいよ」
いきなり結界を破られ、支部長は大慌てだ。
「な、な、何が! 何が起こったというのだー!! おのれ! こうなれば結界の中で貴様らを仕留めて……」
「当たり判定じゃん! おらっ!」
「ウグワーッ!?」
何も無いところを殴るサンダー!
そうしたら打撃音がして、誰かが倒れる音がした。
「あ、この辺!? えいやっ!」
僕も駆け寄って、エコバッグでひっぱたいた。
「ウグワワーッ!!」
あ、なんか重さのあるものが地面に叩きつけられてバウンドした!
「ば、バカな……!! わしのこの結界術が破られる……!? 姿も気配も見えなくしていると言うのに、どうしてこんな……! ええい、日和坊、やってしまえ!!」
『ずももー』
日和坊、動き出す!
山肌に刻まれた仏さまが実体化し、その一歩を踏み出す度に近くにある木々が燃え上がる!
「かざり! 雑魚なんかほっといて、あのデカいの片付けるぞ!!」
「雑魚……雑魚かなあ……。うん、とりあえず危なそうなのをやっつけよう!」
「わ、わしが雑魚だとぉ~」
地面でなんか呻いている人がいる。
この人もしかして、直接戦闘力が低くて姿を隠すだけの法術だったり……?
まあいいか。
僕とサンダーで、日和坊に立ち向かう。
「葉野菜は相性が悪そうだから……。験担ぎで持ってきてたこれを使うかなあ……。持ってきて良かった、ゴボウ!」
※『ゴボウ!?』『伝説が蘇る!』モチョチョ『なんか盛り上がってるな!?』回転『きら星を継いだものがゴボウを使うわけだからな……!』御座候『盛り上がるというものでござるな!』
「あっ、みんなが喜んでくれて嬉しいー。なんで喜んでるかわかんないですけど」
笑顔でカメラに手を振ったら、チャット欄が『ああ~^』『かわいい』とポジティブな反応に満ちた。
うんうん、いいことだなあ。
「おらおらーっ! この熱にも当たり判定があるじゃん! おい、かざり! そこでリスナーサービスばっかしてんじゃねー! こっち来て殴れー!!」
「あっ、はーい」
※『初見です。なんだあのかざりちゃんに指図する感じ悪い男は』モチョチョ『かざりんのボディの元の持ち主です』『えっ!?』『サンダーにはあれを言う資格があるんだよなあ、本人でもあるから』『えっえっ!?』『ここはチャット欄での会話が禁止されてないのに治安がいいなあ』
「初見さんいらっしゃーい! ええと、概要欄にボイス販売の話も書いてるので、良かったら買って下さーい! あ、ゴボウでえいっ」
エコバッグから抜き打ちでゴボウをペチる。
そうしたら、ゴボウが一瞬だけ猛烈に光り輝き、先端からものすごく長いゴボウ色の輝きが伸びる。
それが木々を薙ぎ払い、日和坊に炸裂すると、その巨体を浮かせて打ち倒した。
『ウグワーッ!!』
「でかしたかざり! あたしもこれで! おっしゃー!! SRペンライト!! 通常がアンコモンだから進化が早い! おらおらーっ!!」
倒れた日和坊に駆け寄り、ボコボコ叩くサンダー。
なんか振り回しているペンライトが、光の剣みたいになってない?
振り回した後の輝きが網状の盾みたいになってるし。
「不思議ー。僕の体であんなことができるなんて……。あっ、僕も攻撃するー」
駆け寄って、ゴボウでペチンと叩く。
同時にサンダーの連続攻撃が炸裂し……。
『ウグワワワワーッ!!』
日和坊は断末魔をあげると、光の粒になって消えてしまったのだった。
すると、結界もパチンッという音とともに弾けて消滅する。
後には、ボコボコになって地面に転がっている支部長だけ。
「わ、わしの結界が……! 代々受け継いできた日和坊が……!!」
「妖怪って、代々受け継いでたんだ……」
僕がボソッと言ったら、チャット欄がざわついた。
※『つまりデーモンと契約してる集団だったってコト……!?』『霊合教と一緒じゃん!?』『退魔師、恐ろしい奴らだ!』『かざりんとサンダーのお陰で、悪の野望は潰えたんだ!』
あっ、ストーリーが出来上がっていく!
「あのあの皆さん、落ち着いて! これはその……!」
僕が慌てて手をバタバタ振ったら、ゴボウがスッポ抜けた。
それがピューンと飛んでいって、御本尊に命中。
大日如来を模した御本尊はカッと第三眼を見開き『ウグワーッ!?』と叫んで真っ二つに裂けた。
一瞬だけ、ブワッと天使の羽みたいなのが舞い上がったように見えたけど……。
ゴボウが発する謎の光で、みんな蒸発してしまったのだった。
あの御本尊、意思があったんだ……!
なんか、退魔師の世界には僕が知らない何かが隠されてそうだぞ……。
でも、僕には感慨にふける暇なんか無かった。
だってそれは……。
『かざりちゃん、早く帰ろう! このホットな状況下でボイスを収録して発売するんだ!!』
Aフォンから社長の声が響いてくる!
※モチョチョ『ボイス楽しみ過ぎる!』御座候『はよう! はよう!』『今から購入ボタン連打する』
み、みんなが待ってるー!!
「じゃ、じゃあサンダー! 僕この後も仕事あるから!」
「お、おう! 中身が入れ替わってから、凄まじいアイドル売りしてるんだよなあ社長……」
サンダーがぼそっと呟くのが聞こえた。
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