第41話 別の肉体で両親に会うと気まずい
僕は今……。
花咲里さんと一緒に安倍宇宙明さんの拠点に来ています!
「き……気まずい……。気まずいなあ~……」
「何が気まずいってのよ! あんたの親でしょ? 会うのは当然じゃない」
「だってさ! 今の僕って花咲里さんの体に入ってるじゃないか! いや、父さんと母さんのことは心配だよ? だけど、やって来た息子が別の体に入って女の子になってるって……どう説明したらいいんだーっ」
「言われてみれば異常事態よね……。冷静になって考えたらやばかったわ」
雑居ビルの前、二人でうーんと唸っていたら、安倍宇宙明さんの声がしたのだった。
『二人とも立ち止まって、何をしているんだね? 入った入った!』
「見られてる!」
「監視カメラあんのかな」
「式神でしょ」
「式神ぃ? そんなアニメとかゲームみたいな……」
「僕らが使ってるAフォンだって式神技術の応用なんだよ? ……って社長から聞いた」
「マジで!?」
二人でぺちゃくちゃ言いながら階段を昇る。
エレベーターもあるんだけど……。
「明、あんたは体動かしなさい」
「えーっ。ちゃんと毎日運動しているよ?」
「それでも明らかにどんどんお肉付いてきてるじゃん! こんな太ももの太さが分かるスカート履いて!」
「ファノリーさんが一緒に選んでくれて……。一族のお店だからって安くしてくれたんだけど。サイズもぴったりだし」
「ぐうーっ、あたしだった頃よりも仲良くなってる! とにかく! 少しでも動いておデブになるのを防ぎなさいって言ってるの!」
「はぁい。でも、本当に毎日ご飯が美味しくて……。ストレスから解放されたおかげかな……」
最上階まで階段で上がると、そこには扉も何も無かった。
いや、他の階も、扉が一切無かった気がする。
「これ、エレベーターじゃないと入れないやつじゃないかな……」
「ええーっ!? そんなややこしい構造ってことある!?」
「あるんじゃないかな、陰陽師の人だし」
「め、め、めんどくさーい」
『やれやれ。まさか階段で来るとは。特別に入口を開けてあげよう』
そうしたら宇宙明さんの声がして、何も無い壁が扉に変わった。
どうやら術で隠されていたみたいだ。
鍵は掛かってない。
開けると、その奥に長い廊下。
薄暗い先に、明るい空間が見えた。
「お邪魔しまあす……」
「入るからねー」
僕がこわごわと、花咲里さんがズカズカと入室した。
よくそんなに堂々と歩けるなあー。
「怖がったって始まらないじゃない。それに宇宙さんは味方なんだから、そんなに気を張らなくていいのよ!」
「いやあ、陰陽師は退魔師にとって不倶戴天の敵だし。すくなくともそう教えられて育ったからなあ」
だとすると、その陰陽師に匿われている両親はどんな気分なんだろうか。
うーん、心配だ、心配だ……。
廊下を抜けて、明るい部屋に到着した。
そこは応接間になっている。
「あれ? この前と部屋の作りが違う」
「いかにも。来客に合わせて繋がる部屋を変えてあるんだ。ようこそ二人とも。私の事務所へ」
和装の男性がいた。
どこか狐みたいな印象の人だ。
なるほど、陰陽師だなあ……。
陰陽師は狐で、退魔師は穴熊だと言われたりする。
陰陽術は相手を化かすもので、退魔師の法術は穴蔵に逃げ込んだ魔を、追いかけていって祓うものだから。
「二人を呼んだのは他でもない。明くんには、ご両親との再会。花咲里さんには……いよいよ決戦の時が迫っているぞ、という連絡のためだね」
「再会……と、決戦!?」
とんでもない言葉に、僕は驚く。
「何と決戦するの!?」
「退魔師とだよ。彼らは、伝説の英雄の名を受け継いだ君に喧嘩を売ってしまった。それがどういうことか分からないくらい、彼らは耄碌してしまったんだねえ。いやあ……恐ろしいことになるぞ。世界が動き出すだろう。これに乗って、私も退魔師を叩いてこちら側に恭順させるように働く予定なんだ」
「あわわ……恐ろしい事を言ってる……」
僕が震え上がり、花咲里さんが「おもしろそー!」とか何も考えてなさそうな事を言った。
そこに、新しい入室者が現れる。
とても見覚えのある、中年の男女だ。
「明……!」
「明、無事だったんだね!」
二人が駆け寄る!
花咲里さんに!
そうなるよねえ!
そして二人ともハッとして立ち止まった。
顔がギギギ、と音を立てるようにこっちを向く。
「母さん、明の中身はこっちだった」
「そうだったわ! あの明が、こんな可愛らしいお嬢さんになって……。ふ、ふ、複雑……!!」
「色々ごめんね……!!」
両親が、花咲里さんと僕を交互に見て、とても困った顔をしている。
と、とにかく無事で良かった!
席について、今の状況を教えてくれる父。
「私達は、宇宙明さんの事務所で手伝いをさせてもらっているんだ。これまで分断されてきた、陰陽術と退魔行。この二つはどちらも魔と戦うための力でありながら、人の思惑で長い間を反目し続けてきた。だが、霊郭が一般的に出現するようになり、力を持たぬ市井の人々から配信者という戦士が現れる時代になった。歴史の裏に隠れてきた退魔師は、既に表舞台では存在感を失っている。今こそ我々は表に現れ、陰陽道とも手を取り合い、人を救うため尽力すべきなんだ」
「父さん……! そこまで退魔師と世界のことを考えてたんだね……!」
ちょっと感動。
先のことを見据えていたのだ。
なお、僕に返答されて、父がちょっと照れた風になった。
母に肘打ちされる。
「明ですよ! 若い女の子の見た目だからって、なにデレデレして!」
「す、すまない母さん」
うん、二人が元気なようで何よりだ!
そこからは真面目な話になる。
母が話を引き継いで、
「世の中から隠されてきた退魔師の技、退魔行が、花咲里さんのお陰で世間の目に晒される事になりました。これは大きな助けだと思っています。宇宙明さんにお世話になってこんなことを言うのもなんですが、陰陽術ばかりが魔を祓う力として重用されるのは面白くありませんからね。退魔行だってやれるんです。それを見せるためにも、古い慣習に縛られた上の人達をどうにかしないといけないのです」
両親はそういうことで、宇宙明さんに退魔師の技や組織構成、知る限りの情報を伝えているらしい。
各地の陰陽師も、裏の社も動き出し、退魔師包囲網みたいな形が生まれ始めている……とか。
「大事になってきたなあ」
「何を他人事みたいに言ってるんだ。明が花咲里さんと入れ替わったのが全てのきっかけだろう。お前……こう……なんというか、その……ふわふわした女の子みたいな性格になって来たな。父さん、とてもいいと思う……あいて!」
また母に小突かれてる。
息子に粉をかけないで欲しいなあ!
こうして再会は終わり、それ以上にきな臭くなりつつある裏社会の流れなんかも聞くことになってしまった。
「えっ!? こっちにメインで関わるのあたしなの!? なんでー!? 法術があるから!? 法術を異常に使いこなしてるから!? なんでー!?」
巻き込んでしまってごめんね花咲里さん……!!
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