第40話 いろいろゴチャ付いてきた!
明の横に、Aフォンから浮き出したチャット欄があって、そこでリスナーが大いに盛り上がっている。
※モチョチョ『長ネギつえー』回転『見栄えがするよな』『ダンジョン以外にも人間にも通用するんだなあ』『今のダンジョン、もしかして……』『襲撃者の自作自演だなこりゃ』『ダンジョンを作り出す奴らがいたってこと!?』
「ああ~、退魔師の秘密が漏れてしまった~」
「あんた今更何言ってんだ」
なんか頬に両手を当ててショックを受けてる明。
あたしは思わず、明の脇腹を小突いた。
うおっ、ぷにって言った!!
※今川『ピピーッ! ボディタッチでおじゃる!!』御座候『いけませぬ……いけませぬなあ……』『うらやまし……』『ちょっと指が沈み込んだよな』『柔らかいのが分かる』回転『セクハラと言いたいが、元自分の体だからな』
「くそーっ、やりづらい!」
あたしは明から距離を取った。
「でもみんなありがとー! なんかこう……記憶にあるのより全然楽で、びっくりしちゃいました。きっとみんなの応援のお陰かな? あ、そうそう! アクリルスタンドは届きましたか? 工場フル稼働で生産して、すぐに送ったみたいですけど」
※『きたー!』『三つ揃えた!』『机の上に並べてニヤニヤしてる』
なるほど、明の凄まじいパワーアップは、アクスタによるものだったのね。
ものすごい速度で生産されたアクスタが、猛烈な勢いでリスナーの家に届いた。
そこから集まる同接パワーが、明を強化してるってわけだ。
さっきまでいた一般退魔師みたいな連中だと、もう明の相手にもならない。
あいつらそもそも、あたしの武器がコモンの状態でやりあえるレベルだしね。
Aフォンの撮影圏外で、ほむらと恵美奈がなんか腕組みしている。
なんで同じポーズしてんの?
「上鳴くん、こっちに来てほしいですぞー!」
「こっちこい、こっち!」
「へいへい」
呼ばれて、配信から外に出た。
ダンジョンは急速に崩壊し、周囲はいつもの駅前ロータリーに戻るところだった。
明が、一般人の顔にモザイクをかけつつ配信を継続している。
駅前歩きながら雑談配信してるなあ……。
図太くなったなあ……。
「上鳴くん、これは一大事なのではないですかな? 上鳴くんを狙っていた連中が、ついにかざりんさんを狙い始めたということですぞ!」
「言われてみればそうかあ……。鎧袖一触って感じだったけど」
「意味わかんないパワーだったわね、あれ。でもまあ、これって奴らの暴走っぽくない? 宇宙さん、絶対こういうやらかしは見逃さないから……近々決戦が来るかもよ?」
「マジで? いやあ、助かる……。あいつらがいると、安心してダンジョン配信できなさそうだもんな。滅ぼそう滅ぼそう」
あたしも率直な意見を述べ、この場の女子三人で頷きあうのだった。
というか、なんで一般人である恵美奈が積極的に……?
「ははは、私は上鳴くんにずーっと付き合ってきてますからな」
「言われてみればそうだな……」
巻き込み続けているというか、最初に巻き込まれたと言うか。
あれ?
見覚えのあるギャルっぽい女子高生が明のところに走っていく。
彼女、あたしの元のクラスメイトだった気がするんだけど……。
留学生の土田ファノリーさん。
彼女が明に接触している。
いつの間に仲良く……いや、あたしがあの体だった頃も、普通におしゃべりする仲だったからな。
明が謎のコミュ力を発揮して、友人になっていてもおかしくない。
「なんか凄い魔力を持った人が走っていった気がするわね……」
ほむらがボソッと呟いた。
「……さあ、甘いものを食べる集まりも、なんかダンジョン配信が絡んでめちゃくちゃになっちゃったな。どうする?」
「ここで解散しましょ。私も流石に帰るし」
じゃあね、と去っていくほむらなのだった。
「お疲れー。恵美奈は?」
「私はもう少し上鳴くんとお喋りしてから帰りますぞ」
「そお? じゃあどうするか……。適当に駅前ぶらつく? 事務所行く?」
「事務所に行くのは流石に悪いですぞ」
「そっか。じゃあぶらつこう」
ということで、恵美奈と二人で駅ナカのショッピングモールを覗きつつ、他愛ないお喋りなどをした。
なんて女子らしい放課後!
こんな日を過ごすのは、高校生になって初めてかも知れない。
いや、あたしは今男子高校生なのだった。
女子アイドルとしての道が断たれた結果、男子高校生の日常とか青春がやって来ている。
なんだ?
なんだこの……なんだ?
いや、楽しいんだけどさ。
恵美奈がトイレに行ったので、彼女を待つあたし。
そうしたら宇宙さんからの連絡が来たのだった。
『やあ、上鳴明くん。配信見ていたよ。大暴れだったねえ。まあ……彼女の無体な活躍で、君の暴れっぷりも常識的な範囲に見えてたけど』
「あ、どうもどうも。やっぱ同接パワーは半端じゃないですよ。俺はまだ、自力でなんとかできるとは言え……。そういうの軽く超えてくるでしょ」
『そうだねえ。それにしても、退魔師たちは実に愚かな選択をした。名を継いだ彼女を襲うということがどういう意味か分かっていなかったんだ』
「でしょうねー。レジェンドの後継者を襲ったってことは、レジェンドの関係者が敵に回るってことでしょう?」
『そうなるね。私がなにか仕掛けなくても、勝手にドツボにはまってくれている。ここで追い込みをかけて、退魔師連中の古いトップを追い落としてしまおう。実は彼らの内部ともつながりを作っていてね』
「ふんふん。宇宙さんやり手ですね? で、俺は何をしたらいいんですか?」
『ひとまず……きら星の名の下に集まった関係者とか眷属が、退魔師に喧嘩を売るから。そこに便乗して配信して欲しいな』
「オッケーです! やりましょう!」
配信に繋がる!
登録者が増える!
あたしが有名になる!
女子アイドルとしての道を断たれても、こうやって男性配信者として名を挙げ、アイドルみたいになればいいのだ!!
いやあ、今の環境、悪くないなあ。
『それと上鳴くん』
「はい?」
『ご両親が君に会いたがっているね。顔を見せてあげてくれないかい?』
ご両親って……明のご両親!?
な、な、なんてこったーっ!?
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




