第35話 グッズ(試作品)到着!
「明、何を眺めてニヤニヤしてんのよ」
ノックもなく家に入ってきた花咲里さんが、不思議そうに首を傾げた。
この人はいつもこんな感じで、僕の体はもともと自分のものだったということで、遠慮は必要ないと主張するのだ。
プ、プライバシーを尊重してほしいなー。
「何よ。あたしの部屋だって勝手に入ってきていいって言ってるでしょ!」
「花咲里さんは男子だし……」
「た、魂は女子なの!! あんただって魂は男子じゃんー! っていうか明、最近あたしの見覚えがない服をよく着てて、どれもゆったりしてるんだけど」
「前のはサイズがきつくなっちゃって」
「や、や、やっぱり! やっぱりあんた、お肉が付いてきてるのね! ひぃぃ、あたしがどれだけ節制して体型を保っていたか……」
「カザトモのみんなは喜んでくれてるよ……?」
「そ……そんな……。男はムチムチした女が好きってこと……!? いやいや、女子人気が……」
「女の人も、妹にしたいって喜んでる……」
「ショーック!! もうだめだあ……おしまいだあ……」
玄関で崩れ落ちる花咲里さんだった。
ショックを受けておられる……。
だけど、すぐに復活するのが花咲里さんだ。
立ち上がり、僕がテーブルの上に乗せているものを見にやってきた。
「なになにそれ? 不思議な形をした透明な板……。ま、ま、まさか」
「僕のアクスタ……」
「うおあああああああ!!」
ずざーっと滑り込んでくる花咲里さん!
そ、そのオーバーアクションは何!?
そしてテーブルを見上げて、愕然とした。
「あああああ……。今のむちむち明のままアクスタになってしまった……!!」
「葉月ママのアバター、僕の体型を反映するのすごいよね。なんかちょっとお肉がついたらバランスが良くなったまであるかも……」
「あ、あ、あたしの初めてのグッズが! むちむちだなんてーっ!! ウグワーッ!」
「花咲里さん、人の家でのたうち回るのやめてね」
アクスタは、僕のスタンダードな立ち姿。
ちょっと可愛くポーズを決めた写真で、このために撮り下ろしたもの。
しかも立体のアバターを使ってるということで……見る角度によって、絵も角度が変わるホログラム仕様なのだ。
正面からは普通に見えるけど、横からはちゃんと斜めの姿に見える。
アクスタってすごいねえ。
「そ、それ最新仕様のやつじゃない! 作るの高いのに!」
「なんか、BS出版さんが一ポーズにつき一万個作るそうで……」
「な、な、なにぃーっ!! 一万!? そんなに!? はけるの!?」
「これから予約を開始するとこ。Aフォンで背景を加工して、それでこの部屋から宣伝やろうかなーって」
「そ、そう……。売れるといいわね……」
花咲里さん、どうにか冷静さを保ってる。
こんなにショックを受けるとは思わなかった……!
「じゃあ、配信するから花咲里さんは静かにね」
「お、おう。明もすっかり配信者が板についてきて……」
ということで、アクスタの宣伝配信スタート!
「みんな、こんかざー! 今日は大事なお知らせのための配信です」
※『こんかざー!』モチョチョ『こんかざ!』『今日もかわいい』『こんかざー!』
『配信間に合わせるために全速力で帰ってきた!』『仕事速攻で終わらせた!』
「えっ、本当ですか!? 僕のために!? ありがとう~!! でも無理しないでね」
※『ああ~^』『やさしい』『やさしみ』大判『圧倒的かわいさ』『女神』
「お、男をたらしこむ技まで身につけつつある……」
※『男の声がしたぞ!』『ま、まさかかざりんに男が!?』『って、いつものサンダーマスクだろ』回転『中身が入れ替わっているからな……実質同一人物』
「そうなんです。こっちに彼がいます。今日の発表内容を教えたら、凄くショックを受けてて」
※『ショック!?』『ショックを受ける内容とは一体……』
「では……発表します! 実はその、僕の……アクリルスタンドが正式に発売されることになりました!」
※『おおおおおおお』『やったー!』『手元にかざりんを置いておける!』『グッズ待ってた!』『やっと金が払える……!!』
「みんな本当にお待たせしました! あの、BSホールディングスさんからお声掛けいただいて、それで作れました! このためにたくさん新しいポーズを撮り下ろしたので、それがアクスタになってます」
※『配信者のアクスタのいいところ、ここだよなあ』モチョチョ『見たこと無いかざりんを手元に置いておける……』御座候『こんなに嬉しいことはござらん』今川『はよ! はよう、アクスタを見せておじゃ!』
「はい! 今見せますね……。じゃーん、これです! ちょっと恥ずかしいけど……」
※『うおおおおおお』『おおおおおおおお』葉月『通販は! 通販はいつなんですか!!』回転『今葉月ママ通らなかった?』『一般通過葉月っち』
「えっ、葉月ママが!? あ、あ、ママー。お陰様でアクスタになりました。いつもありがとうございます。僕は毎日ママに感謝してます」
※葉月『ああ~』(上限額赤スパ)回転『ナイスパ!』モチョチョ『息をするように最大額の投げ銭するなあ!』
「あーっ、ここでスパチャしないで下さい、スパチャしないで下さい。グッズを買ってくださると……僕も、その、会社も嬉しいので……」
僕はペコペコ頭を下げた。
動く度に、手にしたアクスタの角度が変わり、ホログラム機能がリスナーにもはっきり見えたみたい。
※『ホ、ホ、ホログラムアクスタ!!』『マジかよ……!!』『初手からそんなすごいの出るの!?』回転『現代魔法の一般化によって実現した、鮮やかな写真に角度がついて見える映像技術か……』『でもお高いんでしょう?』
「えっと、実はその……。この他に二種類の、全三種類で、一つ1800円になります!」
※『やすぅい!!』モチョチョ『タダみたいなもんだよ!』葉月『一万個買います』
「一万個ダメー! 今の在庫、一種類ごとに一万個しかないので……。一人一個でお願いします……。あ、えっと、今から概要欄に通販先のBS通販のリンクを貼りますんで……。風神号、お願い!」
Aフォンに声を掛けたら、即座に概要欄が更新された。
通販サイトへのリンクが貼られたみたい。
※『風神号?』『Aフォンに名前つけてるんだ』『思ったよりかっこいい名前で草』『魂が男の子だからね……』『おいサイト繋がらないぞ!』『うおおお更新連打!』
「えっ!? 繋がらない!? ちょっと待って下さいね……あっ、ほんとに繋がらない! なんでー!?」
※回転『アクセスが集中してサーバーの処理が間に合ってないんだろう。少し時間を置けば……』モチョチョ『繋がった! うおおお購入購入!!』
コメントがお祭りみたいな騒ぎになった!
そして三分くらいしたら……。
※『あーっ売り切れた!』『全品売り切れだあ』
「うそぉ!?」
「マジで!?」
僕も花咲里さんも驚く結果になったのだった。
一瞬で!
一万個×三種類が売り切れてしまった!
こんなに売れるものなの!?
すごい結果になった、僕のアクスタ通販。
BS出版さんでは即座に一万個ずつの再生産を決定し、うちの社長は大喜びで事務所で踊っていたらしい。
「床が抜けるかと思っちゃった」
と後にリーシュさんから聞いたのだった。
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