第30話 何故かライバル視される彼女
配信終わり。
これ、なかなかいい撮れ高だったんじゃない?
ダンジョンも、中で大暴れされて驚いたのか大人しい。
モンスターも遠くからこっそり覗いてるレベルだし。
今回はダンジョン踏破が目的じゃないから、これで許してやるわ!
「あんたなかなかやるじゃん」
フレアが横まで来て、肘で小突いてきた。
そして彼女の変身が解ける。
後にいたのは、ウェーブヘアをポニーテールにした女の子だった。
思ったより背が高い。
それにあたしと同じくらいの年頃では……?
「無名の配信者であれだけ戦えるの、素質あるんじゃない? っていうかあれ何よ? 見たことない魔法なんだけど」
「分からん。法術って言うらしい」
「あんた、自分の魔法なのに知らないの? はあー? 意味分からん」
二人並んで昇降口から出てくると、宇宙さんが手を叩いて喜んでいた。
「いやあ傑作だった! 二人ともお疲れ! これで退魔師どものメンツは丸つぶれだね! しかも顔も名前も全国配信だ! アーカイブで名前だけノイズ被せて、顔はモザイク掛ければいいだろう」
なんか今後の流れをバーっと喋ってるし!
フレアは宇宙さんを見ると、
「やっぱできる大人って感じだよねー。いつ見ても素敵かも」
「なに、あんた宇宙さん好きなの?」
「ばっ、お前、何言ってんの! あんなおっさん!」
「あんま年の差あると親が泣くよー」
「はあー!? うるさいんだけどー! ってかなんで喋り方ギャルっぽいのよ!」
ポカポカ叩かれた。
ははは、くすぐったい。
鍛えられた明の体、女子の打撃ではびくともしないな……。
フレアは生身だと弱い。
弱点を掴んじゃったねえ。
その後、宇宙さんの車に揺られて事務所まで。
何故かフレアもついてきた。
「とりあえず、今日はありがとう。俺、上鳴明。あんたは?」
「別に本名知らなくて良くない? 魔女は真の名を名乗らないものなんだけど……。ほむら。七咲ほむらよ。てーか、あれだけできるのがなんでずっと無名だったの? どこかの大会とか出てなかった? いや、格闘技をしてた動きじゃないな。本能で動いてたみたいだったし」
「音ゲーの大会なら出てた……。なんなら全国優勝した」
あたしの本来の肉体でな!
「音ゲーって……。いやいや」
冗談だと思われた?
ここで事務所に到着。
社長と談笑する明がいた。
なんか今日のあいつ、やたらキラキラしてない?
「あ、おかえりなさーい」
「お帰りー。あれ? 宇宙さんと……その娘もしかして」
さっきまで配信を見ていたらしい社長。
既に編集作業は始めていて、今は休憩中らしい。
フレアが簡単に自己紹介したら、社長が、
「ええーっ! あ、あ、あのリトルウィッチ・デュオ!? ははーっ! お世話になっております!」
なんかかしこまった!
「なんでかしこまってんの?」
「リトルウィッチ・デュオっていう名前は、俺の師匠のチャラウェイさんがチーム組んでた、とある配信者の名乗ってたチーム名なんだ。だから多分彼女は、その配信者の娘さん……。大物の二世だ」
「な……なるほどねえ……。それで若いのに異常に強いんだ……!」
別の意味での、親の七光り!!
先代のネームバリューを受け継いで、強い同接パワーを得てスタートできる分、強くなる。
そして場数を踏めるから、本来の実力も強くなる。
多分そういうタイプだろう。
あの野太い声で喋る本は謎だけど。
フレアは社長と喋った後、ふと明を見た。
「えっ!? 花咲里明日奈!?」
「えっ!?」
「んお?」
なんであたしの名前を!?
そして明はプリンを食べていたらしく、食べかけの状態できょとんとしている。
こいつ……サバゲーが終わってから図太くなったんじゃない……?
「なんであた……明日奈の名前を知ってるの?」
あたしが聞くと、フレアが難しい顔をした。
「私も……アイドルやりたかった……! だけどパパが魔女との両立は無理って言って、一縷の望みをかけてアイドル魔法少女を目指して活動してるのよ……。だけどバイオレンス方面ばっかり有名になってる……。私のそんな苦悩はアクアにいつも冷笑されている……」
ちょこちょこ出てくる魔法少女アクア、性格悪くない?
ちなみにあたしがこの女に対してフレンドリーな理由は、彼女がスレンダーだからだ。
敵ではない。
むしろ……。
「ちょっとかざり。あんた最近、少しむちっとしてきてない? ちゃんと食事節制してる?」
「えー? 配信は体が資本だし、きちんと三食とってるよ? あと、友達が美味しいところ誘ってくれるから、食べる回数も増えたかも……」
「な、な、な、なんですってぇーっ!!」
こいつーっ!!
「かざりちゃんは天然のままで、今ぐんぐん人気上昇中のアイドル配信者だからねえ」
明のお陰で事務所の経営がぐんぐん上向いている。
社長はご機嫌だ。
「ほーん、アイドル……。ほーん……。地下アイドルよりも配信アイドルとしての才能があったってわけね……ふぅん……。触れれば刺さるようなあの尖ったところも丸くなって……」
「フレア、あんた地下アイドル時代のあたし……花咲里明日奈を知ってたの?」
「ライバルを研究する意味で、何回も見に行ったわ。一ヶ月半であんなに傷跡を残すアイドルは初めて見た。絶対バイオレンス系で同類だと思ったのに、こんなにかわいい系で爪痕を残すようになるなんて……裏切り者……!!」
おお、燃える瞳のフレアが明を睨んでいる!
明はきょとんとして、またプリンを食べた。
「プリン食べるなー! いや、食べてもいいけど! ふう……私、ライバルの存在を確認できたかも。それだけで今日は十分。宇宙さん、帰ろ!」
明がなんか、葉月さんにもらったプリンでとか、もごもご言ってる。
この状況で、宇宙さんはとても楽しそうなのだった。
「ああ。では皆、これで失礼。また退魔師どもを叩きのめす計画、練っておくからね」
「私も帰る! んもー、宇宙さんの依頼じゃなかったら聞いてないからね!」
二人は去っていった。
彼の、退魔師をギャフンと言わせることへの情熱はどこから来ているのか。
そしてなぜか、魔法少女フレアに一方的にライバル視された明!
かざりはどうなってしまうのか!
「あ、花咲里さん。僕ね、葉月きららさんから『きら星』って名乗りなよーって言われたんだけど」
「はあ!? きら星ってあんた、それ、伝説の配信者の……」
確認した、かざりちゃんねる。
その名前が、きら星かざりchに変わっていたのだった。
「あ、あ、あたしの知らないうちに、状況がどんどん進んでるーっ!」
「配信に花咲里さんいたのに、確認してなかったのか……」
うっさいわね!?
っていうかこいつ、だんだん図太くなってきてるんだけど!?
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