第27話 乱入、炎の魔法少女!
迷路みたいになった校舎の中を駆け抜けながら、出てくるモンスターをぶん殴る!
壁の落書きが浮かび上がって出てくるゴーストとか、トイレから飛び出す触手みたいな腕とか、蠢きながら相手を飲み込もうとする階段とか!
「おらおら! おらーっ! ダンジョンで戦ってる間、コンボは持続してるっぽいなこれ」
※『バイオレンスアクション!』『ゴーストがボコボコになりながら宙に浮いて、とどめの一撃で吹っ飛ぶのは爽快だなあ!』『この配信癖になるぞ』『BGMに合わせてぶん殴るから凄く楽しい!』
楽しんでくれてる楽しんでくれてる!
そしてあたしのチャンネルの登録者が……900人を超えてる!
うおわーっ!!
は、初めての領域~!!
同接が500人超えだから、来てくれたみんなが登録してくれた感じ?
ヤバい!
退魔師をボコって、あたしが有名になって、ダンジョンもボコる!
宇宙さんのプロデュース、完璧じゃん。
「待てぇーっ!! はあ、はあ、とんでもねえ速度で逃げやがって!!」
「おう、だが俺らが追いついたからお前は終わりだぞ、上鳴の」
二人組の退魔師が現れる。
一人はいつの間にか、あたしの進行方向に。
挟み撃ちだ。
あたしはナックルダスターと、腰からペンライトを抜いた。
ペンライトも光ってるなあ。
※『二対一だと……!?』『人間、一対多には弱いものなんだよな』『大丈夫!?』『かなり不利じゃない?』
「問題ないぜ!」
あたしはコメントを読み上げて返事をする。
「だって、音ゲーは一度に三つも四つもバーが降って来るからな!」
「抜かせーっ!! 法術発動!」
「何をぶつぶつと! かあーっ!!」
左右から退魔師が襲いかかってきた!
法術は、あたしの体が片一方の退魔師に引き寄せられてるみたいな……磁石か!?
さらにもう一方の退魔師が加速する。
こいつがもっと強い磁力で引き寄せられて、あたしをサンドイッチするわけだ!
「見切った!」
加速して襲ってきた退魔師の攻撃を、タイミングよくペンライトで弾く!
PERFECT!!
「なっ!?」
さらに引き寄せたやつに向かって、スピンしながらキックを叩き込む!
PERFECT!!
「ウグワーッ!? バカな、一手で見切っただと!?」
「あたし、そういう能力バトルもののマンガも読んでるからね! 実際に使うやついるんだなあ……。そしてこの体なら、反応できる!」
「こ……こいつ、今までの上鳴じゃない!」
「技のキレ、読みの深さ、そして俺達を一撃で弾く新しい法術……!! 気をつけろ!」
気をつけろというには、ちょっと遅かった。
あたしはもう、磁石で引き寄せ側の奴に、拳を振り上げている。
「おらっ!」
「ウグワーッ!? て、的確にガードを抜けて……」
「どこにヒットするか! 見えるんだよねーっ! オラララララララララっ!!」
「ウグワワワワワワッ!!」
「や、やめろーっ!!」
背後から襲ってくるもう一人。
振り上げた特殊警棒みたいなのの一撃は、振り返りざまにキックで迎撃!
こっちのがリーチが長い!
特殊警棒をPERFECT!と弾いたら、あたしの全身が再び光った。
※『パワーアップ来た!』『コンボ達成だって!』『うおおおおお』『今度はなんだ!?』『レア!?』
「その通り! レアリティ、レア!!」
明らかに材質から変化したナックルダスターが、連続で退魔師にめり込む。
「ウグワワワワ、ウグワーッ!!」
殴って殴って殴って殴って、トドメのアッパーカット!
退魔師がぶっ飛んで、天井に突き刺さった。
振り返ると、もう一人が腰を抜かしている。
「ひ、ひいい! こいつ……こいつ誰だ! 上鳴じゃない! あいつはこんな……こんなとんでもない強さじゃなかったはずだ……! これじゃあ、上席のメンバー並じゃないか……」
「上席……!? まるで敵幹部みたいな……」
※『四天王的なやつきたー!!』『これ演出? ヤラセ?』『本番だとすると、日本やべえな……!』
逃げようとする退魔師だけど……。
突然、彼の周りに真っ黒なモヤが発生した。
そしてモヤから飛び出してくる、太い二本の腕。
「ぎゃひーっ! こ、これはーっ! や、やめて! やめてくれーっ!! ウグワーッ!!」
モヤから飛び出してくる、鬼みたいな怪物。
背中からブワーッと炎が吹き出して、周囲のモヤが消し飛んだ。
そして鬼はあたしを睨みつけながら、退魔師をガブッと食べる。
ひえーっ!
死んだでしょあれ!
凄いモンスターが出てきた感じ!?
「やれやれ……。末席の退魔師どもは弱くて叶わん」
落ち着いた男の声がした。
オールバックで和装で、糸目の男が闇から姿を現す。
「裏切り者の始末など、すぐにつけてしまえば良いのにな。同じ舞台に立つ必要すらない。やれ」
『おぉぉぉーっ!!』
背中に炎を背負った鬼が、吠えた。
「なんだ!? なんだあいつーっ!」
※回転『火車だ! 妖怪だぞ! モンスターと違い、ダンジョンに出現する妖怪は極めて強力だ!』
「あんた、かざりのチャンネルにいたやつじゃん!! なるほどねえ……! これは強そう……だっ!」
火車がすごい速度で突撃してくる!
背中の炎がロケットエンジンにでもなってんの!?
あたしはこいつをギリギリ、拳で迎撃した……と思ったら……。
Poor!
「スカされた!? いや、タイミングが合わない!」
※『格上ってことか!』『格上は難易度が上がるシステムなんだな』『頑張れーっ!!』
「頑張るけどさあ! うおおーっ!!」
火車の勢いが止まらない!
あたしはダンジョンの壁にぶち当たり、それをぶち抜き、火車にどんどん押し込まれていく!
やばい、これで分厚い壁に当たったら押しつぶされる!
「こっのっ……!!」
つま先を無理やり、火車とあたしの間にねじ込み……横に跳ぶ!
運良く、そこは階段だった。
背中からぶつかるのはめちゃくちゃ痛いけど、死ぬよりは全然マシ。
「いってえ……! 一時撤退!」
あたしは素早く立ち上がり、階段を駆け上がった。
火車が戻ってきて、追いかけてくる!
火車を操る退魔師も、後をついてくるみたいだ。
さらに、階段を登りきったあたしの左右から、退魔師たちが現れた。
左右に退魔師!
後方に火車!
ヤバい!
「これは……大ピンチかも……!!」
※『うおおおおお、どうなっちまうんだ!』『が、がんばれ……! がんばれー!!』
退魔師たちは舌なめずりしながら、各々の武器を構えている。
術を使うやつもいる。
「へへへ、終わりだぜ上鳴……!!」「手間かけさせてくれたなあ」
そいつらの先頭に、この間ボコったパーカーがいた。
「おうおうおう、忘れちゃおらんからなあ! 俺に恥をかかせやがって! 才能が無いくせに、粋がるからそうなるんだあ!!」
屋内に風が吹き始める。
あいつの法術、カマイタチ!?
火車もどんどん迫り、あたしに手を伸ばす。
こ、これはーっ!!
……というところで。
突然、廊下の窓が真っ赤に染まった。
「えっ!?」
退魔師の一部がそちらを振り向いた瞬間だ。
窓ガラスが蹴破られ……。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!! イグナイト・ストラーイク!!」
「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」
三人くらいの退魔師が纏めて吹き飛んだ!
砕け散るガラス。
というか、ダンジョンの外から誰かが無理やり入ってきた!?
埃が舞い上がり、それが燃え上がって一瞬で燃え尽きる。
薄暗い廊下の中で、乱入者の姿がはっきりと見えた。
『うおるるるるるる』
火車がそいつを……彼女を睨みつけている。
まるで、天敵が現れたとでも言いたげに後退る。
そこに立っていたのは、赤とオレンジと白の、カラフルでトゲトゲしたワンピースに身を包んだ女の子だった。
真っ赤な髪の毛が逆立ち、額のティアラがギラギラ輝いている。
あ、あたしはこいつを知ってる!!
「リ……リトルウィッチ・デュオ!!」
彼女は笑った。
「そうよーお。知ってるでしょー? ま、今回は私一人。強い方が一人だけでやって来たんだけど! 魔法少女フレア! 義により助太刀するわー!!」
宇宙さんの手配か!
とんでもない味方がやって来た!
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