第23話 ダンジョン分からせサバゲー
「丸七が丘サバイバルゲーム大会、スタート! 今回もみんなでダンジョンを分からせてやりましょう! それと! 弾に当たった方はゾンビにならず、きちんとヒットを宣言してその場で倒れて下さいね!」
始まった!
ダンジョンを分からせつつ、幾つかのチームに別れてサバイバルゲームをやるというイベント。
僕は当然ながらサバゲーは初めてで、聞いたことはあるんだけど、どういうものなのかは想像もつかないという状態。
「まあ任せて。私、こういう世界ベテランだから詳しいの」
「葉月さんが頼りになる……」
「ママって呼んでもいいんですよ……!」
「それはぁ、い、色々まずいのでっ!」
葉月さんの他に、男性配信者の人が二人僕らのチームにいる。
二人とも、葉月さん相手にペコペコ頭を下げてて「伝説とご一緒できるなんて光栄です」「えーっ、私はただの配信もするイラストレーターですよう」「登録者二百万人もいるただのイラストレーターがおるかい!」「あひー」とかやっている。
もしかして葉月さん、有名人なの……?
登録者二百万人って凄かったりするの?
※御座候『我らが姫は何も分かっておらぬぞ!』『この純粋で擦れてないところが最高なんだよな』『しかもおっぱいを愛する女子だ』『彼女の清楚さは少しも失われておらん』
「かざりんちゃんのリスナーさん、みんな後方で腕組みしてる」
「後方で……? 腕組み……?」
謎の表現なのだった。
「よし、では行きましょう。姿勢を低くして。君初めてですよね? 弾に当たらないためには、遮蔽を上手く使ってこう、ちょっと顔を出して周囲を伺って……移動する。これが大事だからね」
このチームを指揮してくれる男性配信者さんは、素顔でやるスタイルの人。
なんか覆面を被ったガタイがいい人で、名前はガードマスク二世さん。
伯父さんがそういう配信者だったらしい。
「は、はい! よろしくお願いします!」
「いいお返事だ! よし、行くぞ! あ、葉月さん、ここでは無法はできないので無防備にトコトコ歩き回らないでください」
「へ?」
腰が~、とか言って立ち上がっていた葉月さん。
顔に正面からBB弾が当たった。
「あひー! ヒットですぅ~!」
倒れる葉月さん!
「は、葉月さーん!!」
「いかん、このレジェンド、サバゲーでは弱い!!」
「現実と違って無双できないんだぞ!」
二世さんと一緒の男性配信者は、天然パーマの強面の人。
普段はゲーム配信をしつつ、たまにダンジョンも行くらしい。
クジョーさん。
「葉月さん、この回のゲーム終わるまでそこで寝てて下さい」
「後で俺等迎えに来ますからね」
「ふぁい。面目ねえ」
※『過去の栄光も通用せぬサバゲー!!』『ここは現実よりもハードだぞかざりん!』『かざりん頑張れー!』回転『彼女は結構慎重だからいいとこまで行けると思う』
僕の武器は、なんだかよくわからないけどアサルトライフル?型のエアガン。
反動が少ないので女子でも扱いやすいらしい。
葉月さんはかっこいいからってハンドガンの二丁拳銃だったなあ。
「あれは真似しちゃいけないからな」
「美学に徹するけど現実の自分が強すぎて、警戒を忘れた者の末路だ」
「葉月さんが色々言われてる!」
「あのやられ方は言われても仕方ない」
「そ、そうなんですか……!!」
茂みの間を移動しながら、高台を占領しているチームに近づく。
途中で、倒れている配信者の人があちこちにいた。
あと、消滅しかかってる妖物もあちこちにいる。
や、やっぱりダンジョンってこと!?
妖物が出てきて、みんなエアガンで退治してるの!?
「カ、カザトモのみんな~。教えて~! この大会、もしかしてサバゲーしながらダンジョン攻略もするの……?」
※『その通りです!』御座候『理解が早いでござるなァ』モチョチョ『ひそひそ声はまさしくASMRぞ』
「な、なるほどぉ~。参考になりますー。えーえすえむあーる? それはわかんないですけど」
「かざりさんは、教えたがりおじさんの心をくすぐるのが上手いな」
「天才的。絶対これから伸びる」
二世さんとクジョーさんは何を言っているんだろう……!?
そんな僕らは、高台を奪取すべく様子を伺う。
そうしたらチャンスがやって来た。
高台目掛けて、妖物が出現したのだ!
猿の頭に虎の前足、熊の体に蛇の尻尾が生えた……鵺だ!
それが空中から飛び出してきて、赤ん坊みたいな鳴き声をあげながら高台の配信者に襲いかかる!
「うおーっ! 出やがった!」「うてうてー!」「ぶちかませー!」「イヤッハー!」
「ぬ……鵺相手なのに、なんでみんな楽しそうなの……!?」
「そういうお祭りだからだよ。さあ、俺達も行くぞ! 漁夫の利で鵺ごとあいつらを撃つぞ!」
「ひぃ、そんな人道に反した事を……」
「このサバゲーだと基本戦術の一つなんだよ。さあ、やってみようかざりさん!」
「は、はいぃ! うりゃあー!」
僕は立ち上がって、叫びながらアサルトライフルを連射した。
っていうか引き金を引きっぱなし。
すごい数の弾が吐き出され、鵺にボコボコ当たる。
こんなおもちゃの弾が……。
『オギャーッ! ウグワーッ!!』
ききき、効いてる~!?
なんでーっ!?
そして巻き添えになった配信者の人達が、
「ヒットー!」「うおーっ、背後からとはーっ! ヒット!」「ヒット~!!」「あーんやられたー! ヒットー!」
ばたばた倒れた。
鵺も『ウグワーッ!!』と叫んで消滅した。
「ど……どういうこと……?」
「かざりさん、棒立ちダメ! しゃがんで!」
「は、はい!」
バックアップで走ってきた二世さんに言われて、僕は慌ててしゃがんだ。
そして高台を占領!
「これはね、長らく続けてきたサバゲーで、モンスターも弾を当てられたら負けって共通意識が生まれたからなんだよね。多くのリスナーがそういう意識でこの配信を見る。そうすると、この場そのものがそういうルールによって支配されるわけ」
「あ、なるほど……! これ、まるごと儀式みたいなものなんですね……!」
うんうん頷く、二世さんとクジョーさんなのだった。
「かのきら星はづきが提唱したダンジョン学における理論でね。それが広がったことで、こうやってダンジョンを支配、管理するやり方が一般的になったんだ」
※『ベテラン配信者たちも、何でも聞いて感心してくれる可愛い後輩の前では形無しである』回転『我らが姫、かざりんは我々教えたがりおじさん特攻だからな……』大判からのスパチャ【かざりん、二代目きら星襲名おめでとう】『あ、ほんとにチャンネルの名前変わってる!』葉月『あ、配信前に継承しました』『本人から譲り渡された名前かよ!』『すげえ』
「わわーっ!? なんかコメント欄が盛り上がってるー!!」
「かざりさん大きな声を出すと敵が集まるーっ!」
「わっわっ、ごめんなさーい!」
こうしてサバゲー第一回戦。
高台を取った僕らは生き残ったのだった。
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