第22話 レジェンドご一緒
アバターお披露目配信で、ポロッと口にした「コラボとか」の話がトントン拍子に転がり……。
驚くべきことに、翌々日にご一緒することになってしまった!
は……話が早すぎる~!!
僕は大混乱。
今は、一週間の配信予定表を社長に手伝ってもらって作っているんだけど、これを大きく書き換えることになってしまった。
本日はリスナーの皆さんとお昼の雑談ではなくて……。
「えー、葉月きららさんとのコラボ配信をすることになりました」
※『うおおおおお』『早速!!』『持ってる!!』モチョチョ『これは大変なことですぞ』回転『大きく伸びた配信者は誰もが、運命的な出会いやイベントに背中を押されている』
「よ、よく分かんないんですけど、胸を借りるつもりで頑張ります!!」
※葉月『胸を貸すよー!』『御本人!!』『またおるw』『忙しいんじゃないのw』
「あっあっ、よろしくお願いしまあす!!」
僕はペコペコ頭を下げるのだった。
※葉月『あと、私のことは葉月ママと呼んでくれていいです』
「な、なんですって。は……葉月ママ……」
※葉月『うわーっ』(最高額スパチャ)モチョチョ『うおおおおおお』(スパチャ)今川『まろも呼ばれたいでおじゃ!』(スパチャ)
「ああーっ! 皆さん落ち着いて! 落ち着いて下さい! うーわーっ、コメント欄がカラフルになっていくーっ!!」
そんな狂乱の配信から一夜明けて、今日はとある広場にやって来た。
ここはどうやら、もともとはダンジョンとの融和を唱える霊合教の本部だったところで、かのカルト教団は政界進出しようとしたり、テロ活動を行おうとしたり。
最終的には、当時の英雄、大京嗣也によって教主が召し捕られ、霊合教は解散したんだそうだ。
その跡地がダンジョン化するのに、そう時間は掛からなかったということで……。
「えー、第十回、丸七が丘サバイバルゲーム大会を開催しまーす! こちらは霊合教の跡地でして、御存知の通り何度踏破してもダンジョンが発生する厄介な場所です!ですので、こうして配信者を集めてダンジョンを舞台に蹂躙しながらサバゲーする集まりを定期的に行い、ダンジョンへの分からせを行っています! 今回も皆さん、お集まりいただきありがとうございまーす!!」
主催の人が開会を宣言し、周囲からわっと拍手が巻き起こった。
僕もポカーンとしながら、パチパチ拍手する。
なお、会場にはスタッフが入れないので、みんなAフォンのみを持参してきている。
花咲里さんは入れなかったので、僕一人だけだ。
さ、寂しい……!
早く、葉月さんを探して合流しないと……。
知り合いが一人もいない状況だ……。
「あっ、あの娘」
「葉月さんにアバター作ってもらった娘でしょ」
「初々しいねー」
「清楚だねー」
なんか噂されているのが聞こえる。
ひいー、恥ずかしい恥ずかしい。
僕の中には常に男としての感覚が残っているので、この可愛らしいワンピース姿で足や肩が出た服装が、大変……何ていうかその……見られてるとカーっと熱くなってきちゃうと言うか……。
「あっ、いた、いました!」
声が聞こえた。
お腹から出てる感じじゃないのに、周囲のざわざわを貫いて耳に届いてくるような、存在感のある声。
向こうから、パタパタという擬音がぴったりな小刻みな動きで、女の人が近づいてきた。
「かざりんちゃんですよね」
「あっ、は、はい! あ、あなたは……?」
「葉月きららでっす! きゃー、かわいい~。あひー、持ち帰りたい」
ほ、ほ、本物の葉月きららさんだーっ!
花咲里さんの背丈は、女の子としては平均くらい。
葉月さんはそれよりも結構背が高かった。
今回はサバイバルゲームとやらのために、アーミールックに身を固めている彼女。
その迷彩服がピンク色だった。
そして髪の毛もピンク色だった。
重装備な迷彩服を下から押し上げる、胸元の存在感!!
お、大きい……!!
僕はいけない、いけないとは思っていても、大きな胸があるとじっと見てしまうタイプだ。
ああ良かった!
反応するものがなくなってて、これほどホッとしたことはない。
目が離せないけど。
「かざりんちゃん……。私から大事なお知らせがあります」
「な、なんでしょうか!」
意志の力をフル動員して、僕は彼女の胸から目を離した。
いけないいけない、吸い込まれるところだった……。
「かざりんちゃんには苗字が無いでしょ? 設定されてないと思うんで……。もし良かったら、きら星というのを付けてもらっても。ほら、葉月きららの娘ということで」
「あ、なるほど……それいいですね……。じゃあ、お言葉に甘えて……!」
『マスターの名前を登録し直しました。きら星かざり。チャンネル名にも反映します』
「最近のAフォンはハキハキ喋るんだねー。私の頃はあんまり自己主張してこなかったなー。イギリスで色々研究した成果が生かされてるのかな?」
「そうなんですか? 葉月さんって実はベテランだったり……」
「ううん! 三年しか配信者してなかったもん! 最近はねえ……いろいろあって落ち着いたから、イラストレーターになったんです。ついでに配信もしちゃおうかなって。あ、でも諸事情でダンジョンには行きません」
「ほえー」
ママと呼ばれたい葉月さん、実は本当にママだったりしないのかしら。
「なので人生経験豊富な私。かざりんちゃんは胸を張ってママって呼んでいいんだよー! おいでー」
「あ、ああーっ、包容力を発揮しないで下さい! す、吸い込まれるぅ」
なんという引力を持った人だろう。
僕はするする~っと吸い込まれて、葉月さんにギューッと抱きしめられてしまった。
柔らかさー!
『配信を開始します』
「あっ、ちょっと待ってAフォン、今はまずいよまずい! や、やめてぇーっ! あ、あ、みんな、こんかざ~!」
※『こんかざ……!?』『!?』『!?』『!?』『!?』『!?』
画面が!
コメントが!
『!?』で埋め尽くされるーっ!
「み、みんなーっ! 違う、違うのーっ! こ、これは……僕、葉月さんの引力にやられて、それで自分からハグに飛び込んでいってしまって……!」
※『キマシ』モチョチョ『くぅ~っ! いきなり凄いシナジー効果だ!』回転『ふう……。今日はこれでいいか』御座候『ありがとう……ありがとう……!!』
「かざりんちゃんのカザトモさん、みんな分かり手だねえ。うんうん、リスナーと仲良しなのいいぞー」
頭まで撫でられてしまった。
た、大変だーっ。
ここから抜け出せる気がしない~っ!!
※サンダー『こらーっ!! お前やっぱりおっぱい星人だったのか!! シャキッとしろー!! というか巨乳は敵だーっ!!』
うおーっ!
花咲里さん!!
僕は意志の力をフル動員して、どうにか葉月さんの懐から離れた。
はあ、はあ、ダメになってしまうところだった。
大の男がこんな有り様なんて、視聴者のみんなには大変お見苦しいものをお見せして……。
※大判『なんちゅう……なんちゅうものを見せてくれたんや……』『おい今回神配信だぞ』『土曜日の昼下がりにこれをやってくれるという』モチョチョ『生きててよかった……』
あれえー。
評判いいぞー。
僕は首を傾げながら……生まれて初めてのサバイバルゲームに挑むことになるのだった。
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