第21話 アバターお披露目配信
「社長と花咲里さんがいない……。でも、アバターお披露目配信の連絡はしといてって言われたな……」
学校帰りの僕。
妙に優しいクラスメイトたちが、午後のお喋りに誘ってくるのをどうにか笑顔で回避し……。
こうして事務所へ。
「段々、女子として暮らしてても違和感を覚えなくなってきている僕がいる……! 危ない。これは危ないぞ……。おっと、連絡、連絡……つまり告知をしろってことだよね?」
ツブヤキックスで『こんにちは』とツブヤキした。
『この素朴なツブヤキ!!』『かざりんだ!』『かざりんこんにちは!』『もうすぐ夕方だよ!』『こんにちはできて偉い』
ワーッと通知が増えていく。
み、みんなこんなに反応が早いなんて……!
もしかして仕事中もSNSをずっと見てるのかな……?
いや、まさか……。
僕はそんな思いを振り切りながら、
『アバターを作ってもらいました。こちらがそのシルエットです。皆さんにお披露目します。開催日は』
いつだったっけ?
明日か、明後日か……。
文字を打ち込んでは消し、打ち込んでは消しで迷った後、社長のメールを確認しようと別のアプリを呼び出した。
その時、手が滑ってツブヤキボタンを押してしまった!
世界に向けて送信される、アバター発表は明日!のツブヤキ!
『うおおおおお!!』『楽しみ楽しみ!!』『ママ(絵師)は誰なんだろう?』『収益化から速かったなあ……』『よっぽど筆の早い絵師だったんだろうな』
し、しまったー!
明日ということで完全に広まってしまった。
もう、明日やるしかない……!
僕は覚悟を決めた。
その後すぐに社長が花咲里さんと戻ってきたので、「明日になっちゃいました」と報告する。
社長、頭を抱える!
「うわおー! 一度に色々なことが同時多発しすぎて、頭が爆発しちゃうよーっ!!」
いけない!
社長がパニックだ!
「ま、あたしらは実働部隊なんだから頑張ればいいだけよ! こっちは任せといて明。んで、社長はちゃんと明のための紹介クリップとか作っておいてよね?」
「ひいひい、社長遣いが荒い子たちだ……!」
編集室に戻っていく社長なのだった。
「ちょっとかわいそうかな?」
「いいのよ。今までが暇すぎたんだから。これからどんどん忙しくなるし、人を入れないといけなくなるんじゃない? あたしだってあんただって、社長じゃなく専属のマネージャーが付くかもよ?」
「ええーっ!? ぼ、僕にマネージャー!? 花咲里さんならわかるけど……」
「うがーっ! 癪だけどあんたの方がずーっと登録者数多いのよ! もっとマメに配信やれーっ! やるだけ伸びるんだから!」
「いやその、そう言われても何をやればいいのか分かんなくて……」
「……あんた、あれね。そういう集まりに誘ってくれる知り合いが必要よね。おっしゃ。あんたの担当の絵師って確かダンジョンはやらないけど、ゲーム関係は配信する人でしょ? 自前のアバター持ってるし。何かの遊びに誘ってもらいなさいよ」
「さ、誘ってもらう!? お、恐れ多いよー!」
「一歩踏み出せー! 直接メールで誘うのが怖いなら、チャラウェイさん伝いに連絡してもらいな! はやく! はやく!」
「ひーん、はあい」
僕はこわごわとチャラウェイさんに連絡した。
すると、すぐにOKのスタンプが返ってきたのだった。
どうしよう、了承されてしまった。
そしてそして、あっという間に翌日。
当然みたいに配信するダンジョンは取れてないので、事務所の中で行うことになった。
八畳くらいのスペースしかないので、テーブルと椅子は畳んで壁際に寄せてある。
「じゃ、じゃあ始めます!」
「よし、頑張ろう! 上鳴くん、落ち着いてね」
「明ー! ファイトー! あたしも未経験の世界だからねー!!」
「ひーん、なんで僕が初挑戦になるんですかあ」
僕の嘆きをよそに、Aフォンがふわりと飛び上がった。
これが、冒険配信者サポートシステム、Aフォン……!
自動的に配信者を追尾して、ベストのシーンを撮影、配信してくれる装置なのだ。
しかも、配信者が危機的状況になったら、Aフォン自体が自壊しつつ配信者をダンジョンの外に移動させてくれる。
それに、Aフォンがあることで今回みたいなアバターを被って活動ができるようになるわけで……。
「み、みなさーん! こんかざー!」
※モチョチョ『こんかざー!』回転『こんかざー!』御座候『こんかざー!』『こんかざー!』『こんかざー!』
「う、うわーっ! 横にコメントがアップで表示された!! こんなになってるんだ……」
※『Aフォン初体験の感想だ!』『新鮮!』『かわいい』『もしやAフォン使った配信者の配信を見たことがない……!?』『今の時代に貴重過ぎる反応だ!』
「す、すみませーん。初めての配信からずっといっぱいいっぱいで、他の方を拝見する余裕がなくって……。でもでも、素晴らしい絵師の方に担当していただいて、ついにアバターっていうのを作ってもらえました! で、では変身します! て、転身!」
護法転身で使い慣れている、転身という言葉をアバター発動の合図にさせてもらった。
Aフォンがピカッと光ると、僕に向けて緑色の風が送られてくる。
それが僕の体を包み込むと……。
風の妖精みたいな姿の僕に変わったのだった!
「か、変わりました! ……なんでAフォンが僕の足元から映してるの?」
※『もったいぶってくれるぜ……』(スパチャの音)モチョチョ『ギリシャ風サンダル! 足の爪がキレイ過ぎる』(スパチャの音)今川『足の指きれいは才能でおじゃる……!!』(スパチャの音)回転『そして映し出される膝。なんと分かっているカメラワークだ』(スパチャの音)御座候『天下を取れる膝でござるな……』
ワンピースからカメラがスーッと上がっていって僕の顔がアップ。
そうしたら、画面に『カワイイ!!』が大量に流れた。
真っ赤なスパチャっていうやつが、たくさん流れてくる!!
「うわーっ! な、なになに!? なんなのーっ!?」
社長が嬉しそうな顔をしている。
多分いいことなんだろう……!
「あ、あ、皆さん、ありがとうございます! えっと、こんなにかわいくアバターを作っていただけて、僕はとても幸せです!」
※『こんなに可愛くてボクっ娘とか、どうなっちまうんだ』『どうもこうもねえよ!』『アバターのグッズ早く出して! 役目でしょ!!』『しかしこの絵柄、どこかで見たことが……』『あれ……もしかして……』
「あ、はい! アバターをデザインしてくださったのは、イラストレーターの葉月きらら先生です! えっと、そう言う方を習わしでママって呼ぶんだそうで、は、葉月ママありがとうございます!」
※葉月『ぎゃわーん! こちらこそありがとうだよー!』(上限赤スパチャ)『御本人おったw』『ママ大喜び!』『葉月っちもよくみとる』『葉月きらら……? 妙だな……』
「あーっ、葉月先生、葉月ママありがとうございますありがとうございます! ぜひそのうちお礼させて下さい!」
ここでAフォンの後ろにいる花咲里さんが『コラボとか!!』と紙に書いて見せた。
「こ、コラボとか……?」
※葉月『やりましょー!』モチョチョ『うおおおおおおおおお』『早速コラボだああああああ』『葉月っちって個人勢イラストレーター兼配信者よね?』『なんでこんな盛り上がってんの!?』『知る人は知っている……』『若者はその認識でええ^^』
なんだなんだ……!?
何か今、凄い約束を勢いでしちゃったような……そんな気がしています!
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




