第20話 陰陽師がプロデュース!
「時代遅れどもを表舞台に引きずり出す! そういうのだーいすき!」
思わず感情を口走ってしまったら、恵美奈が凄く驚いた顔であたしを見ているのだ!
「どうしたんだ恵美奈」
「か……上鳴くん、愉悦勢でしたか……! もっと善属性の……ロウフルグッドみたいな人だと思っていましたが……よく考えたら最近の言動的にカオティックグッドでしたな」
「自己解決したか。いきなりスンッとなりやがって」
「まあまあ、二人とも。話は基本、俺がやるから」
ファイヤー社長が表に立ってくれる。
こういうところ、社長はちゃんと大人してるんだよね。
宇宙明さんは、略して宇宙さんと呼んで欲しいとのこと。
ならばそのお言葉に甘えて、宇宙さんと呼ぶことにしよう。
「なるほどなるほど。事前に伺ってはいたが、退魔師たちはいよいよ手段を選ばなくなってきたね。むしろ、彼らの中の若い世代は配信者と違ってチヤホヤされない分、内側に嫉妬を溜め込んでいるかも知れない。だからこその凶行と言えるだろうね」
「凄く困るんですよ! 明……じゃない、俺にも親がいるんで、人質にされたら自由に動けなくて困ります!」
「うおーっ、俺が話をするって言ったのに上鳴くんが話にグイグイ入ってくる!」
「上鳴くん、何気に最近は猪突猛進ですなあ」
宇宙さんがにっこり笑った。
目が笑ってない。
怖い。
「その点は大丈夫。こちら側についてくれた退魔師を、そのままにしてはおかないよ。既に事務所から人員を借りて保護に向かってるからね。彼ならば万全にやり遂げてくれるだろう」
「……彼? っていうかもう動いてるんですか?」
「もちろん。安倍陰陽事務所は、即断即決即実行がモットーだよ。請求書も既にお送りしてある」
「あ、ほんとだ……ひぃー! いいお値段!!」
社長がメールを見て仰け反った!
本当にいいお値段だったらしい。
「では、状況がちょうど流れてきているのでここで視聴しようじゃないか」
宇宙さんが手元で何かを触ると、部屋の明かりが消えて壁面にプロジェクターが展開した。
そしてそこに、映像が映し出される。
『ま、待てー!!』『待てそこの甲冑!』『ええい、妖物だ! 法術を使え!!』『はーっ!』『かーっ!』
男たちが何かを追いかけながら、指先から光みたいなのを出したり、インドっぽい短剣を投げつけたりしている。
これを、逃走する何者かが『がはははは!』と笑いながら弾き返している。
誰だろう……!?
『なんだなんだ! 配信をせずにダンジョンのモンスターとやり合うと言うからどれほどのものかと思ったら、その程度かへなちょこめ! それともお前らは三流の術師なのか!? 我輩にはそんなものは通用せんなあ! そおれ! 投げてきた剣を蹴り返してやろう!』
『ウワーッ!?』『法術が通用しない!』『あの鎧、一級超えの妖物だぞ!』『くそっ、上鳴の家の守りが薄い時を狙って!』『妻の方を鎧の中に取り込みやがった!』『抱えている夫の方を狙え!』
『なんたる卑怯さか! ええい、我輩は怒ったぞ! ここで壊滅させてくれよう! ツアーッ!!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!!』
……。
「なんか凄いスペクタクルなんだけど!?」
「うっぷ、私、酔いましたぞ」
一人称視点だからね。
我輩を名乗る何者かが、退魔師たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げしている。
まあ強い。
全く勝負にならない。
「いやあ、バングラッド氏はやはり強い……。これでお二人の奪還は成功だね。こちらで匿い、退魔師を国家側と融和するための協力者として扱わせてもらおうかな」
宇宙さんが実に楽しげなのだった。
この人、本当に仕事が早い……!!
彼はちらりとあたしを見ると、
「さて……君のご両親のはずだが……少しも君の感情は動いていない。これは君が冷血なのか、それとも全くの別人なのかどちらだろうね?」
「うっ! ……いや、よく考えたら配信で入れ替わりを全世界に公開してるんで……。中身が別人になってるんですよね」
「なるほど、最も納得できる回答をありがとう。では軽く状況の説明もしようか。退魔師は幾度もの、国からの協力要請を足蹴にしてきた。お陰で被害が拡大したことが何度あったことか。だが、国は退魔師が手を貸さない現状に対抗するため、冒険配信者のシステムを強化したのだよ。これによって国は、ダンジョンと戦う戦力の確保に成功した。反面、退魔師は必要なくなったわけだ」
肩を竦める宇宙さん。
「あー、それで……。明がやたらと配信やSNSに疎くて、世情を全然知らないのは……」
「退魔師たちによる若い世代への洗脳と言っていいだろうね。上の方々は、自分たちの意固地さが退魔師を時代遅れ……オワコン化させたことを認めたくないのだよ。だが……退魔師が頭を下げて協力してくれるならば、これはこれでとてもありがたい」
「なんでですか? 配信者がいれば退魔師がいなくても大丈夫なんでしょ? だって伝説の配信者きら星はづきは、東京湾コンサートに魔王マロングラーセを誘い込んで宇宙で退治したって。そんな凄いことができるのに……」
「すごい表現だ……。どこで習いました、それ?」
「どこって、小学校の社会で習うけど」
「彼女は歴史になってしまった! はっはっは、これは傑作だ! ああいや、話を戻そう。つまりだね。配信者に優れた方がいても、それはその人一代限り。彼、あるいは彼女が引退した後、また新しい配信者をトップに育てていかないといけない。これは社会全体が参加することだ。しかし……人気商売となった配信者は、システマチックに養成ができるものではないんのだよ……」
「あ、確かに! アイドルだって、伝説のセンターが引退した後、同じくらい人気のあるセンターを用意するってなってもなかなかできませんもんね。やっぱ、顔と実力と……何より運」
「そう、それだ。必ず不確実なものになる! だからこそ、安定戦力としての退魔師を国が抱え込んでおくことは重要なんだ。上鳴くん、君はそのためのきっかけとなりうる存在なんだよ。例え中のあなたが退魔師で無いとしても、世界はあなたを退魔師、上鳴明として認識している」
「なるほどー」
「上鳴くん、今ちょっと理解できなかったから生返事しましたな?」
「うるさいよ!」
「ああーっ、脇腹をつつくのはやめてくだされー!」
「すっかり話の主導権を上鳴くんに持っていかれてしまった」
社長が大人しくなってる。
「上鳴くん。君の活動を、我が事務所でプロデュースさせてもらいたい。もちろん、所属は今の事務所のまま。だが活動におけるタイミング、場所、スタンスをこちらで用意しよう。最も、古い退魔師社会にダメージを与えられる形で、そして君の人気に繋がる形でお手伝いさせてもらいたい」
「えっ、プロデュースを!? 人気になれるなら……なんでもやりますよ!!」
これは燃えてきた!
あたしの時代、来るんじゃない!?
面倒くさそうな背景がありそうだけど、そんなのはいつだってあったことだ。
おっしゃー!
やるぞおらー!!
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