第2話 ボクっ娘誕生!
「よーし、面白いからこのまま配信しちゃおう! 花咲里ちゃん! じゃない、上鳴くん、頼むよーっ!!」
「え、ええーっ!? ちょっと、ちょっとまって下さいファイヤー社長!? あのあの、僕、状況が全然分からなくて……」
僕が慌てたら、一瞬だけスマホに映っていたコメントが止まった。
※『僕……!?』『今僕って言った……?』『こ、これってまさか……』モチョチョ『ボクっ娘だーっ!! かざりちゃんがボクっ娘になったぞーっ!!』
な、なんだその反応~っ!?
「あっ、凄い凄い! 登録者が増えてる! 同接が増えてる! 誰かがツブヤキックスでタグ付けてツブヤキしてくれたのか! おっと危ない!!」
悪霊の攻撃を避けて回りながら、テンションの高い社長。
あの人動けるなあ。
「ちょっとー、あ、あたしのチャンネルなんだけど! うわ、男の声であたしって言うの無いわ。俺、俺で行くわ。あと、社長は元配信者なの。チャラウェイっていう有名な人の弟子だから、本人もやれるわけ。ただ、ビジュがねー」
ぶつぶつ言ったあと、花咲里さんは僕の肩をポンと叩いた。
「とりあえずこの場は任せた! 退魔師なんでしょ? 上手いことやっちゃってね!」
「そ、そんなー!? い、いやでも、確かに僕は退魔師だし、この状況をどうにかしなきゃ……」
握りしめているゴボウは法具にしてあるし、これでどうにか……。
そう思ったら、ゴボウから何の法力も感じない。
あれえ……!?
「ご、護法転身!」
何も起きない。
ゴボウはゴボウのままだ。
「護法転身! 護法転身! 護法転身!」
ゴボウがうんともすんとも言わない。
これってもしかして……。
「あたしがなんか不思議な技使えるわけないでしょ? ただの元地下アイドルなんだから」
「な、なんだってー!?」
僕は!
女の子になっただけじゃなくて!
法力まで失ってしまったー!!
「上鳴くーん! そろそろ限界! たすけてーっ!!」
社長の悲鳴が聞こえる。
僕の体は勝手に動いていた。
困っている人を放っておけない。
それは僕の性分なのだ!
「社長、逃げてーっ!! ええい、もう、このゴボウで……」
ゴボウを振り上げて……。
その瞬間、握りしめていたゴボウが輝く。
「!?」
『ウボアーッ! うらめし……』
「えっ、ええーいっ!!」
輝くゴボウを、振り下ろす!
それは悪霊に当たると、その真っ黒な体を大きく削ぎ落とした!
『ウグワーッ!?』
大きくのけぞる悪霊。
※『うおおおおおおおおおおおお』『頑張れボクっ娘ーっ!!』『かざりちゃん……じゃない、かみなるちゃん!!』『かみなるちゃん頑張れーッ!!』
「凄い! 凄いよ! 同接数が百人になってる!! こんなのチャンネル開設以来初めてだ!」
社長が凄いテンションだ。
どういうこと!?
でも、迷っている暇はない。
「悪霊! 可哀想だけど、成仏してーっ!!」
ゴボウを叩きつけて、悪霊にダメージを与えていく。
『ウグワーッ! ウグワーッ! せ、せめて道連れに……』
苦し紛れに振り回される悪霊の鉤爪。
だけど、これを僕は素早く回避する。
「か、花咲里さんの体、すごく動ける……!」
「そりゃそうよ。ダンスで鍛えてるもん」
得意げに、僕の声で答えてくれる花咲里さん。
そうなんだ……!
でも、このゴボウが発揮する異常な威力は一体……!?
あっ、とどめを刺せそう!
「は、初めて悪霊にとどめを刺します!! ええーい! これで! 成仏してくださーい!!」
『ウグワーッ!! 成仏~ッ! よく考えたら死んだら借金とか色々チャラじゃないかーっ!!』
叫びながら、悪霊は一瞬大きく膨れ上がると、弾けて消えてしまった。
悪霊って、風船が割れるような音とともに消滅するんだ……。
「か……勝てた……。初めて、悪霊を祓えた……。法力を無くして、よく知らない女の子の体になってるのに……」
もう呆然とするしかない。
一体どういうことなの……?
※『うおおおおおおおおおおおお』『うおおおおおおおおおお』『初コメです可愛いですね』『初悪霊祓いおめ!』『おめでとうございます!』『チャンネル登録しました』
「やったよ! やったよ上鳴くーん!! チャンネル登録者数が三桁になったよー!!」
※モチョチョ『社長は黙っててくれませんかねえ』大判『今ボクっ娘の声を聞いているんだよ!』回転『しかし、本当に男女の中身が入れ替わったんだろうか……。検証しないと』御座候『今後は今チャンネル、チェックでござるな』
「コ、コメントが社長に厳しい……」
「あーあ、社長が凹んじゃった。それにしても……」
画面外で、花咲里さんが腕組みしている。
僕を睨んでいる?
「この後どうする? 会議必要じゃない?」
本当にね。
配信は終わればいいけど、僕らはどうなるんだ?
配信は終わり……。
僕の体を使っている花咲里さんが、複雑そうな顔で彼女のスマホをいじっている。
「ツブヤキックスで小さく話題になってるかも。っていうか、あたしのチャンネルについて語っているツブヤキがあるだけでびっくりなんだけどさあ……。それが全て……この上鳴くんを称賛する声っていうのがさあ。とても複雑な気分なんですけどー!!」
「な、なんかごめん」
「そういうしおらしい姿をあたしの姿でやるのやめてー!? うわーっ、自分が知らなかった表情してるし! ああくそ、可愛い!」
思わず俺の背中をバーンと叩きそうになって、花咲里さんはピタッと手を止めたのだった。
「いけないいけない。今、あたしは男の体なんだった。セクハラじゃん……あたしの体じゃん……。うわ、男の体めんどくさっ」
思ってること、全部口にしちゃう人だ。
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