第15話 Aフォンを買いに行こう!
「上鳴くん、Aフォンを買いに行くぞ」
「Aフォン? 以前話してた、アドベンチャラーフォンっていうものですか? 確か、配信に使うとか……」
「そうだぞ。これから配信も楽になるし、何よりコメント読みがしやすくなる!」
「? そうなんですか……?」
ピンと来ない僕なのだった。
ファイヤー社長に連れられて、繁華街に向かう。
一応、顔を知られている可能性も考えてマスクをして……と。
「上鳴くん、かなり女の子の着こなしもこなれてきたね」
「花咲里さんにスパルタで叩き込まれてるので……。でも、メイクはさすがに自信無かったので、アバター使えて嬉しいです」
「そうだねえ……。あれは一朝一夕の技術じゃないからねえ」
大型電気店に到着。
「社長……。こんな普通の大型電気店に、配信にしか使わないような機器が売ってるんですか?」
「売ってるよ。公式なのは下手な車より高いけど。今回、うちはチャラウェイさんから融資を受けたんで、公式Aフォンを購入するよ!」
「おお……おおお……! 車買うようなもんなんですよね?」
「そうだよー」
社長もこころなしか緊張しているように見える。
売り場は、スマートフォンが並ぶ一階のさらに奥にあった。
鍵のかかった展示台の中に、幾つも飾られていて……。
値段を見て、僕は唖然とした。
「にっ、にひゃくごじゅうななまん!!」
「高いでしょ……! でも、これがあれば配信者の緊急脱出装置とかついているし、ドローン撮影装置としても高性能だからね。あとは使用者に応じて進化していくんだ」
「進化……? 電化製品ですよね?」
「そうなんだよね。だけど中には、陰陽術的な技法が施されてる。だから使用者に合わせて性能も変わっていくんだよ」
「な、なるほど……」
安倍晴明から始まった陰陽師は、芦屋道満から始まった退魔師と仲が悪い。
陰陽師は体制側について、退魔師は体制と反目している。
結果は一目瞭然だ。
退魔師はその勢力を衰えさせ、秘密主義も相まって世間からは忘れられた存在になっている。
でも、そんな退魔師の中にしか僕の居場所はないと思ってたんだよなあ……。
「上鳴くんが遠い目してる。おーい、おーい。上鳴くんが選ぶんだぞ」
「えっ、僕!? 僕が、このすっごく高いAフォンから好きなのを選ぶの……!? ひえー」
何が違うんだろうと思ったけど、細かい性能の違いで値段が違う。
あとは色が違う……。
えええ……。
何を基準に選べばいいの?
「お金はあるからね、借りたお金だけど! 見た目で選べばいいんじゃない?」
「そ、そうですかぁ……? それじゃあ……。アバターのイメージカラーと同じ緑の……これで」
値段は見なかった。
社長がぼそっと、「368万円」とか呟いてたけど聞こえない!
聞こえないーっ!!
その後、お店の偉い人がやって来て、色々説明と契約をしてもらった。
配信媒体とチャンネルを報告し、国に登録される。
凄いことになってしまった。
「すぐにお使いになりますか?」
偉い人が僕に聞いてきた。
僕なんですか!?
「上鳴くんが使う人になるわけだからね。任せるよー」
「じゃ、じゃ、じゃあ、すぐ使います……!」
そう答えたら、緑のAフォンが豪華なトレイに載って差し出されてきた。
「あわわわわ」
震える手でAフォンを持ち上げる。
『認証します。マスターの名前を教えてください』
「か……かざりです」
『マスター・かざり。顔、声紋を登録しました。これからよろしくお願いします』
これでAフォンは僕のものになったらしい……。
「会社のものじゃないんですか!?」
買い物のあと、近くの喫茶店で休憩することにした僕と社長。
社長はバケツみたいなサイズのコーラを飲みながら頷いた。
「そりゃあね。チャラウェイさんは君がいたから融資してくれたんだ。つまり、上鳴くんにはそれだけの価値があるってことなんだよ。期待してるぞー」
「ひーん」
あまりにも責任重大過ぎる!
退魔師としての力を失い、体も失ったと思ったら。
次から次に、ファンとか人からの期待とか、投資とか高額なAフォンとかが転がり込んでくる……!!
ぼ、僕はこのままだとどうなってしまうんだ~っ!!
「上鳴くん! 色々煮詰まった時は甘いものがいいぞ!」
「は、はいぃ。じゃあ特盛りクリームラテを注文してきます……!」
甘いものが、疲れた心と体に染み込む……!
「花咲里ちゃんはアイドルとしての嗜みだって言って、食生活がすごくストイックだったからねえ。今の上鳴くんみたいに、甘いものもどんどん食べて動いて消費していくのがいいと思うんだよね」
「そうなんですか……? 花咲里さん、僕の料理をいつも凄い勢いで食べてるんですけど」
「そりゃあ、上鳴くんの体になったからでしょ。不思議なもんだよね。生活の全てを捧げて必死だった彼女は結果を得られず、巻き込まれて戸惑いっぱなしの君の手に全てが集まってくる。この世界はね、努力して当然。でも、何よりも大事なのは才能なんだ。時代が背中を押してくれる。これもまた才能。君はそれを持ってる」
「えぇ……」
全く実感が湧かない。
だけど、それを否定してしまうことはこれまでの花咲里さんを否定することだろうからなあ。
何も言わないでおこう……。
僕はもりもりと特盛りクリームラテを食べるのだった。
『マスター、この一食で600kcalを摂取しました。エネルギー充填できて偉いですね』
「なに? このAフォン、僕を褒めてくれるプログラムが入ってるの……!?」
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