第14話 アバター作成!?
「アバターって言いますと……!?」
「つまりね、俺もだけど冒険配信者はアバターを被ってダンジョン配信するわけよ」
チャラウェイさんがご自分のスマホを見せてくれる。
そこには、モヒカンで棘付き肩パットのガラの悪い巨漢の写真があった。
「うわー、怖そうな人」
「これ、俺のアバター」
「ええーっ!!」
僕は飛び上がりそうになった。
驚いた……。
これを見たチャラウェイさんが、目を丸くしている。
そして社長に振り返った。
「お前、これ……! 凄い逸材じゃねえか! 本物だ! 今日日、純なキャラを演じようって娘は幾らでもいるんだよ。だけどこれは……本物だぜ……。俺、別の意味でも本物はあと一人しか知らねえ……。おいおいおい……」
スマホをいじり始めるチャラウェイさん。
SNSで誰かに連絡をしていらっしゃる……?
ファイヤー社長はうへへ、と笑いながら「彼がうちに来てくれて、一気に流れが変わったんですよねえ。なんていうか彼、勝利の女神なんですよ」
「女神!? 僕は男なのでぇ」
「ま、ま、概念的な意味での女神ね。本当、助かってるよ上鳴くーん!」
「ううーっ」
手を合わせて感謝されると、何も言えないなあ。
「話は戻るぜ。まず、冒険配信者たるもの、特徴的なメイクかアバターを被った方がいい。なぜか?」
「ええと……。配信で目立つため……?」
「それもある。だけどよ、冒険配信者ってのは多くのリスナーによって信仰される、その瞬間だけ生まれる小さな神様みたいなもんだ。同接は信仰のエネルギーになる。特徴的な姿は、この同接パワーを集めやすくなるんだ。さらに、大きなダメージを受けてもアバターが受け止めてくれる。命を助けるための安全装置になってるんだな」
「そ……そうだったんですね……!! あれ? じゃあどうして花咲里さんは生身で……」
「お金が無かったので……」
社長が大変申し訳なさそうだ。
「俺が現役配信者だった頃も零細だったんで、生身だったねえ……」
「ファイヤーはオーガだからな。それだけで目立つし、体の頑丈さも人間と違うだろ。だけど人間、特に女子は違うわけよ。下手をすると一撃浴びたらそのまま死ぬ。ダンジョンはそういう世界なわけだ」
「分かります……。僕も退魔師だった時は、一瞬も気を抜けませんでした。その、戦う力が弱かったので、生き残るだけで必死で……。そしたら花咲里さんの体に入っちゃって、全ての法力と法術と男としての腕力とかを失ったので……!」
今でもお風呂に入る度、鏡の前に可愛い女の子がいるのでものすごく驚く。
慣れないなあ……。
これを聞いて、チャラウェイさんがまたファイヤー社長に振り返った。
「ダンジョンの怖さを知ってる! これ、お前、凄い逸材だぞ!! お前、俺を呼んだの正解だからな? 収益化したんだから、近く返せるだろ。とりあえずこれだけ融資すっから、これでグッズ作ったり色々やれ。あと、アバター作ってくれる先に俺が依頼かけてるから……。おっ!」
チャラウェイさんのスマホが光った。
さっき誰かに連絡したのに、返答が来たらしい。
彼が笑いながら、
「上鳴くん、楽しみにしてていいぜ。俺が知る限り、最強の絵師がアバター引き受けてくれるってよ。今のやり取り、あの人に流したからな」
「最強の絵師……? 最強……!?」
「ああ、最強の絵師だな……。今は一線を退いてるが、個人勢として趣味の範囲で楽しく活動してるはずだ」
誰のことを言ってるんだろう。
結局チャラウェイさんは、僕と色々喋ってから満足して帰っていった。
SNSで繋がったので、彼からも直接僕に連絡をしてくるみたいだ。
その夜、僕の料理を食べて満腹になり、転がっている花咲里さんを前に……。
ベッドに腰掛けてスマホを見ている僕は、通知に気付いた。
「あれ……。ラフが上がったって」
「あん? なになに? ラフって何のラフなの?」
「えっとね、さっきも話した通り、チャラウェイさんが事務所に来てね」
「あー、社長がおどおどしてたでしょ! あんなでかい体してて、師匠に頭上がらないんだよねあの人。まあ、チャラウェイさん自身は本当に凄い人なんだけど。それで、融資以外になんだっけ」
「僕のアバターを作ってくれるって」
「ほんと!?」
花咲里さんが飛び起きた。
「いや、あの人絵師じゃないでしょ。てか、色々なコネを持った人だから、凄い絵師に繋いでくれたってことね。そっか、アバターか! ……あたしはもらえるところまで行けなかったなあ……」
遠い目をする花咲里さん。
「ごめんね、僕と入れ替わっちゃったばかりに……。でも、だからってサンダーマスクはやめて欲しいな」
「いいじゃーん! かっこいいでしょ!? まだチャンネル登録者二桁だけど! ってか、同接ゼロで全然戦えるじゃんこの体。どうなってんの? ま、それは今はいっか」
ベッドの隣に腰掛けて、スマホを覗いてくる。
「みーせて」
「近い近い~」
「いいじゃん、どうせあたしの体なんだから」
「ぼ、僕の体が花咲里さんの体に密着するのはよくないよー」
「いいの!」
「ひーん」
結局このことは有耶無耶にされ、送られてきたラフを見ることになった。
なになに?
かざりんという響きから、風の妖精をイメージ……。
「ラーテルと呼ばれていたあたしが、風の……妖精……!? 妖精って言ってもゴブリンみたいなのじゃないの?」
「ちゃんと可愛いっぽい。水色のボブカットで、後ろに纏められた長い髪が一房だけ伸びてて……。ゆったりした妖精みたいなワンピースを着てる……。可愛い」
「ラフなのに色が乗ってる……。今日の今日依頼をかけたんでしょ? 筆が早すぎない……?」
「チャラウェイさんいわく、業界最強の絵師だって」
「最強って、戦闘力が最強ってこと……!? 意味がわからない……。あ、なんか横に書いてあるし」
『ギリシャ神話風のサンダルとか装着しちゃいました。フェティッシュな方が受けそうです。アクセサリーで神秘的な感じを出して、ワンピースそのものはシンプルにして清楚さを強調します。アーカイブ見ました。初々しくて可愛い、チュッチュしたい』
「うーわー」
すごい速度でアバターのラフを上げてきただけじゃなく、僕のアーカイブまでチェックして感想を書き込んでいらっしゃる!
絵師さんの名前は……葉月きららさん……?
す、凄い人だ……。
お読みいただきありがとうございます。
面白い、先が気になる、など感じられましたら、下の星を増やして応援などしていただけると大変励みになります。




