第10話 デビュー配信は成功……なのか?
職員室にて、オカ研部室の悪霊祓いが終わったことを報告する。
なぜか、担当教師は目を白黒させていた。
「か、上鳴くん、君は配信者だったのか……!?」
そう聞かれたので、あたしは胸を張ってこう答えた。
「はい! 未来のトップ配信者です!!」
「おおー!」
横で恵美奈が、目をキラキラさせて拍手している。
そういう仕草してると可愛いな、こいつ。
こうしてオカ研は即日再始動することになった。
あたしは事務所に行くから帰るって言ったんだけど……。
「まあまあ、上鳴くん。お茶とお菓子を出しますから……」
「お菓子……!? な、何が出るのよ」
オカルトだけに、仏壇やお墓にお供えするような和菓子やゼリーだったりしない?
「チョコサンドです」
「行く」
食い気味に反応してしまった。
アイドルとして日々節制していたあたしは、甘味に飢えていたのだ!
だけど!
だけどよ!?
「男子の体なら、どれだけ食べてもいいってことじゃない? これは明確にアドバンテージだわ……。今だけ、男の体になって良かった!」
「上鳴くんはなんかそう言う設定の配信者なんですかな?」
「い、いや独り言だぜ……」
「それもいつもとキャラが違いますなあ」
教師から受け取った鍵で、恵美奈が部室の扉を開く。
少し埃っぽくて、薄暗い。
「なんか……気配がする。だけど、あの悪霊? みたいなのとは違う感じ」
「代々のオカ研部員の残留思念かも知れませんな。換気しますぞー」
窓を開けると、爽やかな春の風が吹き込んでくる。
桜はすっかり散り、木々は緑の葉に覆われつつある。
部室の広さは教室の半分ほど。
六つの机が中心に集められていて、その上にはオカルト関係の本が積み上がっていた。
部屋の隅にも机があって、その上には本棚がある。
蔵書は全部オカルト関係。
「では……持ってきていた紅茶とチョコサンドですぞ。今回のお礼にどうぞ……」
「よく考えたら学校にお菓子とか、ご禁制の品じゃん……。おお、この背徳感……」
チョコサンドは、チョコでコーティングされた分厚いソフトクッキーで、甘いクリームをサンドした上からさらにチョコでコーティングした悪魔的なお菓子。
地下アイドルになってから、あたしは一度も食べられていない。
なぜならカロリーモンスターだから。
それを口にする……!
「ああ~、し、幸せの味がする……!! 生きてて良かった……! 明日からも頑張れる……!!」
美味しすぎる!
そして紅茶を飲んでリセットし、またチョコサンドをかじる。
鬼リピ確定。
毎日食べることにする。
男の体だし、これくらい大丈夫でしょ!!
「上鳴くん、これからも何かとよろしくお願いしますぞ」
氏からくんになったな。
これは距離が縮まったのか……?
机に肘をついた恵美奈が、組み合わせた手の上に顎を乗せてこちらを見つめてくる。
なんだその乙女っぽい仕草は。
「あなたが退魔師だったなんて知らなかったですからな。これから、頼りにしていきたいなと思っていますぞ」
「そう? ま、仕事に差し支えない範囲ならいいけど?」
またお菓子をくれるならちょっとくらいはオカ研を手伝ってあげてもいい。
「本当ですかな!? いやあ、我らオカ研はその活動上、危険とされるオカルトスポットにも挑みますからな。そうするとそれなりの確率でダンジョン化しております。我らの身を守るためには、途中で撤退することも多いわけです」
「ははーん、それであた……俺をボディガードにしようってわけか? そりゃちょっと面倒……」
ここまで考えて、あたしは閃いた!
「いいぜ。ただし、俺の活躍する番が来たら恵美奈が撮影してくれ。そいつを動画でアップして、俺をバズらせる」
「なーるほど! これは……お互いに利のある取引ですな! では遠慮なくお誘いしますぞー」
「おう、誘え誘え!」
あたしは久々の高カロリーお菓子で、血糖値が爆上がりしてテンションも爆上がり。
チョコサンドを四つ立て続けに平らげたあと、包装紙の裏のカロリー表記を見て嗤ってしまった。
一個180kcal!!
四個で720kcalじゃん!!
男の体、バンザイ!!
食った分動けばいいし、明の体はあたしよりもデカいから燃費も悪いでしょ。
なんとかなるなる。
「じゃあ、改めて。よろしくお願いしますぞ」
「ああ、よろしく」
恵美奈と握手した。
彼女がじっと俺を見つめてくる。
「お? どうした?」
「いえいえ。やっぱり退魔師は違うなと思いましてな。いや、上鳴くんが特別に強固なのか」
「何言ってんだか。ていうか、俺に惚れるなよ?」
これは一度、男になったら言ってみたかったやつ。
言われるとウザいけど、言う分には気持ちいいな!
「ハハハ、それは無い……とは言いきれませんなあ、今の上鳴くんだと」
おお?
脈アリか?
良かったねえ明!
もとに戻ったら彼女ができるかもよ?
あたしは上機嫌で、さっき撮影した動画を社長へ転送するのだった。
いい感じで編集しておいてよね。
PickPockであたしが華麗にデビューするんだから。
「ねえ恵美奈、もう一個いっていい?」
「もちろん。ですが、太りますぞー」
「ハハハ、男がそんなこと気にしない」
チョコサンドを食べながら、あれ? 退魔師の能力とかって、大々的に見せて良かったんだっけ? と思う。
だけど、糖分の甘い誘惑の前に、そんな危惧はどこかに吹き飛んでいくのだった。
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