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負けヒロインのはずが、真実の愛(仮)に囚われました。~王子よ、私の老後計画を邪魔するな!~  作者: 阪 美黎


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10/12

エピソード10「バタフライエフェクト」

 そして、離宮での会合の当日。

 午後の約束の時間が刻々と迫る中、ようやく依頼していたヒロイン探索の返答が戻ってきた。


「エマ!どうだったの?!ヒロインちゃんは?!」

 私は期待と不安がないまぜになった声で、エマに詰め寄った。


 エマは息を整え、私に信じがたい情報を伝えた。


「お嬢様……お探しの、エリス様のことなのですが……」

 彼女は目を丸くして、思わずといった様子で私に告げたのだ。


 なんとヒロインは、王宮に到着するどころか、既に別の男性と結婚していたという。しかも、すでに懐妊までしているという衝撃的な情報まで付け加えた。


「え……? 結婚……? 懐妊……?」

 私の頭の中は、一瞬にして真っ白になった。物語の根幹を揺るがすような情報に、思考が停止する。


 相手は地元の若い騎士だそう。身分は高くない、ごく普通の、王宮の物語とは無関係なモブ騎士。


 ふたりの出会いはこうだ。エリスが当初の流れ通り、王宮へ行儀見習いへ出発したその日、折りからの悪天候で山道が崩れ、立ち往生してしまう。彼女の乗っていた馬車は足止めを食らい、村に滞在することになる。そこへ、たまたま近隣の警備に出ていた騎士たちが救助へやってきた。その中に、ヒロインと恋に落ちたモブ騎士がいたということだ。行儀見習いは白紙に戻され、彼女は地元で、そのモブ騎士と結婚し、幸せに暮らしているという……。


 エマの説明を聞き終えて、私は信じられない思いで叫んだ。


「えーーーーー?!そんなのアリなのーーー?!」


 モブ騎士?!何処の馬の骨とも知れないモブ騎士と、あの王子が『真実の愛』を捧げるはずだったヒロインが恋に落ちちゃったの?! 王子の『真実の愛』の相手が、私たちの預かり知らぬところで、別の『真実の愛』を見つけちゃったってこと……?!


 頭の中がパニックになる。理解できない。だって、この物語はアルフレッド王子とヒロインの『真実の愛』がメインストーリーだったはずだ。そのヒロインが、物語の舞台に立つ前に、全く別の人生を歩み始めてしまった?


 ど、どうしよう。

 登場前から彼女の物語は完結してしまった。王子との出会いは、永遠に起こらない。


 も、もしかして……私が物語に介入してしまったことで、バタフライエフェクトでも起こったの? 刺客から王子を守ったことが問題に?

 私の行動が、原作の物語の大きな流れを変えてしまった……?


 これどうすんの?!ねぇ、どうすんの?!この物語どうすんの?!


 マブダチ作戦を成功させて、円満に婚約破棄されるためには、王子がヒロインと出会って『真実の愛』に目覚めるのが不可欠だったのに!その肝心要のヒロインが、別の男と結婚して懐妊して、物語から退場してるやんけ!


 私の計画、根底から崩壊やん!


 せっかく王子とのマブダチエンドが完成しそうだったのに、先が読めなくなってきちゃったじゃん!


 しかも、今日これから会う王子からの手紙の内容からして、深刻そうだし……。ヒロインが登場しない今、王子が私に何を話すつもりなのか。まさか……本当に、『真実の愛』なんて言い出さないわよね?


(あかん……これは一番アカンやつや……)


 どうすればいいのか全く分からない。頭の中は情報過多でショート寸前だ。でも、時間は待ってくれない。アルフレッド王子との約束の時間は迫っている。


「お嬢様、お時間です。馬車の準備ができております」

 エマの声にハッと顔を上げる。


「あ、ああ……うん。ありがとう、エマ」


 混乱を押し殺し、私は立ち上がった。どうすればいいかは、離宮へ行って、王子の話を聞いてから考えよう。もはや私の計画通りに進む見込みはほぼゼロになった。ならば、臨機応変に対応するしかない。


「とりあえず、支度。支度をしましょう。うん」

 現実逃避するように、私はエマの手を借りて、お茶会へ向かうための身支度を開始した。ドレスを着て、髪を整えて。いつも通りの完璧な公爵令嬢を演じるんだ。内心の動揺を悟られないように。


 鏡に映る自分の顔は、いつもの平静を保っているように見える。だが、瞳の奥には、未知の物語への不安と、それでも抗ってやるという僅かな反骨心が揺れているのを感じた。


 離宮へ向かう馬車に揺られながら、私は考える。

 ヒロインが登場しない世界線で、王子との関係はどうなる?

 私の望む自由な老後というエンディングは、まだ実現可能なのか?

 そして、王子は私に、一体何を話すつもりなのか?


 物語は、私が思っていたよりもずっと、私の手によって大きく改変されてしまったようだ。


 これは、破滅への新たなルートか。

 それとも、原作を超える、私だけの物語の始まりか。


 私は、馬車の窓から流れる景色を見つめながら、深く息を吸い込んだ。


 いざ、離宮へ。私の予測不能な物語の続きが、今、始まろうとしていた。


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