隠された真実
――そして、ひとつの秘話がある。
鯨岡が即位前に「バカ王」として知られていた時代、突如として増税を断行したことがあった。
理由は、誰にも理解されなかった。
だが、真実はこうだ。
「情報戦力が必要だ」
それが彼の結論だった。東洋の島国・日ノ本には、「忍者」と呼ばれる伝説の隠密集団が存在するという報告を彼は読んでいた。
その実在を信じ、鯨岡は国家予算の一部を極秘裏に回し、日ノ本より密かに人材を呼び寄せた。
「忠義ではなく、契約で動く者たちを」
そう考え、彼は「近衛忍者集団」を結成する。任務は明確だった。王の警護、暗殺未遂の察知、そして政敵の動向の監視。
彼らには定期的な報酬と引き換えに、忠誠心ではなく実利による雇用契約が結ばれていた。
「忠義は裏切るが、契約は守られる」――鯨岡の信条の一つだった。
育成にも費用がかかった。だが、それは未来への投資であると彼は信じていた。
そして現に、数々の危機を未然に防いだのは、彼ら無名の忍者たちであった。
王政を守る「影の盾」――それこそが、近衛忍者集団の真の役割だったのだ。
第八章、王はただの影ではなく、未来を照らす光となる。
それが、ミハアントニス・テ・ハムショウ王政再建の核心であった。