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終わる世界と幻の世界  作者:
1章

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第二話「盗賊」

 アンナを振り切り、路地裏を抜けて人通りの多い場所へと出た。港町であるこの町は商人や旅人など外から来る者も多く、とても賑わっている。多くの露店が並び、肉の焼ける匂いや果実の甘酸っぱい香りが鼻をくすぐった。

「しかし、メロ」

 リオは上着のポケットに隠れているメロに話しかける。

 先ほどの引っ張り合いで鞄が壊れて使い物にならなくなったので、しょうがなくメロにはポケットに隠れてもらうことにしたのだ。狭いだろうと思ったが、思いのほか上着のポケットが気に入ったらしく、メロは心地よさそうにしている。

「初っ端から騎士に目を付けられるなんて、俺らの旅、どうなっちまうかね?」

「ばうっ」

 やれやれといった風にメロは首を振った。

「困ったもんだ……」

 しかし、これからどうしたものだろうかとリオは思う。ルイスを見つけ出すため旅に出たが、あてがない。

「まっ、まずは聞き込みかな……」

 大通りを歩き、とりあえず近くを歩いていた青年にリオは話しかける。

「ちょっといいか? 人を探しているんだが……」

「急いでいるんだ」

 そう言うと、青年は去っていく。

「うーん……こりゃ大変そうだな」

 聞き込みで見つけるのはなかなか骨が折れそうだ。

「うん?」

 前方のほうから叫び声が聞こえた。それからなにやら辺り騒がしくなる。

「いたぞ!」

 裏通りから出てきた騎士が、そう叫んだ。

「例の盗賊か?」

「あっちにいたぞー!」

 通行人が路地へと続く道を指さしている。どうやらそちらに逃げ込んだようだ。

「盗賊のせいで、アンナに目を付けられっちまったわけだし、そいつがどんな奴か見に行くのも悪くないか。なあ、メロ?」

「ばうっ!」

「人様の物盗んでんだ。ほっとくわけにもいかねえしな」

 通行人が指さした路地へと入る。入り組んだ道を直感で突き進んだ。奥のほうで声がする。どうやらほかにも追っている者がいるようだ。

 路地の曲がり角へと差し掛かり、曲がろうとしたその時、

「ぐはっ!」

 向こうからやってきた者とぶつかってしまった。しかし、ぶつかった相手が小柄だったため、リオは咄嗟に相手を抱きとめていた。

「おっと……」

「す、すみません……!」

 そう言って頭を下げたのは眼鏡をかけた小柄な男の子。まだ幼さの残る顔をした茶髪の少年だった。気弱そうな瞳をしていて、おどおどとこちらに頭を下げている。

「お前も盗賊を追っていたのか?」

「え、ええ……」

「どっちに行った?」

「み、見失ってしまいました……もう帰ろうかなと」

「そうか……」

 もう少し探してみようかと思ったが、そこまでして盗賊を追う理由もないかと、リオは思った。

「ま、しょうがねえな。見失っちまったんじゃ。お前もさっきの騒ぎを聞きつけて、追ってたのか?」

「え、ええ……僕、盗賊に入れてもらいたくて」

「は?」

 驚いて聞き返してしまう。

 盗賊に入りたい? 捕まえるために追っていたのではなかったのだろうか。リオは疑問に思い、少年に問いかける。

「おいおい、なに言ってるんだよ? 悪党になろうってのか?」

「ぼ、僕……学校で勉強しかできない弱虫って呼ばれてて……盗賊になったらそんなこと言われないかなって」

「盗賊になったら、学校になんか行けないだろう。騎士団に捕まる」

「そ、それもそうですけど……」

「分かってんならやめといたほうがいいと思うぞ……?」

「でも、もう弱虫って呼ばれるの嫌なんです……盗賊はみんなに恐れられてるし、僕も入れば……!」

「それで盗賊か……極端だな」

 それほど追い詰められているということなのだろうか。

「お前、名前は?」

「ライアンです……」

「そうか、俺はリオだ。ライアン、盗賊になったら後悔するかもしれないぞ? なにか違うことで、周りに認められるようにしてみたらどうだ……?」

「分かってます……盗賊なんかなってもしょうがないって。でも、どうしたらいいかわからなくて……」

「んじゃ、俺と盗賊捕まえてみるってのはどうだ?」

「え?」

「盗賊になるより、盗賊捕まえたほうが一目置かれるだろう」

「た、確かに……!」

 目をきらきらさせ、それだと言わんばかりにライアンは頷いた。

「よし、決まりだ! 一緒に盗賊探そうぜ!」


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