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終わる世界と幻の世界  作者:
1章

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第一話

 絶体絶命だった。

「ちょ、ちょっとっ!? 俺、君になにかしましたかねっ? その剣、おろしてくださいってっ!」

 異国から来た青年、リオはそう叫ぶ。

 目の前に剣の切っ先が突きつけられ、倒れたリオは身動きが取れずにいた。こちらに剣を突きつけている少女は黙ったまま、ただこちらを見下ろしている。

 なぜこのような事態に陥っているのかリオ自身もよくわかっていない。

 たまたま通りかかった路地裏で鉢合わせた少女に突然剣を向けられたのだ。

「俺、君のことなんて知らないよっ!?」

 目の前の少女を見やる。綺麗に整った顔立ちに、紫の瞳。腰に届くほどの綺麗な金髪が目に眩しい。少女からは高貴な存在感が放たれており、薄暗い路地裏であるここでさえ華やかな場所であるかのように思えてしまうほどの異質な空気を纏っている。軽甲冑を身にまとっていて、おそらく騎士であろうと思われた。

「私はエルドガレリア帝国の騎士アンナよ」

 アンナと名乗った少女は、こちらに剣を突きつけたまま言った。

「えっと……俺はリオって言うけど」

「さっき、ここら辺で逃走中の盗賊の目撃情報があったの」

「えっと……というと?」

「あなたのように黒い服を着た人物だという情報よ」

 リオは顔を自分の胴体へ向ける。確かに自分は黒を基調とした服を着ていた。

(俺、もしかしてだけど、疑われている?)

 リオの背に冷や汗が伝う。

「まさか……俺がその盗賊だとかいうんじゃないだろうな?」

「そうよ。早いところ捕まってくれる? 私、早く仕事を終わらせたいの。盗賊とのおいかっけこなんてしたくないわけ。というか騎士なんてやめてもっと違うことしたいの!」

「いや、それは知らないけど! とにかく俺は盗賊じゃないって!」

「じゃあ、あなたの荷物を見せなさい……!」

 アンナはこちらに近寄ってくる。そして俺が抱えていた小さな鞄を掴まれた。

「だ、だめだっ!」

「なぜ……? やっぱり盗品が隠してあるからでしょう……!?」

「ち、違うっ!」

 慌ててリオは否定する。

(い、今このかばんの中身を見られるのはまずい……)

 盗品はないが、見られてはまずいものが入っていた。

「いいから渡しなさいっ!」

 鞄が力一杯引っ張られる。

「だから盗品なんて入ってないってばっ!」

 リオの主張もむなしく、鞄が一気に引っ張られた。しっかりと掴んでいたため、勢いよく布製の鞄がびりびりと破ける。

「あ…………」

 そして中から出てきたのは、

「ばうっ!」

 ふかふかな毛並みをした手のひらよりちょっと大きな魔獣。まん丸の体躯に薄橙色の毛並みを持ち、ちょこんとしたかわいらしい目が、きょろきょろとあたりを見回している。

「ま、魔獣っ……?」

 アンナは驚いたように声を上げ、剣をそちらに突きつけた。

「や、やめてくれ……! こいつはメロっ! 俺の友達っ!」

「な、なに言ってるのよっ! ま、魔獣よ……?」

 メロに向って警戒心をあらわにするアンナ。今にも襲い掛かってきそうだ。

「メロは危険じゃないっ! 人を襲ったりしないし、俺の言うことを聞いてくれる! それにかわいいだろ?」

 アンナは押し黙る。そして、メロを見つめた。

「ばうっ!」

 メロは小さな手をちょこんと振って見せた。

「……………」

 一瞬、アンナの頬が緩んだ。

「た、確かにかわいいわね……」

「だ、だろう……?」

 ふう、よかった。わかってくれたようだ。

 リオがそう胸をなでおろしたのもつかの間、

「でも、魔獣を町に持ち込むことは盗みより重罪よ!」

 またこちらに剣を突き付けてくる。

「はへ?」

「よって、あんたを捕まえるわ!」

「ちょ、ちょっとおっ!?」

 アンナにあっという間に取り押さえられ、取り出した拘束用の縄で両手を後ろで縛り付けられる。

「連行よ!」

「なっ、なんでこんなことになってんだよっ! やっと国を出てここから大陸を旅しようって時にっ!」

「あなた、この国のものではないの?」

「そうだよっ!」

 絶海の孤島にある少国でリオは生まれた。今いるこの町はエルドガレリア帝国にある港町、サーフィリア。リオは今日の朝、長い船旅を終えてこの国へ来たばかりだ。

「これから俺は旅にでるんだ! だから放せって……!」

「どうせ、なんの目的もないでしょう?」

「あるよっ! ちゃんとした目的がな!」

「旅をする者はだいたい自分探しとかいうものよ」

「違う」

 リオは声を低くして言った。

「俺にはちゃんと目的がある。母国の秘宝を奪って国を出た友達を探しにいくためだ」

 胡乱気な目で見つめられるが、構わず続ける。

「ここエルドガレリア帝国にいるかもしれないんだよっ! ここから聞き込みして、探し出すんだ」

 メロがこちらに駆け寄ってくる。

 そしてリオの足をよじ登り、手首を縛り付けていた縄をがりがりと噛み始めた。やがて、少し腕に力を込めると縄がちぎれる。

「ナイスだ、メロ!」

「なっ……」

「迂闊だったな!」

 リオはすぐさまメロを肩に乗せ、アンナから距離を取る。

「俺はあいつ……ルイスを探しにいくんだ。こんなとこで捕まっててられるか」

 旅を始めた理由は母国の秘宝を奪い国を出たルイスを探し出すため。なぜ彼が国の秘宝を盗み、姿をくらましたのかその理由が知りたかった。

 リオは走り出す。アンナが追いかけてくるが、メロと共に風を切って路地裏を進んだ。


「さあ、旅の始まりだ」


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