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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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93 一時の気の迷いってやつで

 夜。

 真っ暗にした部屋の中で、亮太は一人ベッドの上、ぼんやりと天井を眺めた。


 流石にもう泣いてはいないものの、脱力してしまい、力は出ない。


 なんで俺……、あんな泣いて……。


 言われると思っていた言葉が言われなかったというだけでは、説明がつかない。

 けど、混乱して。


 だってあんな顔で見るから。


『好き』って言われるのかと思うじゃん。


 そこで、もう何度目だかわからない礼央の顔を思い出す。

 何度も反芻してしまう。


 眼鏡の奥の……真剣な瞳…………。


 なのにあんな、『憧れ』だなんて。

 俺みたいになりたい、だなんて。


「勘違いさせるようなことすんなよなぁ」


 パタリと寝返りを打つ。

 腕がベッドの横に垂れた。


 ……ここにいた事もあったのに。

 ここで。

 一緒に寝て……。


 思い出す。

 何度も。


 笑っている顔とか。

 不機嫌そうな顔とか。

 落ち込んだ顔とか。

 ……照れた顔とか。


 ああ……。

 そうか。


 何度も何度も、礼央の事を思い出し、カチカチと時計の音が鳴る中で深夜0時を迎えた。


 いつの間にか、俺の方が、そうだったらいいって思ってたんだ。


 れおくんが、俺の事好きだったらいいって。


「俺が……、礼央くんに、こっちを見てて欲しかったんだ」


 なんだ。


 そっか。


 分かってしまうと、答えは簡単だった。


 また、ボロボロと涙が溢れる。

 横を向いた目尻を、涙が伝った。


 間に合う?

 間に合わない?


 あれが“尊敬”とか、そんな類の感情だったら、それを恋愛感情にするのは難しいんだろうか。


 ……そりゃ、難しいか。

 男同士だもんな。


 期待したらいけない。


 れおくんだって、あんな風に尊敬してくれてるんだし。

 それをぶち壊すわけには……。


 涙で滲む部屋は、いつになく闇に包まれているようだ。


 この感情を、無かったことにしてしまえばいい。


 ほら、よく若気の至りだとか、一時の気の迷いだとかいうし。


 明日になったら、普通に挨拶をして、今日心配かけた事を謝って、それからまた今まで通りに生活すればいい。


 普通の友達として。




 翌朝。


 あまり眠る事が出来なかった亮太だったけれど、夜中になんとか目を冷やした結果にしては、それほど酷いことにはならなかった。


 朝の通学路で、前の方にあの黒いモサモサ頭を見つける。


 今日も、変わんないな。


 なんて思いつつ、少し違う目で見てしまう自分に気付く。

 髪の先。

 肩。

 背中。


 亮太は、そんな自分に自嘲気味に笑みをこぼす。


 わかんなかったんだ。

 だって、誰かを好きになった事なんて、なかったんだ。

 それが男相手だなんて、考えたこともなかったよ。


「れおくん」

 声をかけ、振り返った礼央は、まだ少し心配そうな顔をしていた。

「おはよう」

 と普通に声をかけると、安心した顔をする。


「昨日、ちょっと……調子悪くなっちゃってさ。ごめん」

「いや、いいけど」

 そう返す礼央は、まだ疑わしげな顔をしていたけど、それでも礼央は好意的だった。


 大丈夫。


 このまま友達でいられる。


 うん。俺は“大丈夫”だ。

そんな恋愛模様なのでした。

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