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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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89 二人きり

 晴れた日だった。


 冬の最中は流石に寒いので、屋上で昼食を食べる人間はまばらだ。

 けれど、その日はとてもいい気分の晴れ方だったので、亮太と礼央は屋上へ来ていた。

 冬の空気は澄んでいる。

 空も青い。


 ケントとサクは、それぞれ部活に顔を出していた。

 ケントは今頃放送室で、誕生日にプレゼントしたCDを放送に乗せているはずだ。

 屋上で聞く放送は、教室で聞くよりもうっすらとしているけれど、楽しむ程度には耳に届く。


 二人は、フェンス脇の少し段になっている所へ腰を下ろして、並んで座っていた。


 相変わらず、亮太は購買のパンと、コーヒー牛乳。今日のパンはクロワッサンに牛肉の薄いやつが挟まっているちょっとオシャレっぽいやつだ。

 礼央は変わらず、お弁当を食べていた。ゴロゴロとした唐揚げは、空へ油の匂いを放つ。


「それ、おいしそ」

 何気ない一言だった。


「一つ食べる?」

 礼央の明るい表情がこちらを向く。


「いいの?」

 正直、家のどーのこーのはともかく、礼央の弁当は少し気になっていた。

 差し出された弁当箱から、唐揚げを一つ取ると、口に運ぶ。

「あ、おいしい」


「ほんと?良かった」


 確かにそれは、好みの味の唐揚げだった。

 濃すぎることのない醤油味の唐揚げだ。


 そこで、礼央の視線が亮太の手元のサンドイッチに注がれていることに気付く。


「あ、おかえし……」

 うっかり口にしてしまい、視線が合う。


 いや、ちょっと待て。

 確かにまだサンドイッチは残っているけれど。

 これ、一口あげるのは違くないか?


「え?」

 礼央が少し戸惑い、おかしな空気が流れる。

 取り繕おうと言ったのは、

「これ、一口食べる?」

 という一言だった。


 ほら、相手がケントだったらやるかもしれないし。


 心の中で言い訳をする。

 確かに、こんな珍しいサンドイッチを持っていたら、ケントなら『りょーくぅん、一口ちょーだい』なんて平気で言うだろう。

 いや。

 いやいや。

 だからといって、やるわけないじゃないか。


 ふっと笑う眼鏡の横顔が近付いてくるのが目に入り、その口にサンドイッチを押し込んでやる。


 なんかやっぱ、これはちょっと。

 おかしかったかもしんない。


 礼央が口をもぐもぐさせながら、けどどこか緊張しているのを感じてしまう。


「きょ、今日のさ、なんかお試し価格とかで。新発売ってなってて。ちょっと珍しいやつなんだけど」

「ああ……。胡椒効いてて美味しいね」

「そうそう」


 なんとか会話をして、自分を立て直す。


 まあ、別に、二人でご飯食べること自体は嫌じゃないし。


 青い空を見る。

 うん。

 二人で過ごす時間も、悪くない。

 まったく悪くないのだ。

仲良くお昼〜!

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