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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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84 図書室

 12月の期末試験を控えて、亮太は図書室で勉強していた。

 図書委員の仕事をしている礼央を待って、一緒に帰ろうという算段だ。


 そんなわけで、図書室にある勉強用のテーブルの中でも、礼央が見える場所に陣取ったわけだけれど。


 …………礼央は、基本、隣に座る佐々木さんと、カウンターでじっとしている事が多い。

 もちろん貸し借りの作業とか、本の整理とかもあるにはあるけど。


 歩き回ることなどほとんどないし、もちろん亮太にかまう暇などない。


 ……なんか、思ったよりさみしいな。


 それも、何か作業をしている時間も、作業をしていない時間さえもなんだか、隣の佐々木さんと阿吽の呼吸のようなものを感じて、余計に疎外感を感じた。


 ただ、二人はじっとしている。

 オススメの本があるとかそんな時にも、ただそっと隣に渡すだけなのだ。

 渡された方は何かに集中していても、そのうち、渡されたものに気付き、その本を手に取る。

 言葉を交わしたり、交わさなかったりする。


 何か作業がある時にも、二人は言葉を交わさない。

 何をするときにはどちらが何をするか、まるで細かく役割分担でも決まっているかのように、淡々と作業をこなす。


 それがあまりにも上手く噛み合っているから。


 拡げている参考書の文字も、なんだか頭に入ってこない。

 英語も数学も、何も。


 ……ほんと、佐々木さんと仲いいよな。


 俺は、れおくんがどんな本読むかなんて、知らない。


 どんな本かを知らないどころか、本を読むのかさえ知らない。


 亮太と一緒に居る時の礼央は、本を読むことはほとんどない。

 あったとしても、サクなんかと亮太の漫画をパラパラと漁っているくらいのもので。


 今読んでるのは、普通の小説っぽいもんな。


 もらったボールペンをクルクルと回す。

 紺色と金の、シンプルなボールペンだった。

 きゅいきゅいと、ボールペンを指で擦る。


 むーんとした顔で、礼央の方を眺めた。


 澄ました顔しちゃって。


 ……俺の事好きなんじゃなかったわけ?


 いつだって佐々木さんが隣にいて。

 なんかあの椅子、近いんじゃないの?

 他のペアもあんな感じなわけ?


 見れば見るほど、ちょっとモヤモヤしてきてしまう。


 そこで、チラリと礼央と目が合った瞬間、つい、ひょいっと視線を逸らしてしまった。


 ……しまった。

 わざと逸らしたの、わかっちゃったかな。


 でも、さぁ……。




 結局、モヤモヤとしたまま2時間が経った。

 テーブルのそばに立ったのが礼央だとわかっても、わざと顔を上げなかった。


「みかみくん、そのボールペン、使ってくれてるんだね」


「………………」


 なんだか、そんな風にモヤモヤとしていたのが気まずくて、む〜っとしたまま顔を逸らした。


「みかみくん?どうかした?もしかして……」


 もしかして?


「ずっと構えなかったから、寂しくなっちゃった?」

 はは、と笑いながら礼央が言う。

 それはちょっとした冗談だったのだけれど。


 余計に顔を逸らしたのは、その言葉を肯定したようにしか見えなかった。


「みかみくん……?え……」

 そこで、礼央が、思いっきり照れる。

「え……、えっと……」


 おずおずと言う礼央に、仕方なくいつも通りの目を向ける。


「なんでもないよ。……帰ろ」


 本当に寂しくなったなんて、言えるわけがなかった。


 チラリと、後ろから追ってくる礼央を見る。


 まあ、今は一緒に居るんだし。


 窓の外では、日が暮れようとしていた。

 亮太は、腕を上げて、ひとつ、大きく伸びをした。

嫉妬でどうにかなっちゃうのはみかみくんの方。

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