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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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82 そんな視線の一つでも(1)

 冬が来る前に、亮太の誕生日が来る。


 礼央もそれを、知らないわけではない。

 街中を歩けば、そのことばかりを考えてしまう。


 あ、あのブランドのマフラー似合いそうだな。


 とか。


 ペンケース、もうボロボロだったな。


 とか。


 けれど、そんな事を考える度に、その考えを振り払う。


 そんなもの、あげるわけにはいかなかった。


 自分の気持ちが、少しでもバレてしまうような、そんな事なんて。


『え、なんでこんな立派な物?ただの友達だよね?』とか。

『え、お前って俺の事好きなの?』とか。

『そういう目で見られないからさ』とか。

『気持ち悪い』とか。


 まあ、みかみくんは優しいから、そこまで直球で言ってくることはないにしても。

 そんな言葉の片鱗でも見えてしまえば、もう一生立ち直れない気がする。

 一瞬の視線の一つでも。

 気持ち悪さが見えてしまえば、もうきっと、一緒にいることなんて出来なくなるから。


 ダメなんだ。


 少しでも。


 少しでも長く。


 君の事を好きでいたいから。




 そんなわけで、礼央は、亮太の誕生日で頭をいっぱいにしながらも、何も用意するわけにいかないまま、亮太の誕生日当日を迎えた。


 いつもの昼休み。

 4人での昼食。


 少しだけれど嫌ではなくなってきた、母親の弁当の煮物を、礼央はもさもさと口に運んだ。


 青い空の下。

 視界に、ケントが亮太によじよじと近付いて行くのが見える。

 正直、自分以外の誰かが、亮太に触れるのは面白くないけれど、亮太がそれを許容する以上、そういうものなんだと思う事にしている。

 実際、僕もケントの事は付き合いやすい友達だと思っているし。

 ……出来ることなら、ケントなんて屋上から放り投げてみかみくんを抱き締めたいくらいだけど。


「しーんゆう!」

 と、ケントががばっと亮太に後ろから抱きつく。


 ああ……、またほら……。


 と、そこで、礼央は目を疑った。


「はっぴーばーすでー」

 とケントが亮太の目の前に差し出したのは、綺麗にラッピングされた包み紙。


 え………………。


「え、いいの?」

 言いながら、ガサガサと包みを開ける。

 中から出て来たのは、紺色の布製のペンケースだった。


 あ………………。


 目の前が、真っ暗になる。


 亮太が、パッと笑顔になった。

「うわ、ありがと。ちょっと良いやつじゃん」

「いやいや、いいってことよ。母ちゃんも『ケントが高校生になれたの、亮太くんのおかげよ〜』とかってカンシャしててさぁ」


 …………あの笑顔を引き出したいのは、僕だったのに。


「俺、ケントの時CDしかあげてないのに」


 ………………!?


 CD…………。


 誕生日に???


 みかみくんから?????


 ぬ〜〜〜〜〜〜〜。


 我慢。

 我慢だ。


 けれど、それだけでは終わらなかった。


「何、みかみ誕生日?」

 と声を掛けたのはサクだった。


「んじゃ、これ」

 と、サクが亮太のパンの包み紙に、大量の唐揚げを寄越す。

「俺の手作り〜」


 ………………!?


 サクまで…………。手作り…………???


「たまたま弁当作り、手伝わされてさ。ちょっと揚げ過ぎたけど、生肉よりいいだろ?」


 サクがにっと笑うと、亮太が嬉しそうな笑顔を見せた。


 そんな顔簡単に見せて…………!!!!


 そこでチラッと亮太が礼央の方を、ちょっとだけ期待の目で見た。


 何も持ってないよ…………。


 今日ばかりは、少しそのちょっと期待したような、喜んでいるような目が恨めしかった。


 みかみくんなんて嫌いだ………………。


 こっそりと、唐揚げをかじる亮太を盗み見る。


 …………嘘だ。


 ……………………大好きだ。

れおくんからはみかみくんがどんな風に見えてるんですかね……。

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