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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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61 文化祭(2)

 暗くなった体育館の中で、なんとか席を確保できた礼央は、舞台を見つめた。


 くるみ割り人形の劇が始まる。


 みかみくんはくるみ割り人形の役だけれど、最初に出てくるのは本物の抱えられる人形で、みかみくんが出てくるのはもう少し後だ。


「お兄ちゃんたら酷いわ。人形をこんなにしてしまうなんて」


 このすぐ後のシーン。


 舞台が暗転し、頭が7つあるネズミが出てくる。

 主人公の少女マリーが、床に座り込んだ瞬間、出てくるのがくるみ割り人形であるみかみくんだ。


「とぉ!」


 ちなみに、頭が7つあるネズミはダンボール製。

 男子7人で頭を出したらいいんじゃないかなんていう意見もあったけれど、そのために男子7人も役者班に取られるわけにはいかないと、大道具班が反対した。

 後ろでは、大道具班の男子が3人がかりで動かしているなかなかの大作だ。


 舞台美術に興味があるという奴が、ライティングに力を入れたので、なかなか迫力のあるネズミが出来上がっている。


 ネズミが一度退散した後、スポットライトの中のみかみくんが喋る。


「ねえ、マリー」


 礼央の心臓が跳ね上がる。


 正直、みかみくんの演技は上手くはない。

 最初から下手だったし、今だって、やっとセリフを覚えたレベルで、特別上達しているわけではない。


 けど、みかみくんには、まあこいつならいいかと思わせるだけの柔らかい雰囲気と一生懸命さがある。


 優しくて甘い。


 絶対に振り向いてもらえないのなら、もう諦めたいと思うのに。

 離れる事は出来なかった。

 結局、無理なんだ。

 どれだけキツくても、今は。


 嫌いになんてなるつもりもないから。


 確実な終わりが来るまでは。


「僕に一本、剣を用意してくれないかな。今度こそ、君をしっかり守れるように」


 なんだこれ、みかみくんかわいすぎないか?閉じ込めてやりたいな。


 そして、ネズミとの決戦と、主役二人の異世界散歩。

 ほのぼのとした物語が続く。


「この方は、この国の王子なのです」

「まあ!そうなのね、すごいわ!」


 微笑ましい二人。

 誰が選んだのか知らないけれど、なんでみかみくんなんだよ。

 みかみくんに注目する奴が増えたら、どうしてくれよう。


 そして、物語はラストシーンへ。


 部屋に戻ったマリーの元へ、ケントが扮するドロッセルマイヤーと共に、みかみくんが登場する。


 舞台の真ん中で、ハッピーエンドが展開される。


「そうなんだ。僕があの、くるみ割り人形ってわけ」


 主人公の森さんがにっこりと笑うと、みかみくんもつられて笑う。


 む。


 背景をくるみ割り人形の世界へ変え、役者が全て登場して大団円というわけだ。


 子供にも大人にもウケそうな物語。


 拍手が巻き起こる中、僕もみんなに拍手を送った。


 どれだけ想いを抱えたところで、これほど遠くにいる君には、届かないけれど。


 まだ、しばらく友達でいいかな。


 離れられないなら。


 この気持ちは一生何処かにしまっておくから。


 もうしばらくは、友達でいさせて。

もうちょっと文化祭話続けたいところ。

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