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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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60 文化祭(1)

 亮太が教室へ入ると同時に、「おお〜」という歓声が上がった。


「……みんな大袈裟」

 困った笑いを浮かべる。

 文化祭当日、テカテカの赤い生地で作られた衣装に着替えた亮太のお披露目だった。

 主人公がゆったりしたワンピースなので、主人公より派手なんじゃないかという衣装だ。


 文化祭当日。

 学校内の大騒ぎの音に囲まれ、クラスのメンバーは教室で輪になっていた。


「じゃあ、くるみ割り人形から一言」

「え、俺?」

 みんなに注目される。

 一瞬、どきりとするけれど、

「主役だからなー」

 というサクの一言で、注目が少し逸れ、ホッとする。


「じゃ、じゃあ……、えいえいおー!」

 その掛け声で、クラスみんなが腕を上げた。

「えい、えい、おー!」

 クラスが一丸となった瞬間だ。


「でさぁ、みかみくん」

 監督役が話しかけてくる。

「え?」

「本番は昼過ぎだけど、宣伝がてら、その格好のままで歩き回って欲しいんだよね」

 そう言って、大量のチラシを押し付けてきた。

「え」


 開場して数十分。

 そろそろ一般のお客さんも増えてきた頃だろう。


 普通に嫌だけど、この状況じゃしょうがないか……。


「マリーと?ドロッセルマイヤーと?」

「その辺はお任せ〜」

「わかった」


 一つ、息を吐く。

 こんな目立つ格好で外なんて歩きたくないけど。


 もじゃもじゃの後ろ姿を確認して、まあいいかと思う。


「れおくーん」


「はーい?」

 くるりと礼央が振り向いた。


「宣伝行こう」


 そう言うと、礼央は困ったように笑って、大人しくついてきた。




「これってさ、」

 亮太が真剣に言う。

「人形っぽく動いた方がいいのかな」

「え」

 礼央がクスクスと笑った。

「人形っぽく動くシーンなんてないじゃん」

「分かりやすくない?」

 言って、カクカクと動き出す。

「スイッチ、ヲ、イレルト、クルミヲワリマス」


 その亮太の姿が面白かったのか、礼央は声を上げて笑った。

「みかみくん……っ、それじゃ、ロボットだよ」


「え」

 亮太がキョトンとする。

「ロボットじゃなかったっけ?」

「ロボットじゃないよ。木製の人形。たぶん、テコの原理かなんかで胡桃が割れるやつ」

「あ〜」


 やり直す。


「ウシロノ、ボウデ、クルミヲ、ワリマス」


「絶対ちがう」

 礼央がまた笑った。




 大人しく、普通にチラシを配る事にした。

「よろしくお願いしまーす。2時に体育館で公演です」


 中学生らしき集団が群がってくる。

「お兄さんが出るんですか?」

「え、主役なんですか?」

「そうだよ〜」

 と言いつつ、ちょっとたじろぐ。


 そこへ、チラシを持った礼央の手が割り込んできた。


「よろしくね」

 笑顔だ。


 けれど、その圧で、中学生は後退っていく。

「あ、りがとうございますぅ……」


 フン、と鼻息を吐いた礼央の顔は、いつもの冷めた顔だった。

サクッと本番!

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