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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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57 放課後

 体育館での練習から教室に戻る。

 思ったよりも遅くなってしまった。

 もうみんな、帰宅や部活へと散り散りになった。


 俺も早く帰ろ。


 扉が開いたままの教室へと飛び込む。


 …………え。


 夕陽の明かりで、強調された窓。

 照らされた何も書いていない黒板。

 並んだ机。


 その中で、礼央は自分の机で突っ伏していた。

 こちら側から見えるのは、夕日とは逆光になった、いつもの黒のもじゃもじゃ。


 居た……。

 けど、どうし……。


 音を立てないようにしながら、そっと、そばに寄る。

 倒れているならどうしようかと思ったのだ。

 保健室?もしくは、救急車か…………。


 顔が見えるよう、窓側から、そっと顔を覗く。


 え…………。


 礼央は、寝息を立てていた。


 予想外だった。

 なんとなく、人前では寝ないような気がしていたのだ。

 それが、安らかな寝息を立てて、すっかり眠ってしまっている。


 そばにきっちりと畳んだ眼鏡があるところから、もう寝る気でここに居るのだとわかった。


 そっと、音を立てないように、隣の席に座った。


 そっと髪をいじって、すっかり寝ていることを確認する。

 小さくつまんだくしゃくしゃの髪は、思ったよりも柔らかい。


 反応は、ない。


「……帰ってなかったんだな」

 小さく呟く。


 待っていてくれたと思うのは、ちょっと自意識過剰だろうか。

 疲れてたのかな。


 今日は一緒に帰れるだろうか。

 いや、今日は一緒に帰らなきゃな。


 久しぶりに、まともに見る顔だった。

 いや、眼鏡がない顔は初めてか。


 近付いて、じっと顔を眺めた。


 ……こんな顔だったか。

 悔しさも起こらないくらいには、思った以上に整った顔をしているような気がする。

 いや、美醜には疎いようだから、よくはわからないけど。


 そばに置いてある眼鏡に手を伸ばす。

 いつも掛けている細身の眼鏡だ。


 ……眼鏡掛けてないと、見えなかったり、するのかな。


 そっと、耳に掛ける部分を起こして、自分の顔に掛けてみる。


「……きっつ」


 目の前がチカチカして、眼鏡を外した。


 こいつ、こんなきつい眼鏡掛けてたのか。


 眼鏡を手に持ったまま、じっと眠ったままの礼央の顔を見ていると、ふと、亮太は我に返った。


「え、……あ」


 れおくんの顔、じっと眺めるとか……、俺、何やって…………。

 最近、話せないからって、ちょっと……。


 おかしく、なってたかも。


 眼鏡を置いて慌てて立ち上がると、早足で教室を飛び出した。


 何やってんだよ。


 ああ、そうだ。


 そうそう。


 れおくんも、喉、乾いてるかもだし、何か、飲み物でも買って。


 そうそう。


 そうだよ。


 やっぱ、一緒に帰った方がいい気がするし。


 早足で階段を駆け下り、自販機へ向かった。




 一人取り残された礼央は、亮太の居なくなった気配を感じて、そっと目を開ける。

 そのまま、机に顔を埋めた。


「みかみくん……何やってんだよ…………」




 熱くなる顔を見られなくてよかったと、ただ、そう思う。

これはもう両片想いでは、っていうそんな放課後。

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