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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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54 秋が来る予告(2)

「え?」

 フリーズする。


 ちょっと待て。


 そんなのは流石に出来ないぞ。


 けど……。


 森さんは期待した目でこちらを見ている。

 ここで嫌がると、森さんを嫌がった事にならないか?

 そういう、誰かをがっかりさせることはしたくない。


 それに、亮太は、こうした注目の中で、断れるような勇気だって持ち合わせてはいなかった。


「わかった」


 言った瞬間、礼央が、眉をひそめ、目を見開いた。


「俺でよければ」

 気の弱い言葉だった。

 森さんはパッと明るい顔をすると、亮太に向かって、

「よろしくね、みかみくん」

 と笑った。


 そこからは、あまり記憶がない。


「なんか、ほわっとした感じの物語が合いそう」

「あ〜〜〜〜………ピーターパン?」

 その意見は、なかなかいいポイントをついていた。


 そして、亮太がぽんやりとしているうちに、演目が決まった。

「では、演目は『くるみ割り人形』にします」

 学級委員が言うと、教室の中が拍手で埋まる。演目と主役に同意するという拍手だった。


 黒板に『主人公 森』『くるみ割り人形 三上』と書かれている。

 ついでに、『人形をくれる怪しいおじさん 島崎』と、ケントの名前が書いてあった。

「よし。俺はおじさんおじさんおじさんおじさん……」

 と、既に自己暗示をかけようとする程のノリだ。




「よくそんな乗り気になれるよなぁ」

 と、亮太は呟く。

 まだ昼食のない時間に学校が終わってしまったので、今日は4人でハンバーガーショップに入った。

 学校から少し離れてはいるけれど、店の中は学生でいっぱいだ。


 亮太がチーズバーガーにかぶりつく。

「なぁに言ってんだよ。りょーくんなんて主役じゃん。それも、人間に変わるらしいじゃん?」


 そうなのだ。

『くるみ割り人形』という物語は知らなかったのだけれど、なんと、くるみ割り人形は実は青年で、呪いをかけられてくるみ割り人形の姿になってしまったらしいのだ。

 ネズミと戦い、なんだかんだあって、くるみ割り人形がネズミを撃退。

 呪いは解けてくるみ割り人形は青年に。二人はハッピーエンドとなる。

 それも最終的に、王様と王妃様になるのだ。


「まさか、結婚してハッピーエンドなんて話だと思わなかったんだよ」


「まさにメルヒェンだよな」

 ケントがうんうんと頷く。


 亮太の隣にいた礼央は、その話を聞いているのかいないのか、ずっと押し黙っている。

 ちらりと見ると、その亮太の視線に気づいたのか、取り繕ったような、

「あ、うん、がんばってね」

 と、笑顔とは言えないような笑顔で、そう小さく言うと、それ以上は何も言わなかった。

そんなわけで、文化祭エピソード開始です。

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