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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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46 いいじゃんか

 学校の図書室は、夏休みでも開いている日がある。


 開いているということは、この学校図書室で雇われている司書さんだけがずっと居るわけにもいかず、図書委員も出ないといけないということだ。

 それに、夏休みを使って、書棚の整理もする。

 意外と、図書委員をやっていると、学校へ行く日がある。


 礼央も、夏休みの中の1週間ほど、学校の図書館で過ごしている。


 虚無の顔で。


 みかみくんの連絡先……聞くのが怖くて聞けなかった…………。


 迷惑かもしれないから聞けない。

 もちろん連絡先を交換したところで、特別連絡を取り合うわけじゃない。

 それは仕方がないと思っていた。


 こんな感情を抱く人間として、あまりこちらから踏み込むべきじゃない。


 けど、それはつまり、夏休みの間中、亮太には会えないということを意味していた。


 亮太にも会えない、ただ暑いだけの夏。


 すっかり委員会のパートナーとなっている佐々木さんと隣り合って、少ない人数が勉強中の涼しい図書室のカウンターに座り、無心に読書をしたり、宿題をしたりしていた。

 夏休みとあって、カウンターに座る気持ちも、いつもほど重いものではない。

 各々、比較的好きな事をして過ごした。


「れおくん」


「ん?」


「どうぞ」

 にっこりと笑い、佐々木さんがイヤホンの片方を差し出して来る。

 イヤホンを片方ずつ着け、図書室に静かな時間が流れた。


 片耳に、女性歌手の片想いの曲が流れてくる。

 誰だかはわからないけれど、ゆったりとした切ない曲だ。


「私……、好きな人に連絡先、聞けなかったんだぁ……」


 そうか。

 そういう話、か。


「そっか……。残念だったね」


 静かにそう返した。


 僕もだよ。


 言いたいけれど言えなかった。


 いいじゃんか。


 今、連絡先が聞けなくても、佐々木さんにはきっとチャンスが巡って来る。

 連絡先を聞けば、そういう意味なんだと受け止めてもらえる。


 そうじゃなくても、こんな甘ったるい音楽に浸って、そんな悲しみを友人に吐けるなんて、それだけでいいじゃんか。


 僕は違う。


 こんな話、ヒトには出来ない。

 連絡先も聞けない。

 勇気を出して連絡先なんて聞いたところで、そういう感情を持っていると伝わるわけじゃない。


 伝わったところで……伝わってしまったところで、そんなの、気持ち悪いと思わせるだけだ。


 ブラインドの隙間から、明るい陽光が、勉強用のテーブルに落ちているのが見えた。


 泣きたくなる。

 こんな不甲斐ない自分にも、こんな事でズルいと思ってしまう自分にも。


「次、会った時に聞けばいいよ」


 そう小さく言うと、佐々木さんは少しだけ悲しそうに笑った。

珍しくれおくん視点です。

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