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君が僕を好きなことを知ってる  作者: 大天使ミコエル


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44/101

44 そして夏休みが始まる

「んあああ〜〜〜〜〜〜」

 亮太は机に伸びをした。


「やっと終わったな〜」

 近くに寄って来たケントが、さっぱりした顔をして言う。


 やっと期末テストが終わったのだ。


「出来た?」

 出来た?なんていうデリケートな質問をしてくるのがケントらしい。

「書けたは書けたけど……何の文章かわかんなかった」

「すげーじゃん。俺、長文半分くらしか解けんかったわ」

 ケントが、懐いている犬の様に見上げてくる。

 いつもこんな顔だから憎めないんだよな……。

 こいつがどつき回されないところを見ると、きっとみんなもそう思ってるんだろう。


 これが終われば夏休みだ。


 ケントは受験前の夏通り、ちょくちょくうちに来てはのんびりしていくんだろう。疎遠だった事もあるけど、気安い関係なのは今も昔も変わっていない。

 サクは夏休みは部活だって言ってたな。体育会系は大変だ。

 れおくんは……。


 れおくんは、夏休みどうするんだろう。


 ふと、自分が礼央の連絡先を知らない事に思い当たった。

 ゲームセンターの大会に出た時も、店で待ち合わせだったから、必要を感じなかったのだ。


 夏休み、遊ぶなら。


 夏休み、遊ぶなら?


 二人で、どこに行くだろう。


 動物園???いやいやいや。プールとか???いやいやいやいやいや……。


 そんなのないし。

 用事もないし。


 聞いていいのか?


 だって、連絡先って恋愛的にけっこう?大事なものだろ。

 いい、のか?


 連絡先なんて交換したら、メッセージ待っちゃったり、うっかり宛先間違いと称してメッセージ送ってきちゃったり、夜中にこっそり電話する事になっちゃったりするんじゃないか?


 ……いや、れおくんなら、そんな事はしないか。


 それに、ケントやサクの連絡先は知っているわけで。

 友人と連絡先交換するのなんて普通だし。


 れおくんは…………俺の連絡先欲しいかな………………。

 それとも……、いらない?


 悩んだ末に、わけがわからなくなる。


 久々に4人で帰る帰り道。

 暑いながらも、これで夏休み突入だと、浮かれている学生は多い。

 4人でアイスを食べながら、礼央の様子を窺ったけれど。

 礼央はサクと隣り合っているので、話す暇がなかった。


 別に、いいか。

 聞かれてないし。


 たったの1ヶ月と少しだから。


 わけがわからなくなった末、そう思ってしまったものだから。

 結局、礼央の連絡先は聞かないままになった。


「またね、みかみくん」

「あ、うん。また」


 そんな小さな言葉を交わしただけで、礼央は亮太とは逆方向の電車に乗り込んで行った。

 その、ちょっと寂しそうな顔が、少しだけ引っかかった。


 一瞬、泣くんじゃないかと思った。

 そんなわけないのに。




 その夜。

 自室のデスクで、夏休みの宿題を一つずつ確認していった。

 ほとんどの教科でこれでもかっていうくらいあるからな。


 数学の先生は数学は筋トレのようにトレーニングが大事なんだと豪語するし、英語の先生は英語は使わないものは忘れてしまうからと毎日やらなくてはいけない宿題を出してくれたし。


 多いな。

 けど、手分けすれば…………。


 と、ついっとスマホの方を見て。そして思う。


 …………俺、なんでれおくんの連絡先、聞いておかなかったんだろう。


「聞いておけばよかった」


 あと、1ヶ月と少し。

 あと、1ヶ月以上もあるのに。

初日からさみしくなってしまったのでした。

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