37 計画を練っておこう
「準優勝〜」
記念の店名入りタオルマフラーを首から下げた。
店長の思惑通り、宣伝してやるしかないのか……。
まだ明るい時間だけれど、二人は打ち上げがてらファミレスへ入った。
ハンバーグにライス、スープ。
「ちょっとお腹空いてたな」
「お疲れ〜」
言いながらジュースで乾杯だ。
優勝は出来なかったものの、
「準優勝なんてすごいよ!」
と、礼央は嬉しそうにしている。
そうだよな。
ここで、申し訳なさそうにしても場が暗くなるだけだ。
「うん!初心者にしてはやったよな」
自慢げにすると、意外な事に礼央は少し顔を赤らめた。
…………?
けど、こいつのおかげで、人前に立つ時、どうすればいいのか少し分かった気がする。
観客の存在を無視するわけじゃないけど、その視線ばかりを気にしているのもおかしいんだよな。
俺の舞台なんだから。
どう思われるかばかりを気にして、動けなくなってしまうのは勿体無い。
だってあんなに……れおくんといる時は楽しかったから。
「ありがと、れおくん。れおくんが誘ってくれたから、なんか俺、いけそうな気がする」
ハンバーグを口に入れた礼央が、優しく笑う。
「なら、よかった」
試合までは、残り2週間となった。
その日から亮太は、ケントと計画を立てる事に専念した。
大体は、担当になっている2年生メンバーの確認とメモ作りだ。
二人でメンバーのところへ挨拶に行き、印象などをメモっておく。
そして、名前、趣味や部活などを簡単に一覧にした。
「決勝に有力なのってどこ?」
「2組結構よくね?平均身長高いし」
晴れた日、亮太とケントの二人は、昼休みに屋上でゴロゴロとしながら選手一覧を眺めていた。
隣から、弁当を抱えたサクと礼央が覗き込む。
「俺は1組がありだと思う」
サクが口を挟む。
「1組?」
「名塚さんいるだろ?」
「あ〜、あのちっこい……」言いかけて、ケントが言い直す。「あの、お小さい先輩?」
「…………」
サクが一瞬呆れた顔をしたけれど、ケントの事は無視して話を続けた。
「うちの先輩なんだけど、バネが凄くて」
「バネ」
亮太が真面目な顔をしてメモを取り始める。
「ジャンプがすっげぇの。ちっ…………お小さいくせしてシャトルが上から降ってくるっていうか」
「ほ〜」
サク以外の3人は、興味津々だ。
「ジャンプとか、それこそボール投げるのとか上手いと思う。いや、コントロールあたりはわからんが」
「ほうほう」
ケントが頷く。
「1組は捨てに来てるわけじゃなかったんだな」
「1組その辺チェックしとくか」
そんな風に、実況の計画を練り、時間は過ぎていった。
そして、球技大会の本番がやって来る。
亮太くんの自慢げな顔がれおくんの好みだったようです。




