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31 自分だけの舞台(2)

 顔が、熱くなるのがわかった。


 ……ここで、そんな顔はずるいよ。


 少しだけ、居心地が悪くなる。


「じゃあさ」

 礼央が、まさにいいアイディアを思いついたというように明るい声を出した。

「僕と一緒に大会に出てみない?」


「え」


 予想外の言葉だった。


「そんな……、俺、ゲームなんてできないよ!?」


「いいよ、別に優勝したいわけじゃないし」

 礼央がカラッと笑う。


 笑ってる場合じゃなくて!


「いやいやいや、そんなレベルじゃなくてさ。ゲームとして成り立たないから、きっとブーイングの嵐だよ!?」


「いいよ」


 ふと礼央が見せた顔は、あのゲーム大会で一人佇む時の少し大人びた目つきだ。


「FPSの協力プレイで、ペアで出る大会なんだ。僕いるし。フォローはする。舞台の上でさ、楽しくゲーム出来ればいいよ」


「そしたら、度胸も付くって?」


 疑り深い視線を向けると、礼央ははにかんだ笑顔を寄越した。


 こいつは……、見た目に反してやり方がアグレッシブ過ぎる。

 スパルタ過ぎる。

 雑過ぎる。


 そんな事で、本当に上手くいくだろうか。


 けど。


 礼央の自信のある表情は、亮太にはどうしても気になるものだった。


 れおくんが言っていた舞台。

 その舞台に、俺も立っていいと言う。

 自分だけのもののはずなのに。


 このぽんやりとしたはにかんだ笑顔について行けば、同じ世界が見られるのだろうか。


 そんな上手くいくとは思えない。

 思えないけれど。


 そのれおくんが持っているという自分だけの舞台は…………見たい。


 足元を、雲の影が過ぎていく。


 礼央が、目の前に立ち、じっと立っている。

「ん?」とでも言いたげな表情で。

 けど、手を差し伸べることはしなくて。


 いつだって、引いてるくせに。


 こっちに向かって来たりはしないくせに。


 けど、何故だか感情を隠そうともしない強い瞳で、いつだって俺を見てるんだ。


 俺は、それについて行こうとしている。


 信じてついて行くとか、そんなんじゃなくて。

 自信が持てるようになれればとか、そんな事どうでもよくて。


 ただ、こいつへの興味だけで。


「しょうがないな、れおくんは」


 礼央が眩しくて、少しだけ泣きそうになりながら、亮太は一歩を踏み出した。


 礼央が、嬉しさを隠そうともしない表情で笑う。


「そんなんじゃ絶対上手くいかないし。ゲームだって負けるし」


「いいよ。みかみくんと一緒に出られるだけで」


「…………」

 こいつのことだから、本気で言ってるんじゃないかって思えてしまう。


 全く。

 しょうがないやつだな。


「一度だけだから」


 言うと、れおくんは安心して歩き出した。

 隣り合って歩き出す。


 なんだか明るく見える公園の景色に、少しだけ笑いそうになった。

れおくん、かわいいですね。

本当に優勝よりみかみくんと出れる方が嬉しいでしょうね。

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