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2 みかみくん

 えっと……。have been……。


 その高坂から借りたノートの英文を、一つ一つ覚えていく。


 やばい……、頭入らない……。


 さっきの嫌っているという言葉が、なんだか引っかかっていた。

 知らんやつに嫌われていてもなんともないのかもしれない。


 けど。


 知らんやつに嫌われるほどの何かなんてしてないのに。


「なんだよ」

 ひとり、無意識に呟く。


 ズズ……と音を立てて無くなったコーヒー牛乳のパックは、ゴミ箱に放り込んだ。


 廊下でぶつかりそうになりながらも、ノートと睨めっこをしながら歩く。

 二人は前で余裕そうに抜き打ちの話をしている。


 そのまま教室まで行くと、先生の、

「早く席着け〜!今日は抜き打ちやるぞー!教科書は鞄の中!」

 という声が覆い被さるように降ってくる。


「え〜」というお決まりの声で、教室はいっぱいになった。


 慌てて席に着いたので、

「あ」

 英語のノートを返し忘れたままなのに気付いたけれど、仕方なく自分の鞄の中にしまった。


 英語の抜き打ちは、ノートのおかげでそれほど悪くはなかった。

 まあ、特に良くもなかったけど。




 それから、英語のノートの事は忘れ去り、再度英語のノートの借りっぱなしに気付いたのは、放課後のことだった。


 ノートの表紙には、几帳面そうな字で、『高坂礼央』と書いてある。


 亮太は後ろを振り返った。


 確か、ケントが言うには、高坂の席は、後ろの後ろの右だ。


 そして奴は、探すまでもなく、そこに居た。

 視線が、合う。


 後ろの後ろの右の席に座っていたのは、くるくるとした天パ黒髪に隠れるような眼鏡男子だった。

 背は低くはなさそうだけれど、華奢な印象だ。


 よかった、居た。


 ふむ。

 確かに見覚えはあるような。

 けど、確かに名前はわからないな。


 まあ、こいつがどうやら“れおくん”らしい。


 目が合うなり、あからさまに目を逸らされる。


 なんだよ。

 このノートに気付いて見てたのかもしれないし、返ってこなくて不審に思ったのかもしれないけど。


 そーやってあからさまに目逸らすのって、ちょっとしつれーなんじゃないの?


 俺が、何したって言うわけ?


 ぽすっと英語のノートを礼央の机の上に置く。


「これ……、借りてた。さんきゅな」

 こんな奴とは関わらない方がいいって思いながら話したものだから、声はちょっと投げやりになった。


 そしてまた礼央が、返事もせず俯いてしまったものだから、二人の間には、ギクシャクとした空気が流れた。

 そのまま、ノートを置いて、立ち去ってしまおうと思った。


 教室はもう他に誰も居なくて。

 まだ部活も始まってないせいで外からも声の一つもしなかった。

 ただ、明るい二人だけの教室。


「みかみくん」


 けど、礼央が俺のことをそう呼んだから。


 ふっと、振り返った。


 振り返ってしまった。

今作はこんな感じで二人の甘々の連続でいきたいと思います。

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