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99 番外編 持て余すのはその気持ち

 ノートを鞄の中に入れた瞬間に気付く。


 あ、次休講なんだっけ。


 早く帰れるのにすっかり忘れてた。

 れおくんにも言い損ねてるな。


 今日は早く帰ってハンバーグにでも挑戦してみるか。


 なんてちょっと思うけれど。

 いやいや待て待て。

 礼央もこの時間で今日は終わりのはずだ。


 れおくん捕まえて、ちょっとどこか出掛けるのも悪くないな。


 メッセージを入れておく。


「あれ、みかみ、帰らんの?」

 呼ばれて、顔を上げた。

 同じ学部で友人になった里山くんだ。


「うん、これから帰るよ」


「今日さぁ、カフェテリアで映研が撮影するって言っててさ。見に行かん?」

「へぇ、楽しそうだね」

 とはいえ、礼央にメッセージは送ってしまったし、それについて行くわけにもいかない。

「今日予定あるんだ」

「おー。明日もやるみたいだから、明日行こ」

「うん」


 友達も出来たし。勉強もまあまあ楽しくて、新しい学生生活は順調と言えた。


 一人、構内を歩く。


 返事は来てないけど、まあ、授業があったはずの教室へ向かってみる。


 一人で歩くのは、悪い気分ではない。

 空は晴れている。

 大きな建物を通り抜け、外を歩く。

 食堂の前にはまだ、今日のおすすめメニューの看板が出ている。


 図書館の前を通ったところで、遠く目の前に、黒いくりくりした後ろ姿を見つけた。


 よかった、見つけ…………。


 ………………ん?


 隣にいるのは…………、紛れもなく佐々木さんだ。


 またか……。


 なんて、つい思ってしまう。

 高校の時、知る人ぞ知る名物コンビだった二人は、同じ本を読んでいた結果か、同じものに興味を持ち、今では同じ大学の同じ学部に居る。


 相変わらず、会話は少なそうだけど、仲は良さそうだ。


 ……だから、返事が来なかったのか。


 気付いてしまうといい気分ではない。


 同じ学部だからって、なんであの二人が一緒に行動するわけ?


 けど、ここで出しゃばるわけにもいかない。

 れおくんにだって、友達は必要だし。

 二人が恋愛関係ではないのはよく知っている。

 ……れおくんが俺の恋人なのは事実なわけだし。


 目の前の二人を眺める。


 気にしないようにしないと。

 いくら、お似合いだと言われようと。

 俺らの事を公表してしまえば、お互いの将来に影響がでるかもだし。やりたい事をやりきれていない今はまだ、言わないって決めたじゃないか。


 それなのに。


 それなのに…………。


 足は真っ直ぐに出た。

 迷いなんてなかった。


「ごめん」

 言いながら、礼央を引き寄せる。

 佐々木さんが振り向いて、目が合った。

「あ、みかみくん。久しぶり」

「久しぶり」

 引き寄せられた礼央は、頬を赤らめた。


「申し訳ないんだけどさ、こいつ俺のだから、今日は連れてっていいかな」

「え?あぁ……。じゃあ、れおくん、プリント出しておこうか?」

 戸惑いを見せつつも、佐々木さんは冷静だ。

「ううん。明日でもいいやつだし、自分で出すよ」

「うん。じゃあ、またね」

「また」


 挨拶を終えた礼央を、ズルズルと連れて行く。


 二人を見送った佐々木は、ぽっと頬を染めた。

「れおくん…………上手くいったんだぁ…………」




「どうしたの」

 礼央がキョトンとする。

 亮太はバツが悪そうに返事をした。

「休講だったから、どっか遊び行こうかと思って。誘いに来た」


 その瞬間、礼央が嬉しそうにする。

「それで……嫉妬…………」


 嫉妬……。

 亮太は何も言えなくなる。


「どこ行こっか」

 礼央がひょっこり隣を歩く。

「……ちょっとその辺」


 晴れた空。

 初めて会った日や、初めて隣を歩いた日を思い出す。

 触れそうな手とか、相変わらず意識しながら。


 隣の様子を見る。

 視線が合い、少し照れながら笑い合う。


 そうだな。これがいい。

 これからも、ずっと隣を歩いていようと、そんな風に思った。

ここで完結とさせていただきます。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

次回はあとがき〜。

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