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10 なんだ、いるんじゃん

 4時間目の数学の授業が終わると同時に、クラスがざわつく。

 みんな、昼食を食べる為に急いでいるのだ。


 昼食を食べる方法は様々だ。

 弁当派もいれば、小さいながら食堂もある。

 学校前のラーメン屋に行くグループも散見される。


 特に、購買組はみんな走るように教室を出て行く。


 亮太は、数学の教科書を机に押し込むと、ふと礼央との会話を思い出した。


 購買に、今度一緒に行こうと約束したのだった。


 もし弁当でも、たぶんそのまま一緒に飯食べるし……。

 買い物に付き合ってもらうくらい、いいか。


 くるりと振り向く。

「れ…………」


「れおくん!」


「…………」


 礼央を呼ぶ、声。


 その声は、後ろの教室の扉の向こうからだ。

 見ると、ロングヘアーの大人しそうな女の子が、教室を覗き込んでいた。

 弁当のようなものを持ってニコニコとしている。


 え…………。


 礼央はというと、約束でもしていたのか、それが当たり前のように自分の弁当を抱え、一緒に連れ立って行く。


 礼央を呼ぼうとした言葉も、手も、一瞬にして無用なものとなった。


「…………」


 え………………。


 なんだ、いるんじゃん。


 一緒にご飯食べるヤツ。


 …………なんか……、彼女?




 その日も、帰りは礼央と一緒だった。


 礼央をこっそり、まじまじと見てしまう。


 ……俺のこと好きなんじゃなかったの?


 なんてつもりは微塵もないけど。


 そもそも、それについて何かを聞くつもりなんてなかった。

 いや……、昼に急にいなかったりするとどうしたのかって思うだけだ。

 それを聞くくらい……いいんじゃないか?


 曇り空。

 前と同じように、公園の池の脇を歩く。


 何でもないように言えば、大丈夫。


「れおくんさ、お昼……」


 言いかけると、

「ああ、委員会で。言ってなかったね」

 と返ってきた。


「委員会」


 そっか……。委員会か。


 じゃあ、あの子も委員会の……。


「そう。図書委員。お昼は時々受付にいなきゃいけない日があるんだ」


「そか」


 図書室の受付…………。


 あの女の子のことも聞きたかったけれど、そんなところまでは聞けずに終わった。


 けど、なんとなく、亮太の少しだけ重かった何かが、少しだけ軽くなる。


「じゃあ、時々はお昼いないんだ?」


「うん。2週間に1回くらいかな。あと、放課後もたまに」


「本、好きなの?」


「うーん、ほどほど?」


 礼央は確かに、大人しそうに見えるけれど、あまり本ばかり読んでる眼鏡くんという雰囲気ではない。

 ガリ勉という風にも見えない。

 まあ、俺よりは勉強してんのかもしれないけど。


 亮太がふっと笑うと、礼央の瞳がくるりと光り、気恥ずかしそうに視線を逸らした。


「じゃあ、図書室行ったら居るんだ?」


「うん。おすすめの本、探しておくよ」


「じゃ、また今度な」


 それは、なんでもない言葉だった。

 けれど、約束には違いない。


 それは、約束には違いないのだ。

れおくんとしても、言っていないことが気になっていたんでしょうねぇ。

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