ノーベル賞をあげたい
それは殿が二歳になったくらいの出来事だった。
ある朝、寝ぼけ眼の私に対し殿は私の足を指差してこう言ったのだ。
「ウインナー」
当然私の脳内は「?」でいっぱいである。
「何でウインナーなの?」
私のその質問にも殿は構わず、真剣な顔でひたすら「ウインナー、ウインナー」と繰り返す。
するとその時、私の脳内でピーンと点と点が線で繋がった。
その当時殿はお肉を全然食べてくれなくて、唯一食べてくれたのはタコさんウインナーだけ。
そして殿はそのタコさんウインナーの美味しさにドハマリしていた。
ご飯の度に「タコさん」や「ウインナー」と言って催促してくる殿。
つまり殿の中では蛸といえばタコさんウインナー、ウインナーといえばタコさんウインナーという強い認識があったのだ。
ここで改めて殿が何を指差していたのかを思い出してみると、私の足だ。
もっと厳密に言うと、殿は私の足に出来たタコを指差していたのだ。
つまり蛸=タコさんウインナーな殿の脳内では……
足のタコ=蛸=タコさんウインナー=ウインナー
という数学者もビックリな公式が誕生していたのだった。
本当子どもの突拍子もない考えや想像力に驚かされた著者でした。