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腹が減っては戦はできヌ  作者: 結野セキ
第三章:成長期

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久しぶりの家族

「ジンさんだっけ? どんな人なの?」

「すっごい良い人。いろいろ教えてもらったんだ」


 アリアには、お手伝いに行った時の話をほんの少ししか出来ていなかったので、道中にたくさんの思い出話をした。

 気が付くと首元の魔石を握っていた。この魔石はあの時本当に助けになった物だ。俺の大切な宝物……。


「魔石、出して?」

「うん?」


 アリアの指示の通りに、胸元から魔石を出すと手をかざし魔力を込めてくれた。魔力が切れ、色が失われくすんでいたが、アリアのお陰で色鮮やかな綺麗な宝石のようになった。


「怪我しないように、気を付けてね?」

「ありがとう」


 それからというもの馬車を操作しながら、アリアとたくさんの話をした。普段こんなに長い時間、隣にアリアが居る事はない。それにお客さんに邪魔もされないので嬉しかった。こんなドライブデートも悪くない。お尻が痛い馬車だけど。

 その当時マルゴスさんに貰った地図を見ながら、ジンさんの家に向かっていく。


「ここ?」

「うん、この大きな家がそうだよ」

「すごいわね」


 無事に到着した。懐かしさも感じる豪邸を見上げながら、玄関から大きな声で呼んでみる。

 しばらく経つとドアが開き、中からお腹をさすりながらエブリイが出てきた。俺を見た時、一瞬誰だか分かっていないような顔をした。


「アグリ!?」

「お久しぶりです!」

「大きくなったわね!」


 一瞬にして抱き寄せられて、絞められる所だった。

 「入って」と部屋の中で話すことになり、アリアと一緒にあの頃を思い出しながら足を進めた。


「ジンさんは居ますか?」

「仕事に出てるけど……。呼んでくる?」


 俺は首を振って、自分で行く事にした。その辺探せば見つかるだろう。それにそのお腹。


「エブリイさん、そのお腹もしかして」

「えぇ、ケンと結婚して赤ちゃんが居るわ」

「おめでとうございます!」


 やっぱり!常にお腹を大事そうにさすっていた。お腹はそれほど膨らんではないが、エブリイさんの様子で分かった。

 アリアと声を被って笑ってしまう。一通りエブリイさんにお祝いの言葉を伝えると、エブリイさんがアリアの方を見て言った。


「この子がアリアちゃん?」

「はい!」

「よろしくね、アリアちゃん」

「よろしくお願いします」


 エブリイさんにアリアを紹介して、俺は一度外に出た。

 懐かしい道、懐かしい田んぼ。俺がいろんな面で成長できた気がする場所だ。記憶が無い日もあるけれど。

 鮮やかな緑色の麦の葉が風にカサカサと揺れる音を聞きながら、ジンさんを探す。歩いていると、見た事のある屈強なお兄さんが作業をしていた。ジンさんの居場所を聞くとこの先の小屋に居るらしい。お礼を言って先に進む。


「ジンさん、お久しぶりです!」

「おっ!? アグリ君じゃないか!」


 ジンさんはすぐに俺だと気付き、近寄って頭を撫でてきた。


「元気だったか? 急にどうした?」

「実は、話がありまして」


 たくさん話したいことはあったが、簡潔にあった事を話した。ジンさんも忙しいだろうからゆっくりはしていられない。ジンさんは俺の話を真剣に聞いてくれて、すぐに判断してくれた。ジンさんは近くに居た従業員を集めて指示を出し、俺も付いて行くよう言われる。そこに向かう前、ジンさんに母の事を話しておこうと思った。


「ジンさん」

「どうした?」

「母が干ばつの時期に亡くなりました。家族みんなで来られなくてすみません」


 母も父もみんなでここに来ると約束したことが果たせなくなってしまった事を謝った。「そうか」と呟くジンさんは俺を強く抱きしめてくれた。


「いつでも顔を出しに来い! お前の大切な人みんなでな」

「はい!」


 ジンさんは何でも必要なものがあれば持って行ってくれと言ってくれた。さらに3人の力仕事が出来る人を貸してくれる事になり、寛大なジンさんに心から感謝した。

 家に戻り、止めてあった馬車を指示のあった場所に持っていく。するとみんながたくさんの食料を荷台に積みこんでいく。

 すっかり仲良くなっていたエブリイさんとアリアが別れ話をしているのを待っていると、聞き覚えのある声が畑の方からした。


「アグリー!!!」

「ケンさん!」

「久しぶり! これ、良かったら持って行ってよ」


 ケンさんの手に握られていた物は植物の種だった。ハンカチのような薄い布にくるまれていた。それほど小さくない種は、見れば何の植物なのかは容易に想像が付いた。なんせ香りが漂っているのだ。


「しそ!」

「干ばつがあっただろ? アグリが持って帰ったのもだめなんじゃないかと思って、育てて種を残しておいたんだ」

「ありがとうございます! 嬉しいです」


 ケンさんの言ったように、ジンさんの土地からいただいた赤しその苗。あの時の干ばつですべて枯れてしまっていた。家に帰ったら蒔こう。暖かくなれば、しその葉が収穫できるだろう。


 ジンさんとケンさん、それにエブリイさんにもお礼を伝えて馬車を走らせた。いよいよ始まる、災害救援活動。リリアンに書いてもらった地図を見ながら山に入っていく。

Next:接触

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