∞55【無意識的《無限チュートリアル》】
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「このクソッタレがあ!!」
よくない言葉で罵倒しながら、アゾロは目の前の相手に木刀を繰り出していく。
『攻撃は最大の防御』を体現したかのようなアゾロの闘法は、その勢いだけで言えば、たとえスキル無しの状態でも並の傭兵四・五人を相手に十分渡り合えることだろう。
しかし、今戦っている『その相手』は、アゾロの木刀の攻撃を軽々と躱しながら逃げ回り、アゾロの木刀の一撃を木剣による『切落し』で淡々と撃ち落としていく。
「……ッ!『切落し』は攻撃とちゃうんかい!!」
罵声を浴びせながらも攻撃を続けるアゾロに対して、『その相手』は淡々と回避行動と、切落しの『防御』を繰り返している。
現在、アゾロは眠りながら《無限チュートリアル》を起動させ、眠りながら心の中で『幻影の父』を相手に稽古をしている。
『“睡眠中”に《無限チュートリアル》を起動する』
……もしかしたら、出来るのでは?
アゾロ自身そのくらいの発想で、今日初めてやってみたことだった。
《無限チュートリアル》は、アゾロの心の中で起こっていることなので、眠る前に『強くイメージ』することによって睡眠中のチュートリアルも可能になるらしい。簡単にいうと、夢の中で行う『イメージトレーニング』のようなものだ。
ただし、肉体への負荷を減らすように、アゾロなりの安全措置をとりながら実践している。
現在行っているチュートリアルの設定は、
【VS父】
【武器有り∇木刀】
【範囲制限有り∇半径10メートル】
【ハンデ有り∇父:防御・回避のみ】
【痛覚無し】
要は、『アゾロの全力攻撃は、“ひたすら避け続けるだけ”の父に当てられるのか?』という実戦的なイメージトレーニングだった。
「ちょこまかと逃げくさりやがって、このボケナスがぁ!!」
どうやら父は、防御と回避だけに特化させた方が手強いらしい。逆に言えば手合わせの時の父は、アゾロに対して『かなり手加減していた』ことがよく分かる。
幻影の父は、アゾロの攻撃を巧みに躱しつつも、たまに切落しでアゾロの木刀の背もしくは横面を打ち、アゾロの攻撃が止まった隙に距離を取る、という行動を繰り返している。
このチュートリアル中、アゾロが気付いたことは、“待ち”に徹した父に攻撃を当てることは至難の業ということ。
そして、父の得意な『戦闘スタイル』。
「……エミルと同じ『カウンタータイプ』な訳ね、父は!だったら、だったで!」
叫びながら、アゾロは幻影の父にさらに挑みかかる。すでにアゾロは、父の『木剣による切落し』の間合いを体で覚えつつあった。
「やったらぁ!父に一撃くれたらぁ!!」
己の夢の中で力強く咆えるアゾロ。
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夢という無意識下で行う《無限チュートリアル》は、アゾロの肉体と精神に強い影響力を及ぼす。
つまり、夢の中でアゾロが叫んだことは、全て眠っているアゾロの『寝言』として、その口から無意識的に発されていた。
眠りが深いタイプのエミルはともかくとして、父と母の二人は、眠りながらやたらはっきりとした寝言を叫ぶ娘を心配しながら不安な朝を迎えた。
特に、父は、
(……なんか『逃げ回るオレ』を追いかけながら一撃くれてやる夢見てるっぽいけど。……もしかしてオレ娘に嫌われてる?)
と、いつもの無表情のまま暗い天井を見つめ、少しだけ心を痛めたのだった。
…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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