∞53【二(ふたつ)を一(ひとつ)にする】
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えい…!やあ…!
家の箱庭の中で、エミルが一生懸命に木の枝を振っている。エミルに見せる為にゆっくりとした動きで木剣の演舞を繰り返す父をマネしながら、時期伯爵候補のディオアンブラ家長男は小さいながらも真面目に稽古をしているようだ。
アゾロはその様子を丘の上から眺めている。
エミルの筋がいいことは、素人のアゾロにも分かる。エミルはまだ体が小さいので大人用の木剣を振るうことはできないが、それはさしたる問題ではない。大人だって、自分に見合う武器を買い求めて使うのだろうし、エミルの体だってこれからどんどん大きくなるのだから。
大切なのは、上達しようとする意思だ。
5歳のエミルは木の枝を剣に見立てて、まるで父の影のように正確に父の演舞をトレースし続けている。たまに調子に乗った父が少し難しい技を見せたりもするが、エミルはそれすら正確に模写してみせた。
どうやら、こと『剣』においては、エミルの方がアゾロよりも天才の血が濃いらしい。
アゾロは丘の上の大きな樹に背中を預けて座り、丘の下の我が家を見下ろしている。懸命に木の枝を振るう5歳の弟を見ながら、アゾロは心の中だけでつぶやいた。
(……将来が楽しみね)
アゾロはというと、丘の上の大きな樹にもたれ掛かって座禅を組んでいる。手の中の阿修羅の木刀を矯めつ眇めつしながら、『この武器を使って、切落しの技を使うにはどうすればいいか』をイメージしている。
父から『切落し』のパターンをいくつか教わったアゾロは、父に対して軽く礼を言った後で、いつものように丘の上の大きな樹の下で一人鍛錬を始めた。
アゾロが父の切落しを通して学びたかったのは、
『攻防一体』という概念。
そして、その『バランス』。
攻撃と防御と、その状態移行。
本来混じり合うはずのない状態同士が混じり合う、攻防一体。
……二を一にするという概念。
それは剣のみならず、すべての武術に通ずる奥意でもある。
「攻撃と防御を『一』にする。父みたいに経験と勘で戦術立てて。『わたしだけの闘い方』で……」
手の中の木刀を見ながら、声に出して確認するアゾロ。この『声に出す』ということも、精神集中の為の大切な技法の一つだ。
攻撃を当てることと、躱すことと、動くこと。
……プラス《弾幕》。
それが、アゾロが漠然とイメージする『アゾロだけの闘法』。
しかし、アゾロはそれをうまく言語化できない。
代わりにアゾロはこうつぶやく。
「……誰にも負けたくない!父にも誰にも!!」
…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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