∞52【悩みも、戸惑いも『自分だけのもの』】
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「……教えろって言うなら教えるけど。難しいぞ『切落し』多分」
父は、自分の経験を踏まえてアゾロに忠告した。
強力な技を覚えれば強くなると思いがちだが、使いこなせなければ意味はない。
熟練の剣士が『こうやって防ごう、ああやって切ろう』とか心の中で考えている間に、未熟だが勢いのある剣士に思いっ切り打ち込まれて終始請け太刀となる……
そういうことは、実戦でもままあることだ。
特に『切落し』は、やろうと思って急に成立する技ではない。
単なる技の結果として起こる『破壊力』だけの問題ではなく、『自分の武器の特性』だとか、『間合いのはかり方』だとか、『体軸の感覚』だとか、『攻撃角度』だとか、『相手の虚を作る術』だとか、そういった諸々のことを理解して、肉体的な下地が十分に出来上がった上でないと実戦で技は発動しない。
『強力な技をただ使えるだけではなく、それを実戦の中でどう活かすか』
つまり、『戦術』を自分の中で練り上げて、自分だけの闘法に組み込んでいくことが重要となる。
むしろ、ただ単に技を知っている、ということがマイナスに作用する場合だってあり得る。
……しかし、父はそれをうまく言語化できない。
父は自分の顎に左手の親指を当てて考えながら、アゾロに言った。
「……まずは、自分になにができるのかを知っ…」
「いいから!早く教えて!それと考えるの長い」
「お父さん、ぼくにも『きりおとし』教えて!」
剣の達人である父の言葉が、これから剣を学ぼうとする娘と息子の『勢い』に押し切られた。こういうことも、ままあることだ。
……まあ、それも含めてこいつらが考えることか。
と父はすぐに考え直し、代わりに娘と息子にこう言った。
「……じゃあ、オレが使える切落しの形一回だけ全部見せるから、『後は自分で考えろ』」
…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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