∞42【《無限チュートリアル》の応用方法】
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《無限チュートリアル》は、ただ単に戦いの状況を再現する以外にも様々な機能が備わっている。例えば、アゾロ自身が経験した戦いを、『第三者的な視点から客観視』するという機能もある。これはアゾロの異能のひとつ《汎状況観測》の基本機能だ。
一体、『誰がその場面を観測しているのか』なんて、アゾロはそもそも考えもしない。
……【早送り】、【減速再生】、【一時停止】、【早戻し】……
自分のベッドに腰掛けたアゾロは、メニュー画面上にある通常コマンド【チュートリアル】の基本機能を淡々と繰り返しながら、昨日の『お相撲』の際のエミルの動きを細かく分析している。
「……なるほどね」
アゾロは心の中に投影される幻覚の映像を見ながら独りごちた。《無限チュートリアル》を使って客観的に見てみると、『エミルが勝った理由』がはっきり解る。
エミルの動きには徹頭徹尾、迷いがない。5歳のエミルは、《《自分が勝つ筋道》》をきっちり立てて、それを着実に実行している。行き当たりばったりな姉とは大違いである。
それに比べて、映像の中のアゾロは最初から最後まで後手に回り続けている。《無限チュートリアル》で、弟に投げられた直後の自分自身の顔を客観的に観たアゾロは、「『驚いた時のわたし』って、こんな顔になるんだ……」と思わずつぶやいた。
アゾロは映像を見ながら、『自分がエミルに負けた理由』を考えることが、『あの父』に勝つ方法を考えることにもつながるのでは?と本能的に気付いている。
しかし、アゾロはそれを言語化できない。
なので、なんとなく「見といた方がいいのかも…」くらいにしか思わない。
「……ふむ」
布団の上に胡座をかいて、アゾロは言葉とも呼気ともため息ともつかない声を発した。これは父のクセでもあるのだが、アゾロ本人は認識してはいない。
エミルとのお相撲の分析が終わったアゾロは、《無限チュートリアル》の【早送り】機能を使って、『エミルが泣き止んだ瞬間』まで早送りした後で【一時停止】した。
母の胸の中で泣き止んだエミルは、泣き疲れたのかスヤスヤと寝息を立ててそのまま眠ってしまっている。……その寝顔の無防備なことと言ったら。
エミルの寝顔のお陰で、《無限チュートリアル》を使うことによるアゾロの『心の疲労感』がみるみるうちに回復していく。
《無限チュートリアル》は単なるトレーニングだけではなく、客観的な『映像記録の確認』も可能だ。それを、今回アゾロは『心の疲労感』の回復手段として活用している。
これも、アゾロのなかにある『無限』の可能性の一つだった。
母の胸に抱かれ安心しきった寝顔のエミルを見ながら、真剣な顔をしてアゾロはつぶやいた。
「……この『瞬間』を何度も何度も繰り返し観れる訳ね。……《無限チュートリアル》を使えば」
《無限チュートリアル》の基本機能【範囲指定】と【拡大】を使って、アゾロは『エミルの寝顔』だけをフォーカスする。
グフフ…とあやしい笑みを浮かべながら、【一時停止】した5歳のエミルの寝顔を色んな角度から眺めるアゾロ。
そして無防備な弟の寝顔を至近距離で眺めながら、「お姉ちゃんにこんな顔見せるだなんて。……いけない子だねえ。……えぇ?エミル君……」とか言っちゃってる実姉。
そこだけを切り取って見たら、完全に変質者のムーブのアゾロだった。
…To Be Continued.
⇒Next Episode.
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