表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/61

∞41【わたしだけの無限】

≈≈≈


≈≈≈



「『精神と時の部屋』って、なんやねん……」


 アゾロは寝起きで、ぼんやりとつぶやいた。


 昨日はエミルとの相撲の勝負を何度も『心の中』で繰り返したので、一夜明けた今朝も少しだけ、アゾロのなかに『心の疲労感』が残っている。


「……心の中の時間とか、(わっけ)わからんこと言いくさりやがって」


 アゾロはベッドから半身を起こしながら、よくない言い方で夢のおっさんを罵った。

 しかし、その直後に顎に指を当てて、アゾロは「ん……?」と少し考え込む。


 そしてアゾロは、夢の中でおっさんが言っていた言葉の断片を、自分でも口に出して言ってみた。


「『精神と時』、『心の中』、『無限の拡がり』……」

 《“無限”チュートリアル》……?


 瞬時に頭の中に『ひらめき』が奔るアゾロ。


 アゾロはすぐさまベッドから飛び降りると、机の上に置いたままの父から貰った『鉄球』を右手で掴んだ。そして、鉄球を掴んだまま右手をまっすぐに伸ばして、鉄球を自分の目と同じ高さにまで掲げるアゾロ。

 そして、鉄球を手放すと同時に、アゾロは声に出して『命令(コマンド)』した。


「《無限チュートリアル》、起動!」


 アゾロが『命令』した直後。

 いつものように、アゾロの意識は心の中の『幻覚の森の中』へと瞬時に飛ばされる。いま、アゾロの目の前には、幻覚の森の風景しか見えていない。


 『現実の中で落下しているハズの鉄球』は、アゾロの心の中の幻覚上には、当然ながら『存在しない』。


「……ふむ」


 『幻覚の森の中』に立っているアゾロは、無意識的に言葉とも呼気ともため息ともつかない声を発した。

 目の前で起こる一つ一つの要素を確認しながら、アゾロは慎重に自分の行動を継続する。


 自分の心が作り出した『幻覚の森の中(バーチャルリアリティ)』にいるアゾロは、メニュー画面上で【VSイノシシ】を選択した。


 そして、アゾロはいつものように『幻覚のイノシシ』との戦いを心の中で繰り広げた……



「……ふぅ!」

 

 心の中で、幻覚のイノシシに勝利したアゾロ。

 しかし、今回はイノシシと戦うことがアゾロの目的ではない。


 今回、アゾロがイノシシと戦って、勝利するまでに『かかった時間』。

 アゾロ自身の『主観的な時間』では、そこそこの長い時間が経過しているように思えた。それは、アゾロの主観では、(およ)そ『水が湯に変わるほどの長さの時間』。


 幻覚の森の中に立っているアゾロは、すぅ…と胸に大きく息を吸い込んで一回留める。そして、アゾロは声に出して『命令(コマンド)』した。


「……《無限チュートリアル》、解除!」


 《無限チュートリアル》はアゾロ自身の『能力』なので、声に出して命令する必要性は、全くない。能力を起動するにしろ、解除するにしろ、アゾロ自身が心の中で『思念(イメージ)』すれば事足りる。


 しかし、自分にとって分かり易く『手順』を踏むために、今回は敢えてアゾロは自分の声で命令した。


 アゾロが発した『命令』に従って《無限チュートリアル》状態が解除され、アゾロの意識が『現実の時間の中』に戻ってきた。


 アゾロの意識が『心の中』から『現実の中』へ戻ってきた『その瞬間』。

 『現実のアゾロの目の前には、まだ鉄球が落下直後の状態のままで、空中に静止していた』。


 そして、《無限チュートリアル》状態が解除され、アゾロの意識が現実に戻った直後から、アゾロの目の前の『鉄球』がゆっくりとした動きで落下を始める。


 空中に静止していた鉄球がゆっくりと落下し始める様子を、アゾロは感覚の目でじっ…と見つめている。


「……ほいっと!」


 声を上げながら、アゾロは伸ばしたままの右手で楽々と『空中の鉄球』をキャッチした。まるで最初から手の中に掴んでいたかのように、鉄球はアゾロの右手の中に『なんの手応えもなく』収まった。


 アゾロは、しばらくの間しげしげと自分の手の中の『リンゴくらいの大きさの鉄球』を眺める。


「……わたしが《無限チュートリアル》の中にいる間、『現実の時間は止まっている』……」


 右手の中の鉄球を見ながら、アゾロがつぶやいた。


 今まで、アゾロは《無限チュートリアル》中に現実の世界がどうなっているのかなど、考えたことはなかった。

 むしろ《無限チュートリアル》の直後はそれなりに精神的な疲労があるので、『そんなこと考えたこともない』と言った方が正しい。


「《無限チュートリアル》。……わたしの心の中にある『わたしだけの無限』」


 今までアゾロは《無限チュートリアル》のことを、ただ『便利だな〜!』くらいにしか思ってはいなかった。


 しかし、この時。


 アゾロは、自身が名付けた異能である《無限チュートリアル》最大の『優位性』を、漠然とではあるが『認識』し始めていた。




…To Be Continued.

⇒Next Episode.

≈≈≈


≈≈≈

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ