激闘!④
ごくりとグレイが唾を飲み込む。
「こいつがボスか」明がぽつり。
「全長・・44kmあります」クリスが報告する。その声は震えている。
「空母、いや要塞か」サライの表情は険しい。
流はくわっと目を見開き、
「総員超特級戦闘配備!全砲門開け!砲雷撃戦用意!」
<ドプラス>より赤いトスーゴ艦隊が発進する。48隻。他の艦も色が赤に変わる。
「一気に勝負をかけてきたか」ニコライがエンジン出力を上げる。
「バリアー全開!」アランが命じる。
「全砲門一斉発射!」ロイが叫ぶ。
インパルスから幾つもの光の矢が放たれる。
爆発。十数隻を撃沈。
艦隊はインパルスを避け、後方に回り込む。
「退路を断つ気か。それともステーションを襲う気か」
「前方!要塞に動きが!」
<ドプラス>の中央円盤が回転を始める。次第に速度が増す。
「!!」
回る砲塔からビームが次々に発射される。その直径はインパルスの全幅に近い。
サライは初弾を避ける。
しかしビームは次から次へと連続して来る。
「よけきれない!」
バリアー貫通。被弾。瞬く間に第七主砲塔に次々と穴が開き大破する。
「なんて破壊力だ」これまでの敵艦と威力が違いすぎる。
サライは気を失いかける。かろうじて意識を保ち、避ける。
中央円盤は三段ある。各段が回転しビームを撃ち出す。
三つのビームは避けても避けても次から次に向かって来る。
「くそお!振り切れない!」サライの悲痛な叫び。
「弾幕薄いぞ!」
主砲やホーミングアローで防御するが、一時しのぎにすぎない。
<ドプラス>の武器は中央の回転砲だけではない。十字の先端にある大型砲が発射される。こちらはインパルス全長よりはるかに大きい。
艦首に直撃!
「艦首エネルギー制御室大破!」
サライは意識を失う。
”シンクロ”には”フィードバック”という欠点がある。艦が損傷を受けると操縦者にも影響が出るのだ。接続コードは自動でイジェクトされたが間に合わなかった。
「サライさん!」
副操縦席の明が操縦桿を握る。
「明!急速下降!死角だ!奴の下へまわりこめ!」
明は操縦桿を倒す。Gがかかる。
インパルス急降下。
しかし<ドプラス>には下部にも回転砲塔があった。
再びビームが来る!
避け切れず第二砲塔をかすめる。砲身が溶ける。
第一砲塔。リックが蒼ざめる。すぐに我に返り、
「ここは俺ひとりで何とかする!(部下に)お前らは救護を手伝え!」
メインブリッジ。
「このまま右下の小惑星帯へ向かえ!」流の命令に、
「逃げるんですか?」ロイが驚く。
「そうだ」
明は黙って操縦桿を倒す。
インパルスは小惑星帯へ突入。
<ドプラス>も転進。追って来る。敵艦隊もだ。
「よし」流に笑み。敵をステーションから引き離す目的もあった。
目前に次々と小惑星が迫る。
明は避ける。<フロンティア号>でこういうのには慣れている。だがインパルスははるかに大きく小回りは効かない。
その間にも<ドプラス>の回転砲や大型砲がインパルスを襲う。
後部主砲とミサイルで対抗。
「反重力爆雷散布!」
眩い閃光と共に反重力の嵐で小惑星が乱れる。だが<ドプラス>はもろともせず迫る。
インパルスは小惑星帯をぬける。
「前方に敵艦隊!数34!回り込まれました」
「蹴散らせ!」
針路上へ主砲発射。
先頭の数隻を撃破し、インパルスは艦隊に突入する。
「敵艦隊中央でシンバリアーアタックをかける!」
バリアーアタックは防御バリアーを全方向攻撃に転用した兵器。敵を破壊せず行動不能にする。弱点は放射後しばらくバリアーが使えないことだったが、アランとニコライは二重バリアーにすることでその問題を解決した(使用後は一重になるため防御力は落ちる)。
「バリアーアタック!」
インパルスから周囲に光の波が広がる。
その波に触れた敵艦はエンジンが止まり沈黙する。トスーゴ艦にも有効のようだ。
「反転180度。奴を迎え撃つ!」
「了解!」明は操縦桿を倒す。
インパルス旋回。前から巨大な“十字手裏剣”が来る。
インパルスはトスーゴ艦隊と入り混じっている、それらは盾となるはずだった。
だが<ドプラス>は躊躇なく回転砲を放つ。
数隻の敵艦が犠牲になる。
ニコライがぽつりと「無人艦だからな」
「一旦離れろ!あの星を盾にしろ!」
「光子アンカー!」 「減速!逆噴射!」
インパルスは小惑星帯の外れにある星の陰に隠れる。かなり大きい小惑星だ。
「艦長、スーパーノヴァボンバーは?」ロイが意見具申。
「ここは宇宙遺産だ。極力使いたくない。アラン!奴の弱点を探せ!」
アランは必死に解析を行う。
医務室。被弾は先程より減った気がする。
「先生!お願いします!」
ボッケンと陸戦隊員が負傷者を運んで来る。
「おう!」Qは患者を診る。「ナトウは往診を頼む」
ナトウはヘルメットを渡される。医療用装甲兵のリモートコントローラだ。
「艦首は別の医者(の装甲兵)が行ってる。艦尾第3ブロックへ行ってくれ」
「了解しました」
ナトウはヘルメットをかぶる。艦尾に配備された医療用装甲兵が動き出す。
「あ」ボッケンは麗子に気づく。
麗子は無言で手を振る(かなり激しく)。
その間にも負傷者が次々と運ばれて来る。心配そうな美理と麗子。
「・・」麗子は立ち上がり「手伝います」
「え?」美理とボッケンは驚く。
止血スプレー。ナノマシン投与。麗子はてきぱきと処置をする。
「看護師の免許取ったの」
「え~」
これから医療班で見習いしつつ免許取得するものと美理は思っていた。“真理女“に看護科はあるが普通3年かかる。睡眠教育があるとはいえ1年ちょいで取得するとは、流石天才少女。もっとも啓作は医科大学を3年で卒業している。
次々とビームが小惑星に命中する。亀裂が走る。そして小惑星は粉々に砕ける。
その後ろにインパルスの姿はない。
<ドプラス>の真下にワープアウトする。
相変わらずシャーロットのワーププログラミングは早い。
小惑星帯の中のワープは自殺行為に等しい。正確なプログラミングと強固なバリアーのおかげだ。
「全砲門一斉発射!」
主砲弾が次々と<ドプラス>に命中する。続いてホーミングアロー。最後にミサイル。
いくつかの砲台を破壊。しかし致命傷にはならない。
再び回転砲がインパルスを捉える。
紙一重で回避。
追って来るビームを明は何度もかわす。
それ以上に敵の攻撃は熾烈だった。
左尾翼に直撃。
右舷ホーミングアロー発射孔に命中。爆発。煙を吹く。
アランが「敵のエネルギーは本艦主砲1基と互角です。前部主砲を1基ずつ時間差で発射して敵ビームを防御、後部主砲はホーミングモードで攻撃してはどうでしょう」
「いや、タイミングが難しい」ロイが反対する。
避けながら標準を合わせ続けるのは至難の業だ。
「連続的な射撃、あれはもはや剣と言ってもいい」
「剣・・」流はそう呟き、「剣には剣だ。ウィングサーベルを使う」
「そうか。剣を受け止めて鍔迫り合い・・に持ちこめってことですね」
「よくわかったな明。やれるか?」
「やります。いや、やってみせます!」
絶体絶命の闇の中に一筋の光が差す。さあ、反撃だ。
ここで問題です。
最初は緑、次がうす紫、その次が水色、最後が赤。な~んだ?