月の降る時⑦
<スペースインパルス>機関室。
マーチンは仲間達とトランプをしている。珍しくぼろ勝ちだ。
「月が落ちるぞー!」の声。
「冗談じゃない、え?ツキじゃなく月?」
巨大な月(衛星)がアルテカ星へ落下して行く。
「主砲発射用意!」ロイがマイクに叫ぶ。
「了解」リックが計器を操作。
主砲が旋回し狙いを定める。
「!」
インパルス周囲の<ネーガー>が威嚇射撃を行う。
『1対1の決闘と言ったはずだ。団長の邪魔はさせない』敵艦からの警告。
ロイは手を叩いて「タイマンって、じゃああの月はリインがしているって事か?」
データ解析を再開したアランが言う。
「リインのエネルギーがものすごく減っている。相当無理をしている証拠だ」
敵はメドゥサ流星系で小型の流星の軌道を変えていた。今度の月は流星よりはるかに大きい(流星は元白色矮星のため質量はどっこいどっこい)。
「そんな・」信じられない顔で美理は前を見る。
月はアルテカ星全体に張られたバリアーの中へ。
「くっ」グレイが歯ぎしりする。
「明は気づいてないのか?」ニコライがつぶやく。
「明くん・・」美理は祈る。「・・空を見て!」
明はふと空を見上げる。あたりは少し暗い。
「!!」太陽を隠して月が迫っていた。「なにっ!?」
「今頃気づいても遅い」
「待ってくれ!俺たちは、暗黒星がトスーゴの仕業では、と考えている」
「あれは他次元生命体によるものだ。我々ではない」
「だったら、共通の敵だ。俺たちはわかり合える。協力出来る」
「リナみたいな事を。神と人が?お前は人間とロボットを平等に考えられるか?」
「すでに地球人とトスーゴで愛し合った人たちがいる。わかりあえるはずだ!」
「美理さまはいい子だ。だが彼女は生まれてきてはいけなかった」
明は訳も分からず圧倒される。
「!!」
リインの放った稲妻は明の身体を貫く。
倒れる明。限界。もう動けない。
「ここまでか・・」
明に声が聞こえる。
「それでいいのか?・・あきらめるのか?」
―パミィ師匠!―
「世界中を敵にまわしてもあの子を守れ」
―啓作!―
「死なないで」
「美理!!」
明は立ち上がる。
「どうしても・・戦うしか道が無いなら・・俺は、生き残るために、仲間のために・・そして・・愛する人のために、戦う!」
足元にヒビ、明は飛び退く。
噴火。
溶岩と火山弾が明を襲う。明は避けつつリインに迫る。
しかしそれは幻。リインも噴火も消える。噴火ではなく地下水の噴出だった。
天空から雷。かろうじてバリアーが明を守る。
本物のリインは空にいた。
明は竜巻を起こし、地下水を巻き上げて対抗。
リインはそれを凍らせる。砕かれたそれは氷柱いや鋭い剣となる。
氷の剣がリインのまわりに浮かぶ。数は百を越える。
リインは腕を振り下ろす。剣が一斉に明を狙う。
明はそれらの剣を一気に粉砕。
リインは明の背後にテレポート。衝撃波!
明は残像を残し消える。幻のお返し。
「読心術じゃない。予知か?やはりお前は、お前達は危険だ。力に比べ心が未熟だ」
リインの体が白く輝く。水が蒸発、土が溶ける。高熱の光が広がって行く。
「こうか」明は真似をしてバリアーを強める。同じように光り輝く。
光対光。
ふたりは空中で何度も激突する。
パワー負けしている。バリアーがもたない。もうラミルコンも無い。
ドガッ! 明は仰向けに倒れる。下敷きになったビルは粉々になる。
空いっぱいに迫る月。
「逃げなきゃ・・!」
テレポートできない。それどころか金縛りの様に身体が動かない。リインの仕業か。
「俺は・死ぬのか?」
月はもう目の前に迫っている。
「・・不思議だ。怖くない・・麻美子、君に会えるからか?」
明は目を閉じる。麻美子の姿を思い浮かべる。最後は穏やかに死にたい。
麻美子の表情は暗い。その頬を涙が伝う。
「なぜ泣く?悲しませているのは俺か?」
麻美子は美理に変わる。ふたりの声が聴こえる。
「あなたが死んで私が喜ぶと思うの?」
「死なないで!」
明は目を開ける。
「俺は・・これ以上あの子を悲しませるわけにはいかない!」
指が動いた。右手を空に向ける。
「俺は死ねない!死ぬわけにはいかない!約束したんだ!あの子と」
立ち上がる。
アルテカ星に落下する月。
その速度が遅くなり・・・止まる。
離れた空中にいるリインは驚愕する。
「サイコキネシス?違う・・あそこだけ時間が止まった?」
だがそれは一瞬であり、月は地面に衝突。巨大な爆発が起こった。




