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月の降る時⑥

 明は目を開ける。瓦礫の中にいる。

 ベルトのポケットに違和感。マーチンのくれた御守りのラミルコンが粉々に砕けていた。

「守ってくれたんだ」感謝。

「そのまま眠っていれば幸せだったのに」リインの声。

 明は起き上がる。さっきとは違う場所にいる。テレポートした?

 ここは星の昼のエリア。気温は60℃に達する。バリアーなしで生存は難しい。

 壊滅した都市。倒壊したビル街。やはり死の街だ。

 驚くべきはそのサイズだ。十階建てのビルが明の背丈と同じ位。まるで特撮のミニチュアだ。先程の都市は自分たちと同じ様なサイズ感だったのに。

「そうかコビトの国」

「この星には二つの種族がいた」再びリインの声。姿は見えない。

「我らと同じ大きさのヒトと小さなコビト。それらが争った結果がこれだ。長い間いがみ合っていたが、最終戦争の発端は些細な事だったと聞く。ヒトは超磁力兵器を使い地軸を狂わせ大地震を起こした。それに対抗してコビトは全ての生物を溶かすガス兵器を使った。ガスの効果はもう消えている」銀河連合はここまで把握できていなかった。

 無言の明にリインは言葉を続ける。

「一歩間違えれば地球もこうなっていた」

「だが俺たちはこうはならなかった!」

幸運ラッキーだっただけだ」

「・・」

 明は銃を構えたまま、出発前の美理との会話を思い出そうとする。そこに何かヒントがあるような気がする。

「ナオミさんについて教えてくれ」

明にそう言われた美理は困惑していた。

「リインはナオミさんだと思う。君を監視していたんだろう。情報がほしい。どんな子だった?」

「ナオミは高等部から転入してきた。頭脳明晰、運動神経抜群、クールな美人。麗子と成績トップを争っていた。そして同室の朋ちゃんと一番仲が良かった。一言で言えば・真面目。朋ちゃんが”おふざけキャラ”と言うかボケ担当だから、ツッコミ担当。めったに笑わない。でも笑うととても素敵なの。冷たいようだけど優しい人よ。・・私はできることなら戦わないでほしい。無理よね、わかっている。あ、ピーマンが嫌い」

 美理に感謝するが、あまり役に立ちそうもない情報かもしれない。

「そうね。何の役にも立たないわ。ピーマンを思い浮かべるのはやめてね」

 リイン!心を読まれた。高い塔のてっぺんにいる。

「美理さまを監視するに当たって、同室になる事も考えたけど、少し距離を置いた方がいいと判断した。でも夏休みに麗子と十字星雲に行っちゃった時はあせったわ。<エンゼル=ヘア>の宇宙海賊の時は美理さまを助ける事ができたけど、正体がばれるのを恐れてしなかった。<大銀河帝国>の時は帰還命令が出たので何も出来なかった。美理さまを守ってくれたあなたに感謝するわ。普通の女子高生を演じるのは難しかったけど結構楽しかった」

 そう言うリインは穏やかな表情をしている。だがそれは一瞬で戦鬼に戻る。

 リインが塔を蹴る。急接近する。速い!

「サービス期間終わり」左水平チョップ。

 銃身が真っ二つに。もう銃を使わせないということか。

 間髪入れず右ボディブローが明の腹にはいる。光る拳。エネルギーを帯びている。

 衝撃で明は吹っ飛ぶ。バリアーがあるのに!

 小さなビルをいくつも突き抜けて飛ばされる。

 明は空中で体勢を整え、ビルの壁をキック。反撃に移る。

 追ってきたリインと空中で衝突する。

 手刀対手刀。力は互角だ。

 一転しての接近戦。お互いパンチキックを繰り出す。

 数え切れない攻撃の応酬の果て。

「はあはあはあ・・」

 無我夢中で攻撃する明は肩で息をしている。

 リインは平然として、

「貴方は勝てない。降伏なさい」

「それは・・いやだ!」


 外を見ていた望が泣き出す。

 シャーロットがあやす。

「どうしたの?・・え?」異変に気付く。

 メインブリッジ。

 美理は失意のまま自分の席に戻った。入れ替わりにアランが流の傍に来る。

「どうだ?副長。何かいい策を思い付いたか?」

「いいえ・・リインのESPのパワーは計測上本艦の主砲と同等でした。テクニックも超一流。明はとても太刀打ちできません。なぜ降伏されなかったのですか?」

「本艦を差し出すわけにはいかなかった。明以上のエスパーは本艦にはいない。最も可能性のある彼に運命を託すしかなかった。たとえ可能性がゼロに近くてもな」

「しかし、結果は同じです」

「結果はまだ出ていない。確かに明は負けるかもしれないとわかって戦いに行った。だがあきらめてはいない。あきらめた者に勝利が訪れることはないことを知っているからだ。そして今も命がけで足掻いている。我々に出来るのは応援することだけだ・・む?」

 窓の外のアルテカ星。

 その月がゆっくりと動いていた。静かに降下していた。


 明とリインの戦いは続いていた。

 リインは腕を横に振る。

 暴風! 明は飛ばされ、地面に激突。

「はあはあはあ・・」

 明は瓦礫の中立ち上がる。息が荒い。とっくに限界は超えている。

 風に飛ばされた無数の岩石や建物の破片が襲う。明は振り払う。

 リインは腕を振り下ろす。

 飛び退く。明が今までいた所が粉々になる。

 明は走りながら空に向け衝撃波を放つ。リインは飛行しながらエナジーボール。

 空中で衝突、爆発。

「!」

 数㎞離れた火山が噴火する。溶岩が小さな都市を襲う。

 逃れた明を無数の火山弾が襲う。リインの力なのか?

 避けきれる数ではない。バリアーで防御して走り抜ける。

 その雨の中。リインが歩いて近づく。

「遠い昔。我々は他次元からの侵略をうけた。その敵に対抗するため、我々は宇宙の多くの星々で生命をつくった。戦士にするためにね。その一つが地球だ」

「地球だけじゃなく、銀河いや他の宇宙の生命もトスーゴがつくった?バカな」

「正確には干渉したと言うべきかな。正しい方向に進化するように」 

「・・・」

「だがお前達は自分達で殺し合いをする失敗作だった。科学技術の進化に対し心の進化が足りない。事実他次元生命体に操られた独裁者まで出た」

「・・デコラス?」

「このままではお前達は全宇宙を脅かす・・だから今のうちに従えておくことにした」

「暗黒星を使ってか!」

「あれは我々ではない」


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